ヴィム・ベンダース監督作品「PERFECT DAYS」ご機嫌なカセットサウンドにのってくり返させる日常 しかし木漏れ日のように同じものはひとつとしてなし

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samon
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1月15日(月)12:25の回、TOHOシネマズ長崎9番スクリーンで鑑賞してきました。1日に1回だけの上映。びっくりするような入りでした。

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結論

必見必聴。外国人監督による大傑作日本映画が結実。よいものは国境を越えますね。

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概要・あらすじ

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと
日本を代表する俳優 役所広司の美しきセッション。
フィクションの存在をドキュメントのように追う。
ドキュメントとフィクションを極めた
ヴェンダースにしか到達できない映画が生まれた。
カンヌ国際映画祭では、
ヴェンダースの最高傑作との呼び声も高く
世界80ヵ国の配給が決定。

公式サイトより引用

こんなふうに生きていけたなら

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、
静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、
同じ日は1日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。

同上
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感想

映画のエンドタイトルが流れはじめると、一人の男性が劇場を出ていきました。エンドタイトルの最後にとても重要なテーマのヒントが語られたというのに。やはり映画はエンドタイトルの終わりまで付き合うべきですね。

主人公の平山は、毎日お昼をいつもの神社で取ります。その際にオリンパスのコンパクトなフィルムカメラを上に向け、木々の隙間から差し込む木漏れ日を撮影します。モノクロフィルムです。

出来上がった現像写真を1枚ずつ見ながら気に入ったものは残し、そうでないものは破り捨てます。同じ場所の同じ木漏れ日でも、どれ一つ同じものはない。彼はその一瞬を思い出のようにフィルムに焼き付けているのでしょうか。

日々同じことの繰り返しの毎日は私も同じこと。この映画を観た人は、つまらないような同じ毎日のとらえかたが全く変わってしまうと思います。どれひとつ同じでない毎日に気が付き、その日々をいとおしく幸せに感じることができる。そんな作用をもたらす作品だと思います。

長崎市出身の麻生祐未さんが出演していました。久しぶりにお見掛けするような。彼女は平山の妹役。平山のボロアパートに運転手付きの高級車で乗り付けて、娘のニコを迎えに来ます。「父親が動けなくなって・・・。命があるうちに本部に会いに来て」と平山に告げます。

このセリフからして、平山と麻生の父親は相当な大会社の会長あたりかと推測されます。平山はその富裕層ラインからドロップアウトした人であることが想像されます。

このドロップアウトした親戚(叔父伯父であることが多い)はよくあるキャラクターです。一同のつまはじき者であるが、甥っ子や姪っ子にとっては何か魅力的である場合が多い。

「サマーウォーズ」の侘助はまさにそうでした。富裕層ではないが「寅さん」もそうでしょう。本作も魅力的な伯父さん平山を頼って、家出してくる姪のニコという図式です。

「家出するなら、伯父さんのところと決めてたんだ」ニコのセリフは、堅い一族の中で自由にふるまう外れ者の平山が魅力的であったことを示しているようです。

ただ、魅力ある伯父さんが今回は寅さんのように饒舌でなく、非常に無口だという点は異なります。あの何もしゃべらない平山がニコにはどうして魅力的に映ったのでしょうか?映画の中の自転車で二人が語り合う場面がヒントになるような気がします。

平山が出勤時や移動時に車の中で聴くカセットテープの音楽が最高です。下はサントラリストです。

  • 朝日の当たる家/アニマルズ
  • ペイル・ブルー・アイズ/ベルベットアンダーグラウンド
  • (シッティングオン)ドック・オブ・ザ・ベイ/オーティス・レディング
  • レドンド・ビーチ/パティ・スミス
  • 青い魚/金述 幸子
  • パーフェクト・デイ/ルー・リード
  • ブラウン・アイド・ガール/バン・モリソン
  • フィーリング・グッド/ニーナ・シモン

アニマルズの「朝日の当たる家」もいいですが、石川さゆりの歌にはびっくりしました。ちゃんと演歌になってました。伴奏のギターはあがた守魚でした。

ニーナ・シモンは最近観たyoutubeが衝撃でした。音楽を完全に支配している感じでした。女王でした。観客にも「座れ!」と怒ってました。すごい人であること、すごい音楽であることがあふれ出ていました。

金述 幸子さんは1968年デビューのシンガーソングライター。全然知りませんでした。いい歌でした。

何と言っても今は亡きルー・リードの「PERFECT DAY」最高です。「キーミーハンギノン」心に突き刺さる歌詞歌唱です。エンドタイトルにもインストで流れる、やはり映画の中心的な曲。

映画は日本文化を忠実に描いていますが、別れのハグだけは西洋的な気がしました。

ヴィム・ベンダース

ヴィム・ヴェンダース、1945年生まれ。70年代のニュー・ジャーマン・シネマを生み出したひとりであり、現代映画を代表する映画監督である。第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『パリ、テキサス』(’84)で、ロードムービーは彼の代名詞のひとつとなり、『ベルリン・天使の詩』(’87)など数々の名作を発表し、80年代、90年代のミニシアターブームを牽引する。現在の日本映画への影響は計り知れない。

同上

「パリ・テキサス」も「ベルリン天使の詩」も若いこと観たのですが、ピンとこなかった記憶があります。今見たらきっと違う印象だと思います。映画に年が追い付いてなかった。もしかしたら、本作「PERFECT DAYS」を若い人が見たら「何これ」という印象の人も多いのではないかと思います。

年齢を経てみる映画ってもの価値がありますよね。

samon
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私にとって近年で一番の大傑作映画と思います。必見必聴の作品です。ぜひ劇場でご鑑賞されることをおすすめします。

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