作品45が最後の作品とは、意外と寡作だったのですね。全曲試聴コンプリートも難しくはないのではないでしょうか。しかも名曲揃いですから楽しくできそう。今回は最後の作品を聴いてみましょう。
結論
ラフマニノフの最後の作品は、初期にあった茫洋とした悪く言うと冗長なものが、人生の様々な出来事を通じて洗練されていき、無駄を省いた充実した内容であり、なおかつ美しい旋律と強烈なリズムに裏打ちされた超名曲です。アシュケナージ/コンセルトヘボウの名演がyoutubeにありました。
第1楽章
なんと言っても中間部の美しさが出色です。アルトサックスというクラシックの楽曲ではあまり使われない楽器を用いて独特の音色で、哀愁の旋律を歌います。サックスの裏で支える木管楽器のアルペジオもいいですね。アルペジオのうまい使い方は、ラフマニノフの特徴かと思います。
サックスの旋律を引き継ぐ第1バイオリンの豊麗な美しさ。裏のアルペジオはピアノに変わります。ピアノ協奏曲第2番の第2楽章を思い起こさせます。
第2楽章
ワルツの楽章ですが、華やかさよりも不安や哀愁を感じさせるところは、シベリウスの「悲しきワルツ」を思い起こさせます。
バイオリンの旋律は豊かですが、忙しく駆け回るようなフルートが安心を与えてくれません。常に不安がついて回ります。
曲想の変化のブリッジに、ビオラを上手に使って、ビオラの独特の深い響きを聴かせるのが、うまいなと思わせます。
当初構想していた「黄昏」という楽章表題を考えると、常に不安がつきまとう人世の黄昏をも思わせて、それに近づいている私にはなかなか切ない楽章でもあります。
第3楽章
アレグロビバーチェで生き生きと進む冒頭は、スケルッオ的な要素も感じさせます。中間部は弦楽器群の分厚い旋律が印象的。当初の楽章表題「夜中」を体現しているのがこの中間部でしょうか。
オーボエに起こされ、オーケストラは再び快活に動きはじめます。ラフマニノフがよく引用する「怒りの日」の旋律がここでも引用されます。キリスト教終末思想が信者に与える影響の大きさは、仏教徒の私にはよく理解できませんが。
クラシック音楽へのこのグレゴリオ聖歌の引用は、枚挙にいとまを得ません。ベルリオーズにリスト、チャイコフスキー、サンサーンス、マーラー・・・。
中でもラフマニノフは何度も引用を繰り返します。「怒りの日」が審判や死を表すものと考えるならば、彼の心の中にそれらへの恐れや諦観などがあったのでしょうか?
ラフマニノフについて④
落ち込んだラフマニノフは精神科医ダーリの治療を受けます。暗示療法という治療によりラフマニノフは回復し、作曲の意欲を取り戻したという説があります。回復後に作曲した名曲ピアノ協奏曲第2番がダーリに献呈されていることから、ダーリへの感謝は間違いない事実でしょう。
この曲は大成功し、グリンカ賞も受賞することになり、作曲家としての名声を確立します。1902年、従姉のナターリヤ・サーチナと結婚もし、幸せな時期をすごします。1907年に作曲した交響曲第2番が2度目のグリンカ賞を受けます。この曲も超名曲ですね。
1909年春、スイスの画家、アルノルト・ベックリンの同名絵画の複製画に着想を得た交響詩『死の島』を作曲した。同年夏にはイワノフカの別荘で、秋に予定されていたアメリカへの演奏旅行のためにピアノ協奏曲第3番を作曲した。同年11月にニューヨークで自身ピアニストとして初演(この作品は、当時まだでき上がったばかりだったらしい。‘The Classic Collection’第80号より)し、翌年1月にはグスタフ・マーラーとの共演でこの作品を演奏した。
wikiより引用
今回「交響的舞曲」をじっくり聴いたり、いくつかの演奏を比較しながら聴いたりできました。ラフマニノフの最後の作品にして超名曲のこの曲に出会えてよかった。ブログを書くという行為がそれをさせてくれたと思います。今後も書き続けていきたいなあ。
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