長崎OMURA室内合奏団第20回長崎定期演奏会 エルガー・ブルッフ・ブラームス 一番よかったのは・・・

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samon
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激しい雨風の中でかけたコンサートでした。回を重ね20回目の定期演奏会ですが、はたしてその演奏は・・・

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結論

響きのないホールゆえの、残念な音。コンチェルトも2楽章の甘美さを十分堪能できず残念。ブラームスの管弦楽版の必要性に疑問。応援したい楽団ゆえに感想をストレートに述べます。

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エルガー

弦楽セレナードホ短調作品20が最初に演奏されました。憂愁の中に英国らしい旋律が見え隠れするとてもよい曲ですね。特にゆっくりした2楽章の美しさは弦楽器のよさをとても感じさせてくれます。長調に転じた終楽章は短く、あれもう終わりと少し物足りない感じで途切れます。

弦楽器のつややかな響きが楽しめる曲ですが、響きの少ない市民会館の文化ホールは足を引っ張ります。曲のよさが何割も減じさせられる会場に怒りすら覚えます。当楽団が演奏するのにキャパシティ的にここしかないというのがとても残念です。

新しくできる1000人規模のホールに期待がかかります。どんなホールになるのか厳しい注視が必要だと思います。

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ブルッフ

ロマン派のバイオリン協奏曲として人気が高い作品です。すべてのバイオリニストが弾きたい曲などともいわれるようです。特に第2楽章の旋律が本当にすばらしく、とてもロマンチック。この楽章でどれだけ酔わせてくれるかが重要だと思います。

残念ながらロマンチックさの中に溺れさせてはもらえませんでした。前述のホールの響きのなさもあるでしょうが、美音を楽しむことができません。また、ソロとオケのバランスも微妙に思えます。オケが大きい?甘美なバイオリンソロはあまり際立ちません。

前後の速い楽章では、ソロの細かい部分の雑さを感じます。細かい音のスケールを駆け上がる時、最後のあたりの音はよくわかりません。ひとつひとつの音を確かに出すという演奏ではないようです。だから、フレーズの最後の着地点がオケと合わず、いつも早く終わってしまう。

ブラームス

管弦楽に編曲された弦楽六重奏第2番ト長調作品32です。編曲者はブルッフのソリストの方です。このオーケストラの芸術アドバイザーであり、育ての親という方です。

冒頭はビオラ1のさざ波ですが、編曲によるのか第2バイオリンも弾いていたような。これが不思議な効果で蚊がぶんぶん飛んでいるような印象を受けて新鮮でした。

その後の編曲による驚きはあまりありませんでした。オーソドックスな感じがしました。6人の演奏がサイズアップしたというもの。迫力は出ますが、6人の演奏の繊細さ、一人一人の表現の自由さと各奏者の敏感な反応のスリリングさは減じてしまいます。

弦楽器だけでのバランスを考えてみると、原曲はバイオリン・ビオラ・チェロ各2人、つまり2:2:2です。このオーケストラの場合、第1バイオリン:6人、第2バイオリン6人、ビオラ4人、チェロ4人、コントラバス:2人です。コントラバスをチェロに足して6人とすると、バイオリン、ビオラ、チェロ的な比率は12:4:6となります。原曲の楽器バランスと大きく異なるものになります。

ブラームスが意図した、中低音の分厚いサウンドの実現。これを高音楽器も多い管楽器でうめていくのですから、なかなかに編曲は難しそうです。なおかつ管楽器のよさも出していく必要もあります。この難しい作業をされたことには意味はあると思いますが、どうしても必要なのかとも思ってしまいます。

作曲家が手塩にかけて完成したオーケストラ作品はたくさんあるわけですから、このオーケストラにはそのような曲をもっと演奏して欲しいと思います。

プレコンサート

順番が逆ですが、最後に開演前にエントランスで行われたプレコンサートについて。雨風の中やっと会場に入ると、まさにプレコンサートが始まらんとしているところでした。曲目は本公演との関係か、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番の1楽章が演奏されました。

とても大好きな曲なので、急いで正面に回って聴くことに。多くの人の肩越しに聴きました。この演奏がとてもよかった。特にビオラの男性は表現力豊かであり、演奏を楽しんでいる風情が伝わります。音楽家はこうあらねば、と感じさせてくれました。

このすごいビオラ表現であれば、できれば2楽章をきいてみたかったです。2楽章の方が知っている観客も多かったのでないかと思います。恋人に婚約破棄されたブラームスの悲しみを感じたかった。

ブラームスが弦楽六重奏を書いた経緯は、
①コントラバス奏者の父ゆえの低音好き
②ベートーベンの巨大な弦楽四重奏の名作群の壁を乗り越えられないブラームスにとって、彼が開拓したともいえる弦楽六重奏の作曲は気が楽だった
③アガーテ嬢との婚約破棄の失意
などいろいろですが、特に低音の厚いサウンドへの嗜好は大きいと思われます。

バイオリン2ヴィオラ2チェロ2というバランス感は相対的に中低音が分厚くなります。それがブラームスにとって必要だったと思われます。弦楽六重奏は6人で演奏することが想定して書かれ、6人で演奏することこそが大切ではないかと思うのです。

ゆえに今回の演奏会で私がもっともよかったと思うのはこのプレコンサートです。

samon
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長崎で唯一のプロオーケストラであり、知り合いもたくさんプレイヤーとしている長崎OMURA室内合奏団。全力で応援したいです。であるからこそ思った感想を素直に書きました。プログラミングを工夫して、室内合奏団のよさを感じさせる音楽いっぱい聞かせてください。そして長崎にいい音響の音楽専用ホールができて、そこで美しい響きの音楽を聴かせてくれることに期待します。そのためにも、繰り返しになりますが市役所跡地の新ホールの動向には注視注視です。

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