
友人が多数出演する演奏会に行ってきました。
結論
毎回感動の演奏を聴かせてくれる諫早交響楽団。今回も期待通りの名演。補修工事後のホールトーンの改善はよくわからない。
概要
諫早文化会館は、昨年度大規模改修工事を実施し大ホールの客席の更新やホワイエの改装等を行いました。
プログラムの市長挨拶より引用
プログラム
オープニング・アクト 酒井健吉編曲/のんのこ節・本踊り 道行きスメタナ/連作交響詩「わが祖国」より「高い城」「モルダウ」
シューマン/交響曲第1番変ロ長調作品38「春」
感想
珍しく緞帳が下りています。文化会館のこけら落としのオープニングアクトとして、諫早の皿踊り(小さな皿を2枚ずつ両手に持って、かちかちと鳴らしながら踊る)が披露されます。踊る人たちが、客席の通路に立ち、緞帳が上がるとすでにオーケストラがスタンバイしている構図です。
のんのこ節がオーケストラ編曲で演奏されます。この民謡に詳しいわけではありませんが、編曲は旋律を中心になぞったもので、管弦楽的な工夫というものは特に感じませんでした。単調でむしろ長く感じました。
市長・団長と挨拶が多いのが玉に瑕ですが、それを我慢すれば素晴らしい演奏が待っています。

舞台左の2台のハープが目を引きます。このハープに導かれて始まるのが、大好きなスメタナの「わが祖国」です。ここでのハープの旋律は、連作交響詩を貫くもので、悲しげでありでも希望にも満ちているという希有な旋律と思います。スメタナの故郷への熱い思いに共感できるメロディです。
この美しい旋律を「城の主題」と呼びましょう。この主題が管楽器から積み重なり、弦楽器に移り、大きく展開する様を諫早交響楽団は真摯に紡いでいきます。中間で不気味な下降形の音型が出てきますが、城の没落とともに、スメタナの耳の病の進行を感じさせもします。
人口に膾炙した「モルダウ」が始まります。川のさざなみのようなフルートのアルペジオもビオラ・チェロのアルペジオも確実ですばらしい。バイオリンによる悠々とした旋律が美しく流れます。諫早交響楽団の弦楽器の皆さんの技量の高さに感嘆するばかりです。
特に後半にあらわれる第1バイオリンの弱音の超高音の旋律は非常に美しかった。
休憩後はシューマンの「春」シンフォニーです。この季節、こけらおとしにぴったりな選曲ですね。シューマンがクララと結婚できて、人生でもっとも幸せな時期に作曲された曲。初演はメンデルスゾーン指揮でライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団が行いました。
冒頭天国的なトランペットの音で始まります。少しきれいに出なかった感はありましたが、その後のトッティ(全合奏)の豊かさにほっとします。ゆったりとした序奏が終わるとアレグロに入りますが、若々しい速いテンポで「おっ」と思いました。「とても活き活きと」の指定をまさに表現されていると思いました。
2楽章は当初「夕暮れ」の標題がありましたが、その雰囲気がよく出ていたと思います。主題を奏するチェロはとてもそろっていて美しかったです。
3楽章はめまぐるしく曲想が変わる3拍子のスケルツオ。ここも「モルト ヴィヴァーチェ(とても活き活きと)」感が印象的でぐんぐん進んでいく迫力に聴き入りました。
4楽章では途中のフルートソロが見事で印象に残りました。私など本番はビビってあんなルバートはかけられないと思います。

こちらのオーケストラは、真摯で情熱的な演奏が感動をもたらしてくれます。毎回楽しみにしている長崎の誇りのオーケストラです。
長崎には長崎市に洗練されたサウンドがすばらしい「長崎交響楽団」が、佐世保市には歴史の深い「佐世保市民管弦楽団」という市民オーケストラがあり、さらに大村市には「長崎大村室内合奏団」というプロの室内オーケーストラもあるのです。九州の中ではプロオケは九州交響楽団と大村のみです。
今回諫早交響楽団のホームグラウンドである「文化会館」が1年がかりの補修工事を終えてのこけらおとしのわけです。客席が広くなった点は十分評価できます。新聞紙上には「音響設備も充実」と書かれていました。ホールトーンに期待をしましたが、以前との違いは判然としませんでした。
もしかしたら「音響設備」とはホールトーンの改善ではなく、PA施設等の更新の意味かも知れません。
佐世保市には「県立劇場」という音のいいホールがあり、諫早市はこけら落とし直後。問題は長崎市です。予定されていた「新しい文化施設」は市長の決断力の無さに回り道をし、1年間を棒に振ってしまいました。その間に資材や建設費、人件費は高騰。当初の予定の施設をけずるなどといっています。あきれて物がいえません。
長崎市にはもう何年も海外のオーケストラなど来ていないように思います。

最後はちょっと愚痴になってしまいましたが、頑張っている市民オーケストラやプロ室内オケの音がさらによくなる、そんなホールの充実が今最も望まれることだと思います。
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