アンソニー・ホロヴィッツ著「メインテーマは殺人」見事な手際に驚くこと必至!

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アンソニー・ホロヴィッツ著「メインテーマは殺人」(創元推理文庫)読了しました。

samon
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結論から言うと、478ページの大長編ミステリーですが、無駄な部分がなく、かつ驚きの真実、さらには魅力的な登場人物たちなど、この本は読書の楽しみを教えてくれる本です。大オススメ!

受賞歴です。

第1位『このミステリーがすごい! 2020年版』海外編 
第1位〈週刊文春〉2019ミステリーベスト10 海外部門
第1位『2020本格ミステリ・ベスト10』海外篇
第1位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 海外篇

4冠王です。おもしろいことは折り紙付きですね。

本作は、元警察官で現在警察の顧問であるホーソーンと、作者アンソニー・ホロヴィッツ自身がそのままの名前で登場するシリーズの第1作です。

私はこのシリーズの第2弾「その裁きは死」を先に読みました。そのことは別の記事で書きました。

主人公のホーソーンと語り手のホロヴィッツの出会いと最初の事件解決になるわけですが、むろんこの二人の関係は、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズとワトスンに似ています。

ホロヴィッツ自身、コナンドイル財団の公式認定のホームズの新作「絹の家」と「モリアーティ」(いずれも角川文庫)を上梓しています。ホロヴィッツがホームズ物のオーソリティであることはいうまでもありません。

ホームズとワトスンの関係がどうであったかは、ホームズ物を読んでいたのは小学生の頃であり、すでに忘却の彼方にあって分からないわけですが、ホロヴィッツとホーソーンの揺れ動く関係を描いているのも実におもしろい点です。

ホーソーンは、ホロヴィッツの靴についている土や犬の毛から推理をはたらかせるとこなど、まさにホームズはりの観察力を発揮します。

しかし、ホーソーンの私生活はほとんど語られず、ホロヴィッツもそれを知りたがり、少しずつ見えてくる点もおもしろいと思います。

ちなみに、本作で分かるホーソーンは次のような人物です。

・別居している妻あり。
・11歳の息子あり。
・酒は飲まない。
・小児同性愛者を嫌悪。同性愛者を嫌悪。
・読書会に参加。
・プラモデルが趣味。軍用飛行機、戦車等
・テムズ川沿いの高級アパートのペントハウスに在住

「その裁きは死」では同じアパートの読書会の様子も出てきました。

謎多きホーソーンの人物像を、読者は勝手に想像して作り上げます。これが小説の醍醐味でもありますね。個々人が違うホーソーン像を脳内に描きます。

samon
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本作では、突然に真犯人が明確になり、あわやホロヴィッツが殺されてしまいそうになります。まさに手に汗握る場面でもあります。通常、名探偵たる主人公が犯人を追い詰めていくのが王道でしょうが、急なことでビックリします。しかし、その後にまだ数十ページが残されています。

真犯人にメスを2本突き立てられたホロヴィッツが入院しているところに、ホーソーンが面会にやってきます。そこでの会話が、まさに名探偵の推理開陳の場となっています。

長編の中にちりばめられていた、様々なピース・かけらが、ぴたりとはまっていく。実は真犯人につながるヒントが、はっきりと示されていたにも関わらず、私たち読者もそしてホロヴィッツも気がつかずに通り過ぎていたのです。

それをホーソーンが鮮やかに説明していきます。「ああ、そうだったのか!」思わず、ページを戻って本当に書かれているのか確かめてみます。ちゃんと記されているのです。

巻末の解説文(杉江 松恋)の冒頭は「惚れ惚れするようなフェアプレイ」で始まります。そう、作者は真犯人を推理する手がかりを、はっきりと書いているのです。まさにフェアプレイ。われわれは、まんまとそれに気づかず読み進めてしまう。そして、最後に「そうだったのか!」と驚かされるのです。まさに「惚れ惚れ」する手際です。

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書籍の最後には、作者の謝辞がよく記されます。本作でも、作者アンソニー・ホロヴィッツが謝辞を書いています。しかし、この謝辞は小説の中のホロヴィッツの小説世界の人々への謝辞なのです。これには思わずにんまりとしてしまいます。みなさんもぜひ、この小説世界に入って、作者のマジックの手際をお楽しみください。大オススメ!

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