
昨年から参加している夏のスペシャルコンサート。終演後のサロンで日下さんの声を聴くことができました。
結論
日下紗矢子のアルトの柔らかい声に惚れ直してしまう。演奏はもちろんパーフェクト。玉にささいな傷もなし。
概要
今年の「水都やながわ五つ星コンサート」は、今なお戦禍にあるウクライナに心を寄せ、平和への願いを音楽に託すコンサートです。ウクライナにゆかりのある作品をはじめ、それぞれの異なる時代や国で生まれた音楽を通して、戦争のない世界への願いを柳川から発信します。
プログラムより
感想
昨年はアメリカ音楽でしたが、今年は欧州各国、そしてメインにウクライナの作曲家の作品を取り上げ、続くウクライナ戦争に音楽でレジストの声を上げます。
寺嶋陸也/柳川の水に~混声合唱、ピアノと弦楽四重奏のための~(新曲委嘱初演)
北原白秋の詩に作曲家でピアニストの寺嶋が曲をつけたこの演奏会のための委嘱作品。福岡を中心に宮崎や大分から集まった40人の合唱団がピアノ五重奏を伴奏に歌います。
アマチュアの合唱団の演奏を聞いていつも思うのはなんと歌っているのか歌詞がわからないということ。この日もやはりそうでしたが、プログラムに歌詞が記載されていたので助けにはなりました。客席は暗いのであまり読めはしなかったのですが。
ピアノ五重奏の伴奏はすばらしく、特に「アラビアンナイト物語」の日下のソロは会場の空気を一変させる名演でした。合唱の5曲の中ではこれが一番よかった。

西本(Vl)+イグナツ(Pf)
九州交響楽団のコンサートマスターである西本孝弘とピアノのデュオ。ブリテンの現代曲とショパンのノクターン13番が演奏されました。西本は特に高い音の音程がよく、すっと音が心に入ってくるようです。ショパンの歌心もたっぷり感じられました。相当にうまいバイオリニストです。
イグナツもショパンの後半部分でそのパワフルで情熱的なピアニズムを横溢させていました。
日下(Vl)+西本+イグナツ
さあお目当ての日下さんの登場です。昨年は白に黒のラインが混じる涼しげなドレスでしたが、今年は水都柳川にぴったりの麻のような素材のブルーのドレス。左側に大きめのスリットが隠れていて、歩くと美しいおみ足がその白さを垣間見せてドキリとしました。
モシュコフスキの「2つのバイオリンとピアノのための組曲」から4つの楽章が演奏されました。モシュコフスキという名前は初めて聞きました。モーリツ・モシュコフスキは1854年生まれのポーランド出身のユダヤ系ピアニスト、作曲家、指揮者。ドビュッシーの8つ先輩ですが、きわめてオーソドックスなロマン派の曲調です。

あれだけうまいと思った西本ですが、日下の登場で驚くほど陰って見えてしまいます。それほど日下の演奏は圧倒的な輝きを放つものでした。あまりのすばらしさに楽章間でもつい拍手が起こってしまいます。日下は少し微笑んで頷き演奏を続けます。とても好印象を受けました。
ティメンドルフ(Va)ソロ
ビオラの最低弦C線の音の魅力を十分に聞かせてくれる曲でした。短かったですが。
日下+イグナツ
ドボルザークの「フモレスケ」隣のおじさんが「これユーモレスクだよね」と言ってましたが、その通りです。ドイツの発音でしょうか。

日下は暗譜です。有名なバイオリン曲ですからむろんレパートリーの範疇でしょうね。出てくるすべての音が完璧に美しく陶然としてしまいます。
すばらしい演奏に万雷の拍手。多くの観客がステージに戻ってきて姿を見せてほしいとの拍手でしたが、日下は現れませんでした。クールビューティーです。
シルベストロフ/ピアノ五重奏曲
ヴァレンティン・ヴァシリョヴィチ・シルヴェストロフは存命のウクライナの作曲家。ピアノ五重奏曲はイグナツの解説では18歳くらいの若書きの作品。易しくはないといっていました。
聴く方にとっても易しくなく難解な曲でした。ピアノの暴力的な叩きつけるような音が印象的。ビオラの高い音の柔らかさも心に残りました。ビオラらしくない音をビオラに出させるおもしろさ。
アンサンブルにおける日下のリーダーシップも見とれるほどです。音楽の自然さを引き出し5人の力を合わせて1つの強力な音楽の塊を築いていきます。音楽の中身は難解でもそこから感じられるアンサンブルの魅力は十分に心に刺さりました。

昨年はアンコールが用意してなく、熱狂的な拍手にこたえて、ピアノ五重奏の終楽章のコーダあたりから演奏するということがありましたが、本年度は「愛のあいさつ」が用意されていました。ホッとする演奏で演奏会が締めくくられました。
終演後のサロン
本年は委嘱作の初演でありそのための合唱団が組織されました。合唱団と5人の演奏者の交流サロンが終演後に開催されました。関係者以外の観客も参加できるというので喜んで加わりました。
フモレスケでステージに戻らないクールさを最大限に感じさせてくれた日下でしたが、サロンにおけるあいさつでそうではない、気さくな一面が感じられました。
委嘱作の作曲者寺嶋陸也氏が、日下の伴奏ピアニストだったこと、日下が寺嶋が作曲もすることを全然知らなかったことなど、楽しく話してくれました。柔らかいアルトの声もすてきで、さらに惚れ直してしまいました。

また来年も来よう。そう強く決意させてくれるすばらしいコンサートでした。来年も日下さんの演奏楽しみにしております。来年はディスクとマジックを持参して機会あればサインもらってお話ししたいなあ。

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