テッド・ブラウン監督作品「ビバ・マエストロ 指揮者ドゥダメルの挑戦」ベネスエラの政争に巻き込まれる音楽を愛し音楽を生きるもの達の戦い

Classic
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samon
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セントラル劇場 土曜日 17:20の回。1週間しか上映されないので急いで行きました。観客はたぶん4人くらい。映画はすばらしかった。多くの人に見て欲しい。

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結論

音楽は「人権」だ。すべての花が刈られようとも、春はかならずやってくる。胸に残るすばらしい言葉。数々の名演奏とともに、天才指揮者デュダメルの不屈の戦いが爽快ですらある。必聴必見。

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概要

来たる2026年、ラテン系指揮者で初のニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督就任が決定しているグスターボ・ドゥダメル
21世紀のクラシック界に彗星のごとく登場し全世界を魅了するベネズエラの若き指揮者の栄光と苦悩そして挑戦に密着したドキュメンタリー

公式HPより引用

1981年1月26日ベネズエラに生まれ、10代の頃から天才指揮者として名だたる巨匠たちの薫陶を受けてきたドゥダメルは、2004年「第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール」優勝、2009年に弱冠28歳で名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任。たちまちクラシック界で注目を集めると共に、『TIME』誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」にも選出。
本作は、そんなジャンルの枠を超えスターへの階段を駆け上がり続ける、クラシック界の新ヒーローの物語―――となるはずであった。

同上

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感想

「音楽は社会の発展の要因として認識されなければならない。なぜなら最も高度なセンスにおいて音楽は最も高度な価値、連帯、調和、相互の思いやりと言ったものをもたらすからである。そして音楽には全共同体の統一させる能力と崇高な感情を表現することのできる能力があるのだ」。(アブレウのビジョン)
wikiより引用

このマエストロ・アブレウの思想を政権が金銭的に支持し、エル・システマという音楽教育プログラムが作られます。

このプログラムは、ややもすれば薬物、虐待と犯罪に溺れてしまう極度に貧しい環境にいる若者を救うためのものとして知られる。
同上

この映画の主人公グスターボ・ドゥダメルもこのプログラム出身の音楽家です。バイオリンを学び、映画の終わり付近でドゥダメルがバイオリンを演奏している場面も出てきます。

エル・システマというすばらしい仕組みに国が支援し、驚くべき力のオーケストラとして結実するのです。ところが、政治の混乱についてドゥダメルがついにたまらず声を上げたとたんに、ユースオーケストラもシモンボリバルオーケストラも演奏会ができなくなってしまうのです。

映画ではこれをコンサートポスター状のものが消えていく表現でわかりやすく悲しく印象的に描かれます。政治と芸術は別のものと考えがちですが、そうではないことがわかります。

ベネズエラのオーケストラとドゥダメルの窮状に光が差すのが、メキシコの作曲家マルケスとドゥダメルの友情です。メキシコでエル・システマ的な活動をしていたマルケス。その子どもたちのオーケストラをドゥダメルが指揮をするのです。曲はベネズエラのユースオケでも演奏した「新世界」4楽章。

その力強い演奏はとても感動的です。子どもたちの活き活きとした魂が音となって聴く者の心に届きます。生きることに絶望していた子どもたちを音楽が救い、希望の光として再び生きる喜びをつかんだ子どもたちの心が音楽に現れる。根源的な芸術の力だと思います。

この子どもたちのオーケストラがチリの首都サンチャゴで演奏会を行うこととなり、サポートするメンバーをドゥダメルは集め始めます。ばらばらになったシモンボリバル響の盟友達、活動できなくなったベネズエラのユースオーケストラの子どもたちなどが結集していきます。

演奏会を通してのベネズエラとメキシコの若いプレーヤーたちの交流がほほえましく記録されています。ユニフォーム交換したメキシコの女の子が嬉しそうに「ベネズエラ人になっちゃった」この言葉の中に国境や人種を超えた音楽の力を感じます。

演奏会後の(前かも)、再び再開したデュダメルとシモンボリバルオケの仲間やユースの教え子たち。ささやかな食事の会の前のデュダメルの挨拶は感動的。映画のテーマともいえる部分が明確に語られます。チラシにも載っているので転載します。

「すべての花が刈られてようとも、かならず春はくる」

また次の言葉も心に残ります。「音楽は人権です」

全く同感です。音楽を聴くこと奏でること楽しむことは人間が生きていくための権利であると強く思います。その人権を守るために戦うデュダメルの姿は彼の笑顔とともに強く胸に残ります。

samon
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デュダメルとオーケストラの演奏する音楽の収録状態もすばらしく、劇場のいい音響でぜひ御覧いただきたい作品です。超オススメ!

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