やはり鉄仮面の男が登場人物達をひとつにまとめます。いったい何のために?真面目に生きてきたが故の悲劇が待っています。
結論
- 広がった物語が、鉄仮面の男によって収束される。真面目な男の逆恨み的結末がとても悲しい。
- 急速な終末への展開による、ドラマ全体の尻つぼみ感は否めない。
- 1日限定のガス抜きである「パージ」がやがて際限のない殺戮の世界に拡がる予感を感じさせる。同時にそれは「フォーエバーパージ」への布石ではないだろうか。
- 観る価値は十分ありだ。
私設裁判
町工場で真面目に働いてきたジョーの私設裁判と処罰のために、3つの物語の主人公達、つまりビジネスマン夫妻:ジェネとリック、カルト信者ペネロピ、パージ依頼のキャリアウーマン:ジェーンは今は廃校となった高校の講堂に集められたのでした。
他にも町工場の管理者たち、ホームレスの男がいました。いずれもジョーの人生を踏みにじったとジョーが思っている人々です。ジューは一人一人尋問し、懺悔させ、処刑していきます。ひとりずつにバリエーションを加えて、単調にならないように工夫がされています。たとえば、隙を見て逃げ出した町工場の経営者は、仕掛けてあった自動発射銃で死にます。
今回の私設裁判のために、ジョーは仕掛けを施し、外部からの侵入者を防ぐために爆弾を仕掛けるなど、用意周到です。その復讐への生真面目な情熱が気持ち悪くもあり、ジョーらしくもありますね。
ドラマとしては、前半で様々な社会問題に話題を広げたけれども、終末に至ってジョーの逆恨み的復讐裁判に収束させてために、どうしても「尻つぼみ」な印象は否めません。特に、ジェーンの雇った女パージャーの活躍が全くなかったのが残念です。彼女かっこよかったのでね。
フォーエバーパージへの布石
ミゲルはペネロピ救出のために、ピートの協力のもと高校までたどり着きます。初めはうさんくさかったピートですが、完全に男前のキャラクターとして描かれます。この豪放ながら情に厚い行動が、パージャーたちにも信頼されているということでしょうか。彼の姿は、真面目なジョーと対比的に描かれているように思えます。
さて、ミゲルは一旦はペネロピを救ったものの、ジョーに絶対絶命に追い込まれます。しかし、そのときパージ終了のサイレンが不気味になります。すると、ジョーはミゲルへの攻撃をやめます。真面目な彼は法律を守ったのですね。ただ、「また来年のパージでおまえ達を殺す」と脅します。TVのアナウンサーも「今年できなかったことは来年のパージで行いましょう」などと言います。
ミゲルは即座にジョーを射殺し、プールに蹴り込みます。プールの水面に血が上がってきますが、明確に死んだかどうかは分からない演出ではあります。とにかく、真面目に生きたジョーはここでも裏切られてしまうのですね。非常に悲しい結末です。
パージの時間を過ぎても人を殺してしまうというこの描写は、最新映画の「フォーエバーパージ」への布石のようにも思えます。期間限定の殺戮行為は、いずれはその枠を越えてしまうのではないでしょうか。つまり、ひたすらの殺戮行為の持続です。法律が守られない暗黒のディストピアの開始というわけです。
唯一生き残ったビジネスマン夫妻の妻のジェナは、1年後無事に赤ちゃんを出産し、しあわせそうです。その部屋のTVニュースでは、EUが「パージ」の導入について議論が開始されたという報道がされてドラマは幕を閉じます。
人間の憎悪の吐き出し口を1日だけもうけるという施策の広がりは、ディストピアの広がりを暗示していて暗澹たる思いになります。ジェナはそのTVを消して、今はつかのまのしあわせにすがって、現実からは眼を背けてしまったようにも思えて、つらい終焉でした。
全10話の展開は、若干の冗長さを感じさせる部分もあるが、ラストの疾走感はさすが。また、余韻も残しつつ、映画「フォーエバーパージ」への接続感も感じさせて、よく考えられた作品となっていると思います。amazonプライムでぜひ鑑賞ください。どうぞ「パージ」の世界へ。
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