スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画「フェイブルマンズ」の公開が近づいてきました。そこで、これまでのスピルバーグ作品をアマゾンプライムで再試聴してみたいと思います。第1回は「宇宙戦争」です。トム・クルーズのダメ親の成長話です。新たな発見があるのでしょうか。
結論
- 怖がらせの天才スピルバーグが、めっちゃ怖がらせてくれます。
- 盟友ヤヌス・カミンスキーの映像美が堪能できます。
- 深く考えず怖がりましょう。
あらすじ
アメリカニュージャージー州で港湾労働をするレイは、離婚した妻から二人の子供(ロビーとレイチェル)を預かります。家庭を顧みなかったレイと子どもたちとの関係はよくありません。
突然の連続した雷が落ち、地面の中から3本足の巨大なマシンが登場し、光線で人々を殺していきます。レイは子どもたちと必死の逃避行を始めるのでした。
こわがらせ
スピルバーグは人々を怖がらせるのが大好きで、そしてそれを巧みにできる監督です。デビュー作の「激突!」からすでにそれは始まっています。「フェイブルマンズ」の中でも、若きスピルバーグのそんな姿がきっと描かれるに違いありません。
さて、「宇宙戦争」でもこの技のさえはすばらしいものがあります。特に宇宙人の探査触手がレイ親子とオグルビーを探し、無言で静かに逃げ惑うシーンは目を覆わんばかりのサスペンスです。
さらに、宇宙人が降りてきて恐怖は続きますが、銃で宇宙人を殺そうとするオグルビーと逃げるのを優先しようとするレイが無言で対立する押し合いはさらに怖いと来ています。危機が去った後、あくまで宇宙人に一矢報いようとするオグルビーを殺害する場面は、直接的な描写がないが故に怖いですね。
911テロ後につくられた本作は、意図的にそれを想起させるシーンが挿入されます。旅客機の墜落と行方不明者捜しの手書きの掲示物がそれです。アメリカ人にとってあの最悪な事態を思い起こさせる恐怖のシーンだと思われます。
夜の川を死体が一体流れてきて、その後多数が流れてくる部分。それを目撃するレイチェルの心情と私たちの心情が同化してしまう恐ろしさ。川を死体が流れてくる場面は日本映画(確か三池監督?)でも見た覚えがあって、それは昼間だったのでよりおぞましかったですが。
映像美
スピルバーグと撮影監督ヤヌス・カミンスキーの付き合いは「シンドラーのリスト」からですが、カミンスキーの映し出す映像美は素晴らしく、連続して起用し手放しません。そのほとんどをセルロイド(フィルム)で撮影しています。「宇宙戦争」でもその映像美は十分に発揮されています。
冒頭から銀色がかった灰色の街は、よい意味での粒子感をともない、何かが起こりそうな不安さを美しさの中に映し出しています。
夜間のシーンは「影」を特徴とするカミンスキーの独壇場かも知れません。中でも地下でのオグルビーの半分影になった顔は印象的に残っています。復讐心にとらわれた彼の心の内を映像化しているのでしょうか。
黒いあるいは灰色の大地に不気味に伸びていく宇宙植物の赤さは、「シンドラーのリスト」の中での唯一の赤いカラーシーンを思い起こさせました。
「宇宙戦争」は怖がらせとカミンスキーの映像美が堪能できる映画ですね。ひとつ疑問の点があって、レイは雷落下の地点で、冷たい石を拾いそれをポケットに入れるのですが、その後この石は一切登場せず、伏線非回収で終わります。誰か知ってたら教えてね。そこも含めてこの作品アマゾンプライムでぜひ御覧ください。
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