NHK「クラシック音楽館」「共生へのアンサンブル」コロナ感染症によりコンサートが無くなったとき たった一人から音楽を始めた演奏者たちが今NHKホールに集まり精緻なアンサンブルを聴かせる 音楽の絶対必要性を強く訴える名演

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samon
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コンサートができなくなったとき、多くの演奏者がネットの機能を使って演奏を配信するのはよく目にしていました。ここに集まった15人は、音楽を伝えたい衝動にかられ、その嚆矢となった人々です。番組では当時の思いも重ねながら、とうとう生で観客に伝えられるようになった喜びが伝わってくるものとなっています。

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結論

  • 音楽の絶対必要性を強く感じさせてくれるソロ演奏、そして精緻なアンサンブル。
  • 19日までNHK+で視聴可能。
  • 再放送を望みたい好番組。
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たった一人

「共生のアンサンブル」コンサートは、NHKのBS1スペシャルで放送された「孤独のアンサンブル」がその発端となっています。番組は続編が作られ3部作となっています。

N響、都響、新日フィルなど、オーケストラは演奏会中止、練習もできず、メンバーは自宅にこもり孤独と向き合う毎日だ。これまで仲間と一緒に聴衆の前でアンサンブルをしてきた各オケのトップ演奏家7名が、今回の外出自粛の中、たった一人、自宅でクラシックの名曲を孤独に奏でていく。祈り・希求・ぬくもり…今だからこそ生まれる音楽。同じように一人だけで家にこもる視聴者の方々に、心揺さぶる感動と癒やしをお届けする。

ネットより引用

配信する行為の前に、演奏家は唯一人音楽に向かう行為を続けていたのですね。だからこそ、自分の音楽を聴衆に届けられたときの喜びの大きさに気づき、これまで以上にそれを感じたに違いありません。

その思いをNHK音楽祭の中で、形にしたのがこの「共生のアンサンブル」コンサートというわけです。

自分の部屋で、たった一人で奏でていたその曲をNHKホールで聴衆に向かって演奏する。コンサートはソロの演奏でスタートしました。バイオリンの矢部達哉が「タイスの瞑想曲」をクラリネットの吉野亜季菜が「花のワルツ」を大切に大切に奏でてくれました。

「まろ」ことN響の篠崎史紀は、重音を多用したクライスラー編曲のハイドンの「皇帝」2楽章、組長こと神奈川フィルの石田泰尚はピアソラの「アディオス・ノニーノ」を独奏。石田はコロナで亡くなった方にこの曲を捧げたということです。

コロナ禍ですでに7万人もの方が亡くなっています。

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アンサンブル

その後このバイオリン3人でエルガーのニムロッドが演奏されました。非常に感動的な曲です。エルガーの成功を助けた批評家イェーガーへの手紙を想定したこの曲は、深い愛情を感じずにはいられません。名門オーケストラの3人のコンサートマスターによるアンサンブルは透明感にあふれた名演奏でした。特に石田組長の音の美しさにはいつも感動させられます。

コンサートは、数人でのアンサンブルへと発展していきます。オーボエとフルート、トロンボーンとトランペットなど、どれも誰かと音楽を共にする喜びに満ちています。

編成はだんだんに大きくなり、モリコーネの「ニューシネマパラダイス」やエルガーの「威風堂々」第1番が演奏されました。

そして、最後に15人の孤独な奏者達が一同に会しての大きなアンサンブルとして結実します。

クラリネットの吉野が一人で演奏したチャイコフスキーの「花のワルツ」、シベリウスの「フィンランディア」、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」からアンダンテ、そしてムソルグスキーの「展覧会の絵」から終曲の「キーフ(キエフ)の大きな門」が演奏されます。

現在のウクライナ情勢等への思いも込められたプログラムですね。豪華絢爛な喜びにあふれたワルツ、民族の勝利の賛歌、どうしようもない悲劇、まさにさまざまなことが、あざなえる縄の如く立ち現れる人間の歴史の不思議さを感じさせてくれました。

どの曲もオーケストラの曲ですが、いずれも原曲に劣らない重厚さに、さらに精緻さが加わって見事な演奏でした。3人のバイオリン奏者(いずれもコンサートマスター)が交代しながらこのアンサンブルをリードするとともに、3人の出番が作ってあり、編曲の見事さがこのアンサンブルの成功を支えています。

編曲者は「山下康介」「萩森英明」とのクレジットです。山下康介さんは、映画監督の故大林宣彦に見いだされ、監督の作品の多くの音楽を担当している人ですね。他映画・ドラマ・ゲームと手がけた作曲作品は多数に渡ります。大林ファンの私としては、再確認したいです。

萩森さんは編曲家であり、プロオーケストラのために多くの編曲をされてきた方ですね。玉置浩二らのオーケストラコンサートのための編曲も手がけています。洗足音楽大学の先生でもあるようです。今回のような演奏にふれると、編曲のおもしろさすばらしさを再確認させられます。

以前書いたリストの編曲の意味を思い起こしました。編曲によって、多くの人に届ける機会は増えます。また、楽器を演奏する側からすれば、少人数のアンサンブルでも、名曲のすばらしさを享受できることにもなります。編曲の重要さを感じたしだいです。

コンサートの最後は、ハイドンの「告別」終楽章。約束通り、演奏者は一人一人とステージを去って行きます。人は去り、世は移り変わりますが、音楽はなくなることは決してない。そんなことを思わせるコンサートのエンディングでした。

samon
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篠崎マロ史紀さんは力強く言っていました。「音楽は決して不要不急のものではない」と。全く同感です。人が生きていく中で音楽は絶対に必要なものだと思います。どんなことがあろうとも、唇に歌を心にメロディを奏でて生きていたい。

この番組は、3月19日まで「NHK+」で見逃し配信されています。

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