題名だけ見ると、冒険活劇かとも間違えそう。副題で名画の話かとわかります。この副題も「ジェダイの帰還」を思わせてちょっと笑えます。原題は「Woman in Gold」。確かに絵の中のアデーレ嬢は金箔に包み込まれています。豪奢。
結論
ヘレン・ミレンの凜とした姿、法廷ドラマのサスペンス、ウィーンロケの豪華さ、主人公マリアの本当に取り戻したかったものは何かなど、見所満載の映画。オススメ。
概要・あらすじ
20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、オーストリア政府を訴えたのだ。
公式サイトから引用
“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画〈黄金のアデーレ〉を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。共に立ち上がったのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。
大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは──?
実在の女性マリアを演じるのは、『クィーン』でアカデミー賞®主演女優賞を受賞、英国女王から“デイム”の称号を授与された名優ヘレン・ミレン。
同上
いつも元気でかなり頑固、おちゃめな毒舌とユーモアが冴えるマリアを軽快に演じる。監督は『マリリン 7 日間の恋』のサイモン・カーティス。 二つの国と時代をドラマティックに行き来し、判決の興奮とその予想外の余韻を見事に描き切る。最後に明かされる真実は、観る者に前へと進む力 をくれる希望と感動の実話ヒューマンドラマ。
感想
ヘレン・ミレンの凜とした存在感がすばらしいですが、彼女の若き日を演じたタチアナ・マズラニーが輝くばかりに美しいですね。笑わない少女だったマリアがこんなに美しく成長する。若いっていいですね。
マリアの弁護士ランドル・シェーンベルクを演じるライアン・レイノルズはランドルをとぼけた感じで表現しています。実際のランドルは祖父のアーノルド・シェーンベルクと顔がそっくりです。
アーノルド・シェーンベルクはもちろん「十二音技法」を創設した音楽家です。映画の中でも、「おじいさんはすばらしい音楽家だ」というセリフが出てきます。隔世遺伝で顔がそっくりなわけです。
バイオリニスト、ヒラリー・ハーンとランドルのyoutube動画があります。
上の写真がアーノルト・シェーンベルク。そっくりでしょ。
彼はマリアと家族の逃亡の話は、それだけで1本の映画が撮れるほどだったと指摘する。「マリアの兄は、スキー事故からヒトラーの甥を救ったことがあった。足を骨折した甥を担いで山から降りたんだ。それから2年後、甥は彼を本部に呼び出し、国外退去するための書類を渡してくれたそうだ。」
同上
この逃亡劇は映画の中では描かれませんが、マリアがウイーン入りを当初頑なに拒むシーンで、収容所と逃亡がいかに恐怖であったからわかります。
そんな自分と向き合い、克服していく姿がこの映画の根幹であると思われます。
クリムトの絵の名称である「lady in Gold」がそのまま映画の題名になっていない点と関係があるのかもしれません。戦争によって苦しんだ多くの「女性」たちの心の帰還こそが描きたかったのでしょうか。
ヘレン・ミレン
マリアにはヘレン・ミレンしかいなかったという監督。強さとユーモア、秘めた怒りの心情などをそなえたこの女優を掘ってみましょう。
ヘレン・ミレン(Dame Helen Mirren DBE, 1945年7月26日 – )は、イギリスの女優。『クィーン』(2006年)でアカデミー主演女優賞を受賞。その他、エミー賞を4度、トニー賞を2015年に受賞し演劇の三冠王を達成。
2003年12月に大英帝国勲章を受勲したため、デイムの敬称を冠しデイム・ヘレンあるいはデイム・ヘレン・ミレンと書かれることもある。
wikiより引用
ロシア人を父にもつイギリスの女優。師範学校を中退し、パリで演劇を学びシェイクスピア劇に出演します。「エクスカリバー」「2010年」「ホワイトナイツ」など私も見たであろうエンタメ大作にもでていますね。
06年、スティーヴン・フリアーズ監督の「クィーン」でダイアナ元皇太子妃の事故死を巡って窮地に陥るエリザベス女王を圧倒的なリアリティと存在感で演じきり大絶賛を浴びる。同年の主演女優賞はヘレン・ミレンがほぼ独占する快挙で、アカデミー賞も余裕で受賞、初のオスカー獲得なった。
ネットより引用
「クィーン」未見です。ダイアナ妃のドキュメンタリ興味深く見ましたので、エリザベス女王側から描かれるであろう「クィーン」興味あります。図書館DVDにあるみたいですね。借りましょう。
マリアが育ったブロッホ=バウアーのサロンには、クリムトの他、マーラー、フロイト、シュニッツラーらが顔をそろえていたそうな。覗いてみたいですね。名画にからむ実話の映画化、ぜひごらんください。
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