新市庁舎が完成移転し、跡地に「新しい文化施設」(ホール等)が作られる予定です。計画の素案が策定され、今パブリックコメントが募集されています。2023年2月15日が締め切りで、時間がありませんが、よりよき施設にするため、みんなの意見を上げていきませんか。
パブリックコメントの募集先はこちら。https://www.city.nagasaki.lg.jp/syokai/770020/721020/p039791.html
現在の音楽ホールの現状
私はクラシック音楽の愛好家であり、アマチュアの演奏家でもあります。そこで基本的にPAを介さずに生の音での演奏となるクラシック音楽を聴くあるいは演奏するという立場で、現在の長崎市の音楽ホールの現状を考えてみます。
2002席の大ホール「ブリックホール」が2002年にオープンしました。しかしこのホールは、音響的にはもう一つと思われます。指揮者の井上道義氏は、同ホールで演奏した際に「なぜ音楽ホールの床に絨毯がしいてあるんだ!」と怒ったそうです。ゴージャスさをねらったのでしょうか、その広大な面積の赤い絨毯が音響に影響を及ぼしているのは私のような素人目にも明かです。残念ながらブリックホールは音楽専用ホールとはいえないと考えます。
1000席弱の市民会館文化ホールは、音響的にはさらに最悪なホールです。残響が少なく、楽器の響きは出せず、音がカスカスに聞こえてしまいます。先日の長崎大村室内合奏団の演奏も、もっと響きのよい会場ならば素晴らしかっただろうと思いました。さらにこの会場の上には体育館が設置されてあり、ボールをつく「ドスンドスン」という音が、本番時に聞こえることもあったのです。
しかし、2000人もの集客を見込めない演奏会においては、ブリックホールは大きすぎるので、この市民会館しか選択肢がないような状況です。チトセピアのホールは音響が悪い上に、収容人員は少なくなります。ブリックホール内の国際会議場や平和会館ホール、メルカ築町のホールなどはもともと音楽ホールではありません。
つまり、生の音を演奏する音楽専用のホールは、長崎市にはないということになるのです。どれもこれも、多目的に使えるホールに過ぎません。そこで音楽専用のホールとして期待しているのが、市役所跡に作られる「新しい文化施設」ということになります。
素案から感じたこと
「新しい文化施設」の素案を読んでみると、この「新しい文化施設」が「高い専門性・芸術性」を志向し、しかも1000人ほどの中規模の収容数を狙っていることは、高く評価できます。まさに、長崎市にはそれがないからです。
問題は「高い専門性と芸術性」のあるホールをどうとらえ、実現していくかです。素案にある「観賞・発表機能」の部分がそのホールとなるわけですが、まず客席に関して「催しものに応じて残響時間を調整できるよう工夫」できるというのは大変すばらしいと思います。現代の音響技術を駆使して、ぜひ実現していただきたいと望みます。
舞台に関してですが、「サイドステージを脇花道としても利用し、多様な演出に対応可能」とあります。この「脇花道を兼ねるサイドステージ」が音響にどのような影響を及ぼすかがとても気になります。東京の「府中の森芸術劇場 どりーむホール」の紹介(http://www.fuchu-cpf.or.jp/theater/1000160/1000175.html)では「音響面については、舞台脇花道の側壁が可動式となっており、クラシックコンサートなど音響反射板使用時に、効果的な音が拡がります。」との記述があります。脇花道を設置に際して、音響に影響を与えないような措置がなされているわけです。
長崎市の「新しい文化施設」でも脇花道(サイドステージ)を作るのなら、同様の措置を行い、音響への影響を最小限にしていただくよう要望します。
「創作支援機能」に関しては、リハーサル室や小練習室がほどとんどない長崎市の実態にあっておりよいと思います。また、小劇場として利用できるアイディアはとてもよいと思います。なぜなら、長崎市にはそのような小劇場はないのですから。
最後の機能「交流促進機能」ですが、これが少し気になります。面積的には「創作支援機能」部分と同等となっています。素案には「創作・イベントルームで催しを行う際に、観客の待機スペースとして利用できる空間」となっています。つまり「観賞・発表」のホールのエントランスは別にあると思われます。つまり、「交流促進」のスペースでの「ミニコンサートや展示利用等、市民活動で利用や情報ラウンジ」的使い方も重視していると思われます。この活動が十分に機能するかどうかが心配です。
現在の同様な市民交流の場所の活用状況をリサーチする必要があると思います。また、このような交流の場は、ブリックホールのほか、長崎県庁、新長崎市役所、出島メッセなど、このところ新しく建設された場所でも、十分い可能であるのではないでしょうか。わさわざさらに作る必要性に疑問を感じます。
そこで、思い切ってこの「交流促進」のための面積を絞ってしまい、「新しい文化施設」を「観賞・発表」と「創作支援」の二つの機能のための施設と捉えてはどうか思うのです。
多目的は無目的
「新しい文化施設」での「観賞・発表」の対象となるものは、音楽・演劇等が中心になるかと考えられます。音楽のジャンルを考えてみると、その会場自体の作りが一番影響を与えるのが、生音による演奏です。ことにクラシック音楽においては、ホール自体が楽器であるとも言えます。会場と演奏者がその音楽の質を決定するのです。
これまで長崎市は多くの市民に利活用してもらう眼目で、多目的なホールを作ってきました。それゆえに、ホールの作りそのものが演奏に影響を大きく与える音楽専用のホールが見逃されてきたと思います。マイクを通した音を使った音楽や講演の会場は、これまでの多目的ホールやこれから作られるスタジアムシティなどでも実現可能です。
多目的ホールでは絶対に得られない音楽の響きをつくる楽器としてのホールが、長崎市には必要です。「新しい文化施設」の狙いを多目的に置かないで、音楽専用ホールとして作りませんか!
多目的は無目的と言われます。これ以上多目的を狙って、どれも中途半端になるようなホールが増えることだけはして欲しくないのです。音楽専用ホールとしての「新しい文化施設」のあり方を熱望します。
長崎市に音楽専用ホールを望みます。今こそそのチャンス。みなさん、パブリックコメントにご意見を上げてください。だまった待っているだけでは、これまでの轍を踏むだけ。素晴らしい音楽が聴ける環境を我が町に作りましょう!
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