黒川博行箸「カウント・プラン」

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黒川博行箸「カウント・プラン」の表題作を読みました。「桃源」で楽しませてもらった著者の、日本推理作家協会賞受賞の短編である。物語は二つの視点が平行して語られていく。福島という「計算症」(数えずにはいられない神経症)の男の日常が淡々と綴られ、もう一方では大手スーパーに送られる脅迫事件を追う、大阪の所轄署の刑事たちの働きが描かれる。特異な神経症をかかえながらも、毎日の定型的な判をついたような生活を続けている男の姿を、言い換えれば孤独だがまじめな姿を見つめ続ける読者は、彼が犯人でないことはとうにわかっている。しかし警察は彼に的を絞って、二つの物語の線はどんどん近づいていく。意外な犯人の姿に、そうだったのかと驚くと同時に、勤め先を変えるだろうが続いていくだろう福島の日常に、やるせない孤独感を感じるだろう。同時に10年もつとめ続けられたようないい職場に恵まれることを祈るだろう。孤独とサスペンスが不思議な読後感を醸し出す一品である。おすすめ。

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