佐藤 正午 著「熟柿」ある女のひとり語りがなぜかぐんぐん読ませる

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2026本屋大賞の候補にもなった郷土長崎の作家佐藤正午の作品はいかに

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結論

つらい人生ながら、決して暗くならないエネルギーがページをめくらせ、ラストに提示されるテーマに誰もがあたたかい気持ちに浸ることができる逸品

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概要・あらすじ

2026年本屋大賞ノミネート!!
第20回中央公論文芸賞 受賞
本の雑誌が選ぶ2025年度上半期 ベスト10 1位

自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)『月の満ち欠け』(直木賞受賞)著者による最新長編小説。

ネットより引用

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子を出産する。出所後、息子に会いたいあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。

googleooksより引用

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感想

少し前に雨穴著の「変な地図」を読みました。多くの図版が文章を補完して読者の理解や想像を助けるのが特徴でした。

本書「熟柿(じゅくし)」は対照的に、文章がすべてであり、文章でありありと状況や場面を読者に想像させ、どんどん読ませていくまさに「文芸」といえる作品であると思います。

冒頭の変わり者の大叔母の葬式に集まった親戚達の会話やどんちゃんさわぎが晴子という女の孤独を彫琢するようです。特に夜中に仏壇の熟した柿をすする晴子の姿はホラー映画さながらに不気味な印象をありありと読者に想像させます。

続く雨の中の柿を抱えた老婆がヘッドライトに浮かぶのも非常にビジュアル的です。そこで起こる事件が物語全体の因果の始まりであり、底流するどす黒い不幸の源流となります。

主人公「市木かおり」はひき逃げにより刑務所の中で出産し、3年後に出所したときに離婚を承諾します。夫は服役中一度も面会に来ず、離婚を迫った際には「息子をひき逃げ犯の子供にしないでくれ。死んだ母親になってくれ」と息子の未来を引き合いに出してかおりに離婚を了承させるのです。

かおりは石和温泉で仲居として働きます。しかし息子に会いたい気持ちを抑えられず、幼稚園に上がった息子を一目見ようと幼稚園にむかいます。そこで出会う「くじゅうろ さき」ちゃんとその母親が物語の重要な人物となります。

かおりはさきの母親百合が保険の仕事をしていたことから、息子のために保険金を残そうという目標をもちます。大阪のパチンコ店に移って必死で働き始めます。

パチンコ店の職員寮は2名1部屋であり、ルームメイトとなる若い女性達の非常識な態度が読者の顔をしかめさせます。しかし最後にルームメイトとなった斉藤という女にはあ然とさせられます。かおりが様々な人間に出会うことで読者もそれを追体験するようです。

様々な人物達の異様な姿や元夫のとんでもない嘘などストーリーの豊かな展開がどんどんページをめくらせていきます。かなりつらい話であるのに物語が暗く沈まないのはなぜでしょうか。それはかおりの必死な生きる力に加えて、文章の中に何とも言えぬユーモアが醸し出されているからではないかと思われます。

さきの計らいでかおりはついに息子と対面することとなります。クライマックスです。ぜひ本編で楽しんでください。

そしてエンディングに提示される「熟柿」の意味は読者の胸にあたたかい希望の光を差し込みます。だれにでもわかりやすいそのテーマは「読んでよかった」という満足感をきっと与えることでしょう。

samon
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文学の喜びを享受できるすばらしい作品だと思います。多くの方に読んでいただきたい。超オススメの作品です。本屋大賞第2位の知らせが入ってきました。

コメント

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