「ジャッカルの日」を思い出させるサスペンス。一気読み必至のおもしろさ。
結論
一級の暗殺サスペンスとして読ませます。半面現実の事件が重なるがゆえのノイズも感じてしまう。
概要・あらすじ
元総理が凶弾に倒れ、その場にいた一人の男が捕まった。
日本を震撼させた2発の銃弾。
本当に“彼”が、元総理を撃ったのか?
日本を震撼させた実際の事件をモチーフに膨大な取材で描く、傑作サスペンス。
奈良県で日本の元内閣総理大臣が撃たれ、死亡した。その場で取り押さえられたのは41歳男性の容疑者。男は手製の銃で背後から被害者を強襲。犯行の動機として、元総理とある宗教団体とのつながりを主張した――。
日本史上最長政権を築いた元総理が殺された、前代未聞の凶行。しかし、この事件では多くの疑問点が見逃されていた。致命傷となった銃弾が、現場から見つかっていない。被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。そして、警察の現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。
警察は何を隠しているのか? 真犯人は誰だ?googlebooksより引用
柴田 哲孝
東京都武蔵野市生まれ[1]。日本大学芸術学部写真学科中退。フリーのカメラマンから作家に転身し、現在はフィクションとノンフィクションの両分野で活動する。
2006年に『下山事件 最後の証言』で第59回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)と第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞、2007年に『TENGU』で第9回大藪春彦賞を受賞。
小説作品は動物をテーマにしたものが多く、また競馬に関するノンフィクションも多い。
1986年から1990年のパリ・ダカールラリーにドライバーとして参戦したほか、南米のアマゾン川に世界最大の淡水魚ピラルクーを釣りに行った冒険旅行記なども出版している。モータージャーナリストとしても活動した。
wikiより引用
感想
暗殺に関わる3人の男たち、オズワルド役の上沼、スナイパー「シャドウ」、事件を追う週刊誌記者一ノ瀬の姿が描かれ、一級のサスペンス小説としておもしろくどんどんページをめくってしまいます。
唯一の女性キャラクター、記者の美恵が魅力的。頭の回転が速く、大物への人脈をもち、真実を求める記者魂ももっています。自分の身を挺してまで情報を得ようとする部分はどきどきしました。そんな彼女がたどる結末は驚きます。
銃や弾丸についての描写が精緻で専門的でわくわくさせられます。体内で溶けて無くなる弾丸すごいですね。スナイパー「シャドウ」がビルから射撃するまでのシークエンスはまさに「ジャッカル」フォーサイスの小説読み返してみたくなりました。
そんな小説的なおもしろさ抜群な本書ですが、安部元総理暗殺事件という事実が厳然と存在するのですから、いったいどこまでがこの小説は本物なのか?という疑問がノイズとして小説を楽しむことを多少邪魔する気がしました。
暗殺計画のトリガーが「令和」の年号にあるところは、ちょっとピンとこない感じ。
それにしても、現実の安部元総理暗殺から2年。容疑者の裁判すら開始されないのはなぜなのでしょうか。あの事件が多くの疑問を含んでいるのは確かです。
サスペンス小説として十分楽しめます。ぜひお読みください。
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