
セントラル劇場連続観賞は「落下音」が観れず残念。続く本作をいつものリクライニングで
結論
ダンスエンタメ・究極の終末表現・幽霊譚など相反するような要素が奇跡のように一つの映画に結実した暫定本年度ナンバーワンのキング作品。観るしかない
概要・あらすじ
2024年に作家生活50周年を迎えた、スティーヴン・キング。途切れることなく紡ぎ出す新作小説は常にベストセラーランキングを席巻し、キングに影響を受けたTVシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」が世界的大ヒットを記録するなど、今なお絶大なる人気と評価をアップデートし続けている巨匠だ。
そんなキングが2020年に発表し、読む者の人生観を変える新たなる傑作の一本と名高い「The Life of Chuck」の映画化が実現。キングの小説を映像化した作品群では、『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』に続く、恐怖をくぐり抜けたその先で出会えるからこそ、より深く豊かな愛と希望を描く感動作が誕生。トロント国際映画祭で熱い喝采を浴び、最高賞である観客賞に輝いた。不可思議な広告の人物として登場し、徐々にその数奇な生涯が明かされていくチャックことチャールズ・クランツを演じるのは、『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』シリーズのロキ役で日本でも爆発的人気を獲得したトム・ヒドルストン。チャックの人生の大切な思い出として“ダンス”があるのだが、ヒドルストンの引力から解き放たれたかのようなエモーショナルなダンスシーンは、観る者すべての命までを祝福する。
共演には、『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミル、『それでも夜は明ける』でアカデミー賞®にノミネートされたキウェテル・イジョフォー、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アベンジャーズ』シリーズのネビュラ役で愛されているカレン・ギラン、『ルーム』で数々の賞に輝いたジェイコブ・トレンブレイ。アメリカで大注目のニューオリンズ出身のドラマー、テイラー・ゴードンの出演と演奏も話題だ。
監督・脚本は『ジェラルドのゲーム』『ドクター・スリープ』に続き、スティーヴン・キング小説の映画化に挑むマイク・フラナガン。
世界の終末への恐怖で幕を開けた物語は、全編に張り巡らされた謎を一つ一つ解き明かすことによって、人生の〈終わり〉を恐れる必要などないことを証明してくれる。今この瞬間を生きることの歓喜に包まれる、ヒューマン・ミステリー。公式HPより引用
カリフォルニアで大地震が発生、フランスは津波に襲われ、メキシコでは森林火災が都市まで広がり、トスカーナでは街が水没──
次々と起こる災害にすべてを破壊され、ついに世界は終わろうとしていた。ネットやSNSが繋がらなくなる中、
街頭看板やラジオ放送に突如現れたのは、「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という不可思議な広告。
だが、カメラに向かって微笑む中年男性のチャック(トム・ヒドルストン)が何者なのか誰も知らない。
ハイスクールの教師を務めるマーティー・アンダーソン(キウェテル・イジョフォー)は、別れた妻フェリシア・ゴードン(カレン・ギラン)からの電話に応える。
看護師を務めるフェリシアは、絶望のあまり自殺を選ぶ人々への対処に疲れ切っていた。互いを思いやる会話を交わし、
電話を切ったマーティーがテレビをつけると、まもなく全局がダウン、そこに突然、またしても“チャック”の広告が流れるのだった。翌朝、マーティーは隣人から近くの道路が陥没したと聞き、学校へ行くのを諦める。
フェリシアに連絡しようとするが、“接続できません”と表示される電話を捨て、彼女の住む街へと歩き出すマーティー。
乗り捨てられた車で埋め尽くされた、まさに終末の風景の道路にも、チャックの街頭広告だけは並んでいた。
マーティーが道中で出会った、ある紳士はチャックのことを、「20人以上に尋ねたが、誰も知らなかった。世界の終わりの象徴かもしれんな」と語る。
すっかり日が暮れて、ようやく目的地にたどり着くマーティー。すると、街灯が一斉に消えて、街が闇に包まれた直後、建ち並ぶ家々の窓に、
チャックの広告が浮かび上がる。恐怖に駆られたマーティーはフェリシアの家へと駆け付ける。マーティーとの再会を喜びながらも、
フェリシアは彼に「そろそろよ。その時が来たの」と厳かに告げるのだった。
果たして、世界は本当に終わるのか?チャールズ・クランツ、通称チャックとは何者なのか?なぜ、感謝されているのか?39年間の意味とは?
一つ、また一つ、謎が解き明かされた時、すべての悩める魂に語りかける、もう一つの物語が始まる──。同上
感想
宇宙が終わる終末観、圧巻の路上ダンスとドラミング、初々しい少年と年上の少女の胸キュンダンス、そして幽霊の出る丸屋根の部屋と大好物が詰まった、これはとんでもない私に刺さる映画でした。

各章は独立しているようでいて、教師やローラースケートの少女、葬儀屋の社長など登場人物やホイットマンの詩で絶妙に関連させられていて「ほー」とため息が出るほど見事な造形です。
日本の国会では国会議員から「自衛隊に志願する子供は貧乏人」というとんでもない問題発言が飛び出しました。この女性議員は日教組出身で、かつては教鞭を取っていたとのこと。彼女の偏狭な思想は、日々の教室の中でも様々な形で子供たちに発出されていたことは想像に難くありません。
この問題から派生したXの投稿には、投稿者が子供のころ体験した驚くべきポストがありました。教室で親が自衛隊員の子供が立たされ、教師から「この子の親は戦争して人を殺す人間だ。けしからん立っていなさい」と糾弾されそのまま立たされていたということ。目を疑うようなポストです。
本作ではこのような教師の言葉かけとは対照的な、子供に一歩踏み出させる、一段深く考えさせるそんなすばらしい助言を与える教師が登場します。
一人は小学生のチャックの女性担任で、子供を叱ることが出来ない彼女のクラスは完全に崩壊しています。ホイットマンの詩について語る彼女の話を誰も聞いてはいません。チャックはこの状況を担任にあやまり、詩に出てくる「すべてが自分の中にある」とはどういうことと担任に尋ねる。担任はその意味についてチャックに真剣に語るのです。
これがどれほどチャックの思考を刺激し、人間のすばらしさに気づかせ深い思索に誘ったことでしょう。教師の言葉のすばらしさや重要性がとても感じられる感動的なシーンでした。教師の言葉を素直にうけとめる初等教育において、教師の言葉かけがどれほど影響をおよぼすか。
チャックはダンス部のポスターに誘われて女子ばかりの部に入部。自分より背が30cmも高い先輩女子に憧れています。めきめきとダンスの才能を表してきたチャックに、憧れの先輩からダンスパーティに一緒に参加しようとお誘いが。
ダンスパーティー会場に行ったものの、みんなの前で先輩と踊る勇気が出ず、壁の花になっているチャック。そんな彼にダンス部の顧問の女性教師は決して無理強いせず静かに語りかける。この教師の話によりチャックはついに先輩との「くらわす」スーパーダンスをみんなに披露するのです。

1歩の勇気を引き出した教師の存在。教師とはそうありたいと思います。チャックを変える教師は二人とも女性でした。小学校には女性教師が多いのでしょうね。もう一人大事な教師が登場します。彼は黒人の男性。第1章の主人公でもあります。
ネットがダウンしてしまった後、彼は保護者面談で親から子供の様子を知ろうとします。ところが父親たちが訴えるのは子供のことではなく「エロ動画が見れなくなった」とのネットダウンによる自分の困りごとばかり。世界の危機の中でのこのユーモア。めちゃめちゃ笑わせてくれます。
キングらしいホラー味も丸屋根の部屋でちゃんと保持しています。マーク・ハミル(ルーク・スカイウォーカー)演じるおじいちゃんが決してチャックをこの部屋に入れなかった。幽霊が出るというこの部屋の正体がずっと明かされないのが逆に怖いわけです。

おじいちゃんが亡くなってついにこの部屋の正体をチャックは知ってしまいます。しかも自分の姿で。
「待っているのが一番つらい」
先日左手に入れていた金属プレートを取る手術をするために入院したのですが、なかなか手術が始まりませんでした。嫌なことを待っている時間というのは非常につらいわけです。始まってしまえば覚悟が決まりあとは流れていくだけなのですが、どんな手術かと心配しながら待っている時間が一番つらいというのを実感しました。
最後に第1章に戻りますが、満点の星(恒星)があんなふうになる終末表現は初めて見ました。主人公が元妻(本当に愛している女性)に伝えようとした言葉は無残に裂かれてしまいます。いつまでも心に住み着いてしまう恐怖の終焉シーンでした。


2つのダンスシーンを中心としたエンタメ映画でありながら恐怖の終末ディストピアであるという究極の反対テイストミックスという驚くべき作品でした。これは超超おススメの本年ナンバー1の作品でした。ぜひご覧ください。

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