がんばる?

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松岡錠司監督作品「東京タワー  オカンとボクと、時々、オトン 」(長崎市立図書館DVD)を観ました。

不思議なことに、この映画を観る前に、TVで郷ひろみが出ている番組があって、樹木希林の話をしていた。ドラマ「ムー」の樹木希林のあの演技は、一切アドリブがなかったという話だ。きちんとしたシナリオの上に、練習を重ねた演技だったらしい。

それを考えると、「東京タワー」での樹木希林の演技はすさまじいことがつくづく感じられる。特に印象深いのは、死のシーンだ。一度のけぞるようにして、静かに崩れ落ち、息を吐いて目を閉じる。はっきりと「死」が観るものに伝わるのだ。こんな死のシーンをかつてある映画で観たことを思い出した。黒澤明監督作品「赤ひげ」での老人男性の死の瞬間である。それを観たとき、「人って最後はこのようにしてこの世を終わるのだ」と痛いまでに感じたのだ。あれを思い出した。そんなすさまじい演技だったのだ。樹木希林のそれは。あれが、アドリブとかその場の感性とかでなく、磨き抜かれて構築されたものだと思うと、この女優さんの凄さを思い知る。

さて、この映画にはキーワードを感じた。「がんばる」という言葉だ。ボクが大学の単位が足らず、故郷のオカンに電話する。「どうしてがんばれんかったんかねえ」を繰り返す。それは責めているので無く、まるでオカンが自分に問いかけるようだ。そしてボクはもう1年頑張ることを決心し、大学を卒業する。つらい抗がん剤治療を選択瀬名場ならぬときも、「がんばれるかねえ」と問いつつも、今度はボクの元カノの松たか子に励まされ、今度は自分が頑張ることを決心する。ボクは、ついに亡くなったオカンに「がんばったね」と夕日の中のモノローグで静かに語る。「がんばる」ことを決意するのは最終的に自分ではあるのだが、それを応援してくれる人がいたならば、「がんばれる」んだねえ。あんまり、人に「がんばれがんばれ」言わずに、それでも支えてあげたいなあ。そんな人になりたいなあ。そんなことを思ったよい映画でした。オススメ。

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