クロエ・ジャオ監督作品「ハムネット」母という強烈ないきもの

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今月から来月のセントラル劇場は話題作のオンパレード。「オールドオーク」に続き今週はアカデミー監督のこの作品

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結論

母が子を思う思いの強さは男はどうあがいても勝てはしない

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概要・あらすじ

『ノマドランド』(20)で、第93回アカデミー賞®にて作品賞、監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督の最新作で、第50回トロント国際映画祭にて観客賞(最高賞)を受賞した本作。2020年に発表され、英女性小説賞、全米批評家協会賞を受賞し、世界から喝采を浴びたマギー・オファーレル著の同名小説「ハムネット」の実写映画化である。 アグネス・シェイクスピアを演じるのは、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(23)のジェシー・バックリー、ウィリアム・シェイクスピアを演じるのは『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(24)のポール・メスカル、その他、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィンなど実力派たちが脇を固め、製作には、スティーヴン・スピルバーグとサム・メンデスが名を連ねる。

数々の傑作を世に残し、時代を超えて世界中から愛されているウィリアム・シェイクスピアとは、どんな息子であり、夫であり、父であったのか。彼と共に愛と悲劇を経験した妻アグネスの視点を通して、“いかにして不朽の名戯曲「ハムレット」が誕生したか”を繊細な観察眼で見事に描き出した物語である。

公式サイトより引用

1580年イギリスの小さな村。貧しいラテン語教師ウィリアム・シェイクスピアは、森を愛する自由奔放なアグネスと出会う。2人は互いに惹かれ合い、情熱的な恋愛の末に結婚して3人の子供を授かるが、ウィリアムが遠く離れたロンドンで演劇のキャリアを模索する一方、アグネスは独りで子どもたちを守り家庭を支えていた。そんななか一家に大きな不幸が訪れ、かつて揺るぎなかった夫婦の絆が試されることになる――。

同上

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感想

森の巨木が上から下へと映され、その根元に眠る赤い衣装のアグネス。緑や茶色の中での赤は目に刺さるようです。森に抱かれつつ何か森を支配しているようにも思える強さが、アグネスには冒頭から感じられます。

その巨木の根元でのすさまじい出産シーンに度肝を抜かれます。アグネスの叫び声は何度も登場しますが、獣のような野太さは忘れられない人間の真実の姿のようにも思えます。

アグネスの2度目の出産では、川の決壊で森に行くことができず家の中で義母らの助けを得たものとなります。その後、自宅も森から離れたところへと移り、彼女はだんだんに森という自然から人間の人工的な社会へと移動していくのですが、彼女の本質が一切変化しないところが強さを印象付けます。

ポール・メスカル(グラディエーター2)演ずるシェイクスピアは父からは職人になることを強要されるが、やりたいことが全然違う彼には職人作業は耐えられず、父からは「役立たず」と常に呼ばれ苦しんでいます。

アグネスと結婚し子供ももうけたものの、その苦しみはついに爆発。机をバンバン叩いて苦悩するシェイクスピアにアグネスはロンドンに出ることを許しますが、自分は森の近くから離れることを拒み、一緒にロンドンに行くことはしません。確たる自我の強さ独立性には驚きます。

この映画では、シェイクスピアがロンドンで成功していく姿は出てきません。桟橋に寂しそうに座っているシェイクスピアや貧しい屋根裏の仕事部屋が映されるだけ。その部屋を訪れた兄は「売れっ子がこんな部屋で?」と疑問をつぶやいていました。

飽くまでアグネスの姿を描き続けます。ペストという感染症が次女を襲います。次女は生まれたときに仮死状態であり、最初から弱いことが観客には刷り込まれています。ところが双子のハムネットが逝ってしまうのが物語のダイナミズムです。見る者のショックは最高潮となります。もちろんアグネスの気持には比べるべくもありませんが。

ハムネットを失った時のアグネスの演技もものすごいものでした。ただ泣き叫ぶのでなく、数秒空白がある。どこへももって行きようのない悲しみが私たちにつき刺さってきます。アカデミー賞受賞をうなずかせるジェシー・バックリーの演技でした。

腹を痛めたわが子への母の思いのものすごさを、男である私は痛感させられます。たぶん男にはその本能的な感情は永遠に分からないと思われます。

映画はクライマックスで、それまでひたすら情けなかったシェイクスピアの本当の才能を示します。そしてアグネスにとっての安息の場であった暗いウロへ、迷っていたハムネットが向かっていく。言い換えれば天国に上っていくハムネットをアグネスは感じて喜びの中で幕を閉じます。

見る者もしあわせな気分でエンドタイトルに向かうことができます。映画のすばらしさではないですか。

ハムレット役の役者さんがハムネット役の子のお兄さんだった話はもうみんな知ってますよね。似てるはずです。

samon
samon

「観てよかった」と思える映画。母は強し。男はじっと見守って、母や子のために何ができるか考えるしかないですね。

コメント

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