アメリカ・西ドイツ合作映画「眼下の敵」米駆逐艦と独Uボートの1対1の戦い 心理戦・知能戦は熾烈を極める 人命を重んじるエンディングは戦争とは何だろうかと考えさせられる

Movie
スポンサーリンク
samon
samon

戦争映画の名作。男しか出てきません。そういうのは最近の映画ではほとんどないですね。特攻機で敵艦にぶつかって死んでいく日本の戦争のしかたとえらく違うエンディングに驚きます。戦争って何なのでしょうか?

スポンサーリンク

結論

明るく鮮明な画像、迫力の機雷爆発、息づまる心理戦、そしてハッピーなエンディング。潜水艦ものにはずれなし。戦争の意味も考えさせる名作。観るべし。

スポンサーリンク

あらすじ

第二次大戦中の南大西洋。ドイツのUボート狩りをやっていたアメリカの駆逐艦ヘインズ号のマレル艦長(ロバート・ミッチャム)は着任以来自室に閉じこもりきりだった。そこで乗組員たちは彼が民間出身のため船酔いで苦しんでいるのだろうと噂し合っていた。しかし、彼は彼が着任する直前乗っていた船が魚雷攻撃を受け、愛する新妻が自分の前で死んでいくのを見て憔悴していたのだった。それでも彼は個人的にドイツ人を憎む気にはなれないという男だった。ある日、彼の艦のレーダーがUボートをとらえた。初めて彼は乗組員の前に姿を現わし、夜通しの追跡をはじめた。一方Uボートの艦長フォン・ストルバーグ(クルト・ユールゲンス)は、味方が手に入れた敵の暗号書を本国へ持ち帰るという重大な使命をもっていた。彼は沈着で勇敢な男であったが、2人の息子を戦争で失い、無益な戦争を呪っていた。こんな2人の男が水面を境としてお互いに相手のすきを狙って息を殺していた。しかし、いつしか2人の心には、お互い一面識もないが尊敬の念が期せずしてわいて来た。再び行動を開始したUボートは、とっときの魚雷4本で見事ヘインズ号を射止めた。直ちに浮上したストルバーグ艦長は、マレル艦長に5分以内に離艦するよう要求した。これを見たマレル艦長は全員を離艦させ、自らも離艦すると見せかけ、最後の力をふりしぼってUボートに体当たりした。一瞬、すべては終わった。今は敵味方の別なく、海上では彼我の乗員たちが助け合っていた。全員の脱出を認めて離艦しようとしたストルバーグ艦長は、永年の部下の1人の姿が見えないのに気づいた。ようやく水につかった艦内から部下を救い出したストルバーグ艦長は、これ以上の救出が無理なことを知って艦橋に残った。Uボートに仕かけられた時限爆弾の爆発を待つかのように……。その時、ストルバーグ艦長の目に、マレル艦長の姿がうつった。ストルバーグ艦長の手が挙がった。マレル艦長の手も挙がった。2人の海の男の心は今やはっきりと交わり合った。マレル艦長からロープが投げられた。傷ついた部下を、ロープにむすびつけるストルバーグ艦長、これを引くマレル艦長、この2人のところに、生き残った両艦の乗組員が殺到した。翌日、救援にやってきたアメリカ駆遂艦の甲板で、ストルバーグ艦長とマレル艦長が立ち会い部下の葬儀が行なわれた。そこには海に生きる男のみが知る、厳粛な気がみなぎっていた。

ネットより引用
スポンサーリンク

感想

大変明るい画像は戦争映画とは思えないほどです。青空の下の駆逐艦はもちろん、水面下のUボート内部も細部がよくわかる明るさです。1957年の作品で、第2次大戦後12年しかたっていませんが、細部まで照明で照らされたハリウッド画とでもいうのでしょうか。

しかし、アメリカ海軍の全面撮影協力を得た画像はリアルです。特に実際の駆逐艦(USS ホワイトハースト)の砲撃・爆雷投下シーンは評判になったそうです。確かに機雷が射出され、艦の後方に爆発による巨大な海水の白い山が複数現れるのは本物ならではの迫力がありました。

二人の艦長は、妻や息子を戦争で失っていますが、激烈な憎悪を敵国に向けることがありません。戦争自体を憎んだのでしょうか?そうであれば大人であり徳のある人物ですね。私なら「アメリカめー」とか「ドイツ人めー」となりそうです。二人はこの高徳故に、一面識もない相手を好敵手として互いに尊敬できたのだろうと思います。

潜水艦映画に駄作なしと言われますが、本作でも潜水艦内部の出来事は、緊迫感に富み素晴らしいです。特に、駆逐艦の執拗な波状攻撃に、心理的に追い込まれた若い水夫のパニックと波及する潜水艦内の混乱を、1曲の行進曲の大合唱で沈めていくシーンは感動的です。

この曲はドイツ軍人のレオポルト1世 (アンハルト=デッサウ侯)にちなんだ「デッサウ行進曲」です。音響効果を担当したウォルター・ロッシは、1957年度アカデミー賞最優秀特殊効果賞(現アカデミー音響編集賞)を受賞しています。

終盤の駆逐艦の火災やUボートの爆発、それに伴う駆逐艦の爆発はミニチュアを使っています。これはミニチュアとわかるレベルです。円谷プロのミニチュアに慣れている私たちには、このミニチュアは全然許せてしまいますね。最近の映画でCGばかりを見せられている私には、愛しささえ感じてしまいます。

魚雷を駆逐艦に命中させたUボートは浮上し、光の信号で「5分間の退艦猶予」を駆逐艦側に送ります。人命尊重です。その後形勢逆転し、今度は駆逐艦艦長がUボートの負傷した副官と艦長をロープで救います。人命を大切にしています。

このような戦いが決した後は、命を大切にするという行為があったのでしょうか。本作は元イギリス海軍中佐D・A・レイナー(英語版)の実体験を元にした小説『水面下の敵』が原作なので、事実である可能性は高いですね。

日本の軍隊の伝統には独特な要素があった。例えば、ドイツ軍では「敵を殺せ」とまず命じられたが、日本軍は殺すこと以上に死ぬことの大切さを説いた。

ここから引用

武士道とは死を強制しているものではなく、武士としての生き方・死に方を説いた道である。この教えに従うことで、人生の軸を作ることができ、人として武士として全うした人生を歩むことができるとした。むやみに死ぬことが美しいではなく、人として“生きる”事。そして、死に際をわきまえ、その時には潔く散る事。桜の花びらを愛した日本人ならではの死生観である。

ここから引用

上の「葉隠」の武士道の思想は、単に主君の為に死すことを賛美しているのではないのですね。「武士道というは死ぬことと見つけたり」が誤解されて、戦時の日本の軍人の思想に影響しているのかもしれません。ならば非常に悲しいことです。「眼下の敵」における人命尊重はこの思想の違いにあるのでしょうか。

エンディングは、米独両軍が救助船の上で両軍が自由に活動しています。たぶん米国の救助船だと思われますが、ドイツ兵は助からなかった副官の葬儀を行っています。(USの文字のついた!)白い布に包まれた遺体は、海に還されます。このシーンは「エイリアン」の亡くなったクルーの宇宙への射出シーンを思い出させました。宇宙の航海士は宇宙に還されます。

自由に過ごす駆逐艦とUボートの二人の艦長の、次のような会話で映画は終わります。

Uボート「私は何度も死に直面し、その度に生き残ってきた。今回は君のせい(fault)で」
駆逐艦「それなら次はもうロープを投げるのはやめておく」
Uボート「いや、君は次もそうするよ」

ラグビーの「オフサイド」の精神を感じます。いったい戦争とは何なのでしょう?今起こっている戦争(ウクライナやパレスチナ)で戦っている人々は何を考えて戦っているのだろうか?考え込んでしまいました。

samon
samon

鮮明な画像の中に、命をかけた1対1の戦いがあり、戦いの後の人間としての交流がとても爽やかな印象を残す名品と思います。同時に戦争って何?という考えさせる要素も提起してくれます。図書館などでDVDを借りてぜひ御覧ください。オススメです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました