辻村深月 著「ファイアー・ドーム」上下

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samon
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「本の雑誌」大推薦。1500枚の圧巻ははたして

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結論

複雑な物語がわかりやすく説かれてどんどんページが進む。上巻ラストのクリフハンガー強力。上下同時購入がオススメ

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概要・あらすじ

新刊『ファイア・ドーム』がとうとう、発売になります。
連載に4年、改稿に3年。
7年の歳月をかけて、皆さんのもとに送り出します。

物語のテーマであり、主役は「噂」です。
小説を準備する7年の間にも、
現実では多くの事件が起き、
小説の中で描いた噂の世界が
現実と共鳴して揺らぐような感覚が常にありました。

過去に起きたあの事件も、明日起こるかもしれないあの事件も。
この小説が「今」を描けていると思っていただけたら、光栄です。
そして、だからこそ、「今、読んでほしい」と願って、送り出します。

どうぞよろしくお願いいたします。

著者コメント

小学館HPより引用

舞台は、北陸地方の都市である。そこで起きた二つの誘拐事件が物語の中心にある。最初の事件は、25年前の「デパート受付嬢誘拐殺人事件」だ。新聞記者を名乗る人物から取材をしたいと呼び出された22歳の女性が、誘拐され殺害された。ほどなく犯人は逮捕されて無期懲役となったが、市内では事件と被害者にまつわるさまざまなデマが流れた。同じ時期に起きたある事故と被害者との関係も噂された。大人も子どももその話に夢中になり、何の落ち度もない被害者の家族は、地域で孤立した。

本の雑誌HPより引用

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感想

「本の雑誌」の中で、上巻を読み終えたら絶対に下巻をすぐ読みたくなるので「上下巻同時購入をおすすめします」とありました。ほんとかなと思っていましたが、まさに私は下巻を借りに近くの図書館に走りました。幸い図書館にまだあり、ほっとしました。

それほど上巻の終わりはものすごい状況で終わります。どうぞお楽しみに。辻村深月の作品を読むのは実は初めてです。パートナーが好きでよく文庫本を読んでいましたので、彼女の作品はたくさんあるのですが、読もうとは思いませんでした。恋愛ものとかが多いのではと勝手に思っていましたので。

それはまさに思い込みで、辻村は幼少からホームズや少年探偵団が大好きという、私と同じ状況ではありませんか。綾辻行人の「十角館の殺人」に衝撃を受け、ペンネームの「辻」は綾辻からもらったとのこと。バリバリのミステリー志向ではありませんか。

「ファイアー・ドーム」には多くの登場人物が出てきますが、主要な人物たちの主観で語られていく手法は登場人物を分かりやすく印象深く描き出し、混乱や忘れたりということがまったくありません。

語り進める主要人物は、上巻では小学校教諭の美冬、新聞記者の桜木、小学生速斗、下巻では忠治が加わります。比較的短いスパンで語り手がトントン変わる印象です。誰が話しているのかがすぐに理解できとても読み進めやすい。

強く印象に残る登場人物は、受付嬢誘拐殺人犯の「久我」です。行き当たりばったりのとんでもない粗忽ものという人物像です。人間の欲望の原風景のようにも見える人物です。新聞記者の浅川と桜木との刑務所での面会シーンは非常の不気味で、「羊たちの沈黙」レクター博士とクラリスのシーンを思い出しました。

レクター博士と久我とは天才と粗忽ものと180度反対なのですが、普通の人が近づいてはいけない気持ちの悪さでは共通するものがあります。

題名の「ファイアー・ドーム」の意味合いは上巻の割に前の方で明かされます。丸いガラスの中にミニチュアの町があり、雪が積もっている。ガラスの中には水か油が充填されていて、下にたまった白い雪はガラスを逆さにして戻すと、町に雪が降るように見えるあのグッズ。

この雪が赤かったら。町は真っ赤に染まって燃えているようになるだろう。閉ざされた小さな町が真っ赤に燃えていくというこの物語のテーマを端的に表した言葉でとてもイメージが広がる印象深い題名ですね。実際にはそんなガラスドームグッズは見たことはないですが。

新聞マスコミは「オールドメディア」と呼ばれ、恣意的な報道の垂れ流しが若者を中心に拒否されている現状です。将来のない新聞社などに就職するのは高橋洋一氏にいわせれば未来が見えない愚か者でしかない。本作にはこれらの言質とは対照的な気骨のある地方新聞の記者が描かれています。

刑務所内の久我と交流をもちながら数十年をかけて、事件の隠された部分を明らかにしようとする浅川。桜木の先輩の吉沢。桜木の同期で激しい対抗意識を燃やしている紺野は最終的には桜木を支援していくことになるのはなかなかにムネアツです。

横山秀夫の「クライマーズハイ」の日航機123便の墜落事件を追う新聞記者たちの群像劇が想起されます。新聞記者の活躍を描く小説は過去たくさんあったと思います。それらでは真実を追求する記者の魂が描かれていたのですが、ファイアー・ドームではそれを再現しているように思われます。

しかし新聞紙者の活躍だけが核でなく、様々な要素が複雑に絡み合うのが本作の特徴ですが、決してわかりにくくならない優しさがあります。ゆえにページをめくる手は止まらず、一気読み的にはまり込んで読ませる力がある作品です。

samon
samon

初めて読んだ辻村深月。最高でした。ぜひこの読書体験をあなたも。

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