市立図書館で発見。新作「ダーク・グラス」を発表したアルジェント。彼の原点たる名作を観てみましょう。
結論
原色の美、モダンな美術、強烈な音楽、それらが乱舞する世界を、謎解きスリラーの理知的脚本が支え、まさに奇跡のバランスで成り立っている名作。もう観るしかない。
あらすじ・解説
ニューヨークからドイツのバレエ学校にやってきたスージーは、激しい雨の中、ようやく学校にたどりつき、扉を叩くが応答はなかった。翌朝、改めて学校を訪れた彼女は、副校長のブランク夫人とタナー女史に紹介される。ハードなレッスンが始まるが、不安や疲労がたまったスージーは倒れてしまい、目がさめると寄宿舎のベットにいた。そこで彼女は以前から学校で何人もの人間が行方不明になっているという謎めいた話を聞かされる。
ここから引用
『サスペリア』(Suspiria)は、1977年制作のイタリアのホラー映画。監督はダリオ・アルジェント、出演はジェシカ・ハーパーとアリダ・ヴァリなど。 トマス・ド・クインシーの1845年の小説『深き淵よりの嘆息(英語版)』をモチーフに、ダリオ・アルジェントとダリア・ニコロディが脚本化し、ドイツのバレエ名門校に入学した若い娘を襲う恐怖を描いている。アルジェント監督による「魔女3部作」の1作目[2]。
wikiより引用
イタリアが生んだホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントが30年の歳月をかけて完成させたホラー映画の金字塔”魔女3部作”。「決して一人では見ないでください」のキャッチコピーと共に1977年日本で劇場公開、大ヒットを記録した恐怖映画史に残るホラー映画屈指の名作『サスペリア』。魔女”ため息の母”が登場。続き、アメリカ・ハリウッド資本が入り製作された、アルジェント作品の中でもカルト作品としてファンの人気が高い『インフェルノ』。2番目の魔女”暗黒の母”が登場。そして2009年に日本で劇場公開しヒットの記憶も新しい、実の娘アーシア・アルジェント主演の『サスペリア・テルザ最後の魔女』。最後の魔女”涙の母”が登場。
amazonより引用
感想
バレエ学校に潜む秘密、それは魔女伝説の継承。それをどちらかというと童顔なスージーが探求していくという、意外にも理知的な筋立てがとても気に入りました。この背骨の部分のストーリーがあるからこそ、以下述べるアルジェントの特徴的な映像が破綻無く生きるのではないかと思います。
原色
なんといっても「赤」でしょう。冒頭の夜の空港の光から真っ赤です。空港の灯りといえばまばゆい白というイメージがありますが、頭からそれを否定して、独特の世界に引きこまれます。
タクシーの中でも点滅する町の光は「赤」です。夜の雨の中にそびえ立つバレエ学校も異様なほど「赤」ですね。徹底して「赤」が印象づけられますが、それを対比的に強調するのが、時折入る「緑」の光でしょうか。赤と緑は補色関係ですので、もう目がちかちかするくらい、お互いが強調されます。
秘密を知った女学生が、学校から逃げ出し友人のアパートに助けを求めます。このアパートがまた「赤」いですねえ。そして、最初のショッキングな殺害シーンの締めが、したたる真っ赤な血。私たちがよく見る「静脈血」のような黒っぽい血でなく、朱色がかった鮮血です。本物っぽくないのですが、それがアルジェントの特徴にもなっているのでしょうか。
音楽
イタリアのプログレッシブロックバンド「ゴブリン」による強烈な音楽が、冒頭から耳を捉えます。スピード感と激しいサウンド、かと思えば「エクソシスト」のテーマのようなチェンバロっぽい音色の神秘的な旋律が交錯します。文字通り子鬼(ゴブリン)がささやくような声が特徴的です。
この音楽の主張は、アルジェント映画の特徴でもあるようです。
今回のディスクは5.1チャンネルサラウンドの音が入っており、包囲感はもちろん、上空から降り注ぐような音に驚きました。1977年公開当時はできなかった音の演出だと思います。
美術
芸術の国イタリアらしい、モダンあるいは伝統的な美術がつまっているのも本作の魅力です。
バレエ学校から逃げ出した生徒が友人のアパートを頼っていきますが、このアパートのデザインのモダンなこと。エレベーターの上のランプは三角形を回転します。これは初めて見ましたね。部屋の中の壁紙も日本の無地とは対照的な装飾過多なものばかり。暮らしていて目がちらちらしませんか?
ラスト近くの秘密の回廊の壁面も装飾的で美しいです。悪魔主義の学校であることが表面化してくると、学校の美術も変化し、豪雨をはき出す雨といはいくつもの魔物の顔をしています。
忘れられない笑顔
ラストはバレエ学校の崩壊が描かれますが、室内品の爆発、壁の裂け目、玄関ドアはふっとび、室内の燃えさかる炎でガラス窓が破壊します。魔女のバレエ学校を破滅に導いた主人公スージーは学校の外に出てきて最後、うっすら爽やかに微笑みます。この表情忘れられませんね。神の勝利なのでしょうか。
立場を変えると、バレエ学校側からすると、突然アメリカからやってきて、これまでの平穏な生活を覆されてしまったことになります。スージーこそ魔女だと感じたかも知れませんね。
ダリオ・アルジェント
イタリアン・ホラーの巨匠。映画プロデューサーの父親とカメラマンの母親を持ち、幼少から映画製作に興味を抱く。高校時代から映画雑誌に映画評を投稿し、卒業後はローマの新聞「パエーゼ・セラ」の映画批評を担当。セルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」(69)原案をベルナルド・ベルトルッチと共同執筆して以降、マカロニ・ウエスタンや戦争映画の脚本を執筆する。1969年、「歓びの毒牙」で監督デビューを果たし、「4匹の蝿」(71)や「サスペリア PART2」(76)などのメガホンをとる。ホラー映画「サスペリア」(77)のイタリア国内での大ヒットで名匠としての地位を確立した後、「インフェルノ」(80)でハリウッドに進出し、「フェノミナ」(84)や「オペラ座 血の喝采」(88)などを発表。ジョージ・A・ロメロ監督作「ゾンビ」(78)の監修・音楽や、「デモンズ」シリーズなどの製作でも知られる。「サスペリアPART2」の主演女優ダリア・ニコロディとの間に生まれた次女アーシア・アルジェントはイタリアを代表する女優として活躍する。
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新作:ダークグラス
アルジェントが10年ぶりに監督・脚本を担当したのが「ダークグラス」。
イタリア・ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生。その4人目のターゲットにされたコールガールのディアナもまた殺人鬼に執拗に追いかけられ、ある夜、車を衝突させられ大事故に遭い、一命は取り留めるも両目の視力を失う。同じ事故で両親を亡くした中国人の少年チンとディアナに絆が生まれ、一緒に暮らすこととなるが、サイコパスの殺人鬼はその後もしつこくディアナたちを殺害しようとつけ狙う。
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スリリングな展開、スタイリッシュな映像、特徴的な音楽、いわゆるジャーロ映画です。アルジェントの面目躍如たる作品ですね。娘のアーシアも演じてます。
以前、アルジェント監督とアーシア主演の「スタンダールシンドローム」を輸入盤で観たことがありますが、日本語字幕無しでも何となく分かる話だったという思い出があります。
たぶん公開当時も観たと思うんですが、当然のこと今再び観てみると、様々な新たな発見がありますね。自分も年取った、いや成長したなあと思います。本作はただのホラー映画を越えた芸術性に満ちています。何よりおもしろい!必見です。長崎市立図書館所蔵。
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