貴志祐介 著「秋雨物語」読了 秋雨のほの暗さの中で紡がれる4つの中編小説 「こっくりさん」での彼岸の美しさは秀逸

スポンサーリンク
samon
samon
スポンサーリンク

結論

多元宇宙やオーディオ趣味、ホラー×ミステリーにラストの彼岸の美しさとそのイマジネーションは宇宙的多方向に飛躍して、読者を引きずり回します。それが快感。大オススメの中編集。読んで欲しい!

スポンサーリンク

概要・あらすじ

失踪した作家・青山黎明が遺した原稿。それは彼を長年悩ませる謎の転移現象の記録だった。転移に抵抗する青山だったが、更なる悪夢に引きずり込まれていく(「フーグ」)。ある呪いを背負った青年の生き地獄、この世のものとは思えないある絶唱の記録など、至高のホラー4編による絶望の連作集。『黒い家』『天使の囀り』『悪の教典』……いくつもの傑作を生み出した鬼才・貴志祐介が10年以上にわたり描き続けた新シリーズが遂にベールを脱ぐ。

googleBooksより引用
スポンサーリンク

感想

白鳥の歌(スワンソング)

一作目が評価されたものの、それ以降は鳴かず飛ばずの作家大西令文は、資産家の老人嵯峨平太郎から仕事の依頼を受けて彼の自宅を訪れます。音楽ファン、オーディオファンであるという嵯峨から、SPレコードで録音されたという、幻の日系アメリカ人歌手ミツコ・ジョーンズの歌を聞かされますが、大西はその歌声の素晴らしさに驚きます。
 仕事とはミツコの伝記を執筆してほしいというものでした。ちょうどアメリカでの調査を依頼していた黒人男性ロスがその報告に訪れており、大西は一緒にそれを聞くことになりますが、その内容は驚くべきものでした…。
ネットより引用

主人公が嵯峨の地下のオーディオルームで聞くSPレコードのシーンでは、作者のオーディオ好きが溢れてくるようでした。特にコンデンサ型スピーカーの話などです。STAXのヘッドフォンにも言及しますね。興味が無い人はここらで退場したくなります。でも書きたかったんでしょうね。

アメリカの探偵の調査結果報告が後半ですが、この内容が引きこまれます。前半で退場せずによかった!ミツコをたどるためにもう一人の歌手の話が登場。プッチーニの「マノンレスコー」のアリア「一人寂しく捨てられて」が物語を引っ張っていきます。

マノンが捨てられた砂漠を目指した二人の歌手の悲劇と合理的な原因の提示が愕然とさせます。

こっくりさん

ある事件を起こして自殺を考えていた小学生の少年拓矢は、難病である友人遼人から、どうせ死ぬつもりならチャレンジしてみないかと、「こっくりさん」の闇ヴァージョンを行うことを提案します。それは命に関わる難題を抱えた四人の人間を集めて行う儀式で、そのうち三人の人間は人生をやり直すチャンスをもらえますが、一人は命を落とすことになる…というものでした。
同上

実に愉しく読めるホラー中編に仕上がっています。裏こっくりさん、廃病院、追い詰められた仲間と道具立ては十分です。

ロシアン・ルーレットこっくりさんで生き残った主人公が、大人になって再び同じデスゲームを展開するかと思いきや、意外な結末にびっくりすることでしょう。

死の安楽、死の幸せ。ラストの彼岸の美しさは夢のようです。

貴志祐介

30歳の時、同僚の事故死をきっかけに自分の人生を考え[4]、8年間勤めた朝日生命保険を退職し、執筆・投稿活動に専念する[5]鈴木光司ホラー小説リング』を読み、「ホラーというのは、ミステリの文脈でまったく新しいものが書ける」と気づいたという[3]。1994年に日本ホラー小説大賞が創設されると第1回から応募を続け、阪神・淡路大震災の経験を機に、1996年に『ISOLA』(『十三番目の人格 ISOLA』と改題して刊行)で第3回長編賞佳作を受賞し、同作で作家デビュー。1997年に『黒い家』で第4回大賞を受賞した。

wikiより引用

ホラーをきっかけにデビューしたわけですが、初期はSFで投稿を重ね、のちの「新世界から」という大長編に結実します。

また、青春小説(「青の炎」)や防犯探偵・榎本シリーズ(「硝子のハンマー」等)で本格ミステリーなど幅広いジャンルを手がけます。そしてどれも抜群におもしろい。

新作をいつも心待ちにしています。新聞の書評欄に最新の「梅雨物語」を見つけましたが、その前作に「秋雨物語」を知り、そちらから先に読むことにしました。

samon
samon

上田秋成の「雨月物語」にインスパイアされたという「秋雨物語」最高でした。最新作も期待大ですね。「雨月物語」には挿絵が付いていたそうな。本作にも欲しいようないらないような。それほどイマジネーションをぐいぐい広げてくれる中編集でした。大オススメ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました