ジェフリー・ディーバー著「ソウル・コレクター」リンカーン・ライムシリーズ 知らぬうちに犯罪者にされてしまう情報化社会の恐怖を描く

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samon
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「コフィン・ダンサー」単行本は一時ストップしていますが、こちら文庫版の「ソウル・コレクター」はページを繰る手が止まらぬおもしろさ。この違いは何?単行本の上下2段組が苦手なのかな。「コフィン・ダンサー」再開してみよう。

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あらすじ

科学捜査の天才リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人の罪で逮捕された。
自分はやっていない、とアーサーは主張するも、証拠は十分、有罪は確定的に見えた。
しかしライムは不審に思う―証拠がそろいすぎている。
アーサーは罠にかかったのではないか?そうにらんだライムは、刑事アメリア・サックスらとともに独自の捜査を開始、同様の事件がいくつも発生していることを知る。
そう、姿の見えぬ何者かが、証拠を捏造し、己の罪を他人になすりつけ、殺人を繰り返しているのだ。
犠牲者を監視し、あやつり、その人生のすべてを奪い、収集する、史上もっとも卑劣な犯罪者。
神のごとき強大な力を持つ相手に、ライムと仲間たちはかつてない苦戦を強いられる…。

ここから引用
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リンカーン・ライム

彼はニューヨークの元刑事。事故で頚椎を損傷し首から下が麻痺してしまい、現在は車椅子での生活。介護がないと生活ができないが、その天才的な頭脳により科学捜査官として警察に協力している。犯罪現場に残された、目に見えないくらいの微細証拠物件を基に、犯人を追い詰めていく。

今回は、個人情報がすべて収集され、それが悪用される情報社会の恐ろしさが描かれています。しかし、私が最も興味深かったのは、被害者のアーサー(ライムのいとこ)との関係を通して、過去のライムが掘り下げられている点です。

なぜ兄弟のように仲が良かったアーサーとライムは疎遠になってしまったのか。高校時代のライムとアーサーが描かれながら、その秘密が明かされていきます。優秀すぎる頭脳を持つということが、人生を不幸にする種を有することにもなるのですね。凡人でよかったかも。

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アメリア・サックス

NY市警の刑事であり、元ファッションモデル、ライムとは公私を越えたパートナー関係にあるのが、アメリア・サックスです。ライムとの関係は、複数の物語を通して深まっていっているようです。

第一作から二人の間には恋愛感情が芽生えているのだが、その道筋は平坦なものではなかった。関係がもっとも危なくなったのは第三作の『エンプティー・チェア』だが、第二作の『コフィン・ダンサー』でサックスがライムと急接近した女性に嫉妬するなど、揺れ動いた時期もある。第四作『石の猿』で逆にサックスの側に魅力的な男性が現われ、周囲の人間をやきもきさせたことをご記憶の方も多いだろう。ディーヴァーはサックスをライムの添え物にしないように努力しており(ライムが彼女をファミリーネームのサックスで呼ぶのは、その意図の表れではないかと思う)、いかに対等な関係を保ちながら二人が成長していくか、ということが人間ドラマの主眼になっているのだ。

ここから引用

本作では完全に信頼し合う関係にあり、ラスト近くでサックスの危機をライムが救います。このサックスと今回の敵「522号」の対決は、とても手に汗握る迫力で描かれています。頭の中ではこの映像がはっきる浮かぶようです。ぜひ、お楽しみあれ。

本作では、グロッグという銃で躊躇なく敵を打ち、真っ赤なチューンナップしたカマロを駆るアメリアが戸惑う姿が描かれかわいいのです。それは、養子的に一緒に暮らすパム(パメラ)とのやりとりの中で表されていきます。思春期の子供への母的なとまどいとでもいいますか。

物語ラストで父と一緒にチューンナップしたカマロがスクラップにされてしまいますが、それを諦めたアメリアの表情には、彼女の成長が感じられる感動のシーンとなっています。ここも絵が浮かぶなあ。

他にも、ルーキー「ロナルド・プラスキー」巡査に奥さんと子供がいることも描かれます。プラスキーの落ち着いた態度も納得がいきます。そろそろルーキーは卒業でしょうか。

samon
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単なる強敵とライムとの対決だけでなく、登場人物達の人物像を彫り込んでいく作者の手腕に驚くばかりです。もちろん、スリル・わくわく・どんでん返しのサービスも手を抜かずにですよ。すごい作家だと思います。巻末にディーバーの大ファンである児玉清さんとの対談風景が載せられています。これを読むと、シカゴ出身のが英国紳士のようにも思えてしまいます。次はコレクターシリーズの「スキン・コレクター」を入手済み。積ん読の「コフィンダンサー」も再開したく思います。楽しみは続きます。皆様もぜひ、リンカーン・ライムと仲間達との活躍をお楽しみください。超オススメ!

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