佐々木 愛 著「じゃないほうの、歌いかた」

本
スポンサーリンク
スポンサーリンク

結論

別の物語ながら互いが関連しあって、ラストにとんでもない昇華へとつながる超エキサイト本。オススメ!

スポンサーリンク

概要・あらすじ

こんな奇跡があるのなら、人生にNOは言えない 落合南長崎の独立系カラオケ店「BIG NECO」では、今日もドラマが巻き起こる。 「カラオケの再現映像に出ていそうな女」と過去2回言われたことのある池田。 音が鳴らないトランぺッター・加賀と、その恋敵・サナ。 反抗期の娘と暮らす、元俳優の佐藤待男。 74歳にしてカラオケでアルバイトをする謎の老人・石崎さんと、 石崎さんを心配する指導役アルバイター・小野。 「E.YAZAWA」のステッカーを集め続ける、売れない作家・染井暖。 うだつのあがらない凡人たちが起こす、ちょっとした人生の奇跡ときらめき。

googlebooksより引用

スポンサーリンク

感想

「本の雑誌」の第2回北上次郎面白小説大賞受賞の特集記事を読んで興味をもちました。記事では数人の選者がゆるく議論する様子が記録されています。議論の末に大賞を取ったのが本作というわけです。

6編からなる連作短編集。個々が別の物語でありながら、ゆるいつながりで連結されているのが気持ちがよい。第1話「池田の走馬灯はださい」では数ある「東京」という曲が大音量で流れます。誰の歌かまでは言及がなく、読者にゆだねられる。

私の年代のものにすぐ浮かぶ「東京」はマイ・ペースの歌です。1974年発売ですから52年も前の曲ですね。私の友人が好きな歌で、彼は酔うとこの歌を口ずさみます。彼も私も地方の大学を出てそのまま地方に就職しましたので、東京への思いというのはあまりないと思われますが、寂しげなメロディがいいのでしょうね。私も大好きです。

このマイ・ペースの「東京」の冒頭に「走馬灯のように」という歌詞があるので、本短編とはつながりがあるようにも思われます。歌の中身は遠距離恋愛の男性側が語る歌です。女性の方が東京に住んでいて、男性が東京に会いに行くという歌。会える喜びをもちつつ男性は虚しさも感じています。

東京にあこがれて上京した池田は女性。きらびやかな東京の中でいつしか孤独を感じている。東京では「とんでもなく」すばらしいことがある。それを信じて「東京」を大音量で聴く。東京に住む人の中には共感する方も多いと思われます。しかし物語は孤独に終わるのでなく、2人の男性とともに歩道橋の上で大合唱するムネアツの映画的エンディングがまっています。

次の「加賀はとっても頭がいい」は相手の体温に風呂の温度を合わせるというのが、ちょっと気持ち悪くって飛ばしてしまいました。36度の風呂はかなり冷たいよ。

その後の「君の知らないあの佐藤」「石崎IS NOT DEAD」「矢沢じゃなくても」はどれもおもしろかった。若き頃俳優を目指した佐藤が唯一出演したMV「リバー」は後の短編にももちろん絡んできて、連作短編の楽しさを感じさせてくれます。

自分より若い上司(同僚?)に老人アルバイトが叱られている痛いシーンが前の短編に出てくるのですが、この老人が名探偵いやヒーローになっていくのが非常に痛快です。老人を叱っていた同僚も実はいいやつであることも描かれて、やっぱり悪人が誰もでてこないなあ。

各短編が密接に関連しているのはわかるのですが、エピローグにてさらに謎解きがあり笑ってしまいます。

登場人物たちがカラオケで発した言葉や選んだ歌が、別の誰かの人生や時間軸とどこかで密接に関係していたことが判明し、思わずクスッと笑ってしまうような人間賛歌の構造が明らかにされます。(jemini先生回答)

samon
samon

ミステリーやホラーを読むことが多いのですが、それ以外で久々にエキサイティングな作品に出合えて幸せです。ガイドしてくれた「本の雑誌」に感謝。なくなってほしくない雑誌です。


コメント

タイトルとURLをコピーしました