初ものがたり(完本)

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宮部みゆき著「初ものがたり(完本)」読了しました。「本所深川ふしぎ草紙」に登場する岡っ引き、回向院の茂七親分が主人公の物語だ。「きたきた捕物帖」同様に登場人物のキャラ立ちが素晴らしい。手下の権三に糸吉、糸吉は「糸吉の恋」でメインに出てくる。この話に出てくる菜の花畑とそこにたたずむ娘が本当に美しい。日道こと超能力少年長助に誰よりぴりっと辛いのが屋台の稲荷寿司屋の親父。元火付け盗賊改め方ではないかと茂七が推理するこの親父が効いている。親父と血縁なのだろうか?ヤクザの勝造と魅力的な登場人物の中で、謎と人情が交錯する珠玉の連作小説だ。中でも付け加わった3話の最後「鬼は外」は染みた。節分にどの家からも追い出される鬼立ちを不憫に思い、屋台の席を用意する稲荷寿司屋の親父。これに7歳にして生家を出された寿八郎の物語が重なる。追い出されてしまう哀しみとそれを思い手をさしのべる人情。心温まり自らを振り返ってしまう。そんな名品だった。オススメです。

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