リベ大両学長おすすめのお金のリテラシーが上がる映画12選より、邦画作品を観ました。邦画はどうもねえ、という方多いと思います。が、いい作品もあるんです。本作もそのひとつ。多くの登場人物が出ますが、それぞれに個性的に描かれ、見事なアンサンブルを披露しています。そして大好きな女優さん竹内結子の元気で明るい姿が、永遠に残っています。
あらすじ
①仙台藩黒川郡吉岡宿は伝馬役の自費負担で夜逃げが相次ぎ、残った者がより苦しい思いをしていた。伝馬を救うため妙案はないかと聞かれた菅原屋は「お上に銭を貸して利息をとろう」と言い出す。集める金は金千両(3億円)。額は多いが仲間を増やせば負担が減ると、同志を募り始めた。 ②やっと集めた金だが萱場が「銭ではなく金(きん)で」と言う。仙台藩は困窮のため銭を造っており、貨幣価値が変動してさらに銭が必要に。それでも工面した一同は藩に受け取ってもらい、伝馬役の負担は大幅に減った。
ここから引用
「天馬役」とは、幕府の荷物を運搬する使役です。宿場から宿場までの間の輸送を担います。通常は藩から助成金が下りるところですが、舞台の吉岡宿は藩の直轄地でないため、助成金は下りず、宿場の自費でこの使役を行わねばならず、大きな負担となっていたわけです。
ところで、本作は事実に基づく物語です。ラストに主人公の「穀田屋」の子孫の現在の店構えが映されます。
監督:中村義洋
茨城県つくば市出身[2]。茨城県立土浦第一高等学校、成城大学文芸学部芸術学科卒業。映画の仕事に惹かれたキッカケは高校3年のときに観た『マルサの女』である[3]。大学在学中より映画研究部に所属し、8mm映画製作を始める。1993年に『五月雨厨房』が「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」で準グランプリを受賞した。
大学卒業後、崔洋一、平山秀幸、伊丹十三らの作品に助監督として参加する。1999年、自主製作作品『ローカルニュース』で監督デビューする。同年よりブロードウェイがシリーズ化している『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズでは多くで監修、構成、演出を務め、また現在に至るまで同作品のナレーションを務める。
wikiより引用
「ほんとうにあった!呪いのビデオ」は100作以上が並ぶ人気シリーズですが、中村監督はこのシリーズの初代の構成・演出を担当しています。その延長線かも知れませんが、「残穢 住んではいけない部屋」というホラーは私の大好きな作品です。
この「残穢」にも、竹内結子が出演しています。この作品が作られたのが2016年で、何と同年に「殿、利息でござる」も作られています。大豊作の年だったといえます。
「ほんとうにあった!呪いのビデオ」は観たことがないので、中村監督の演出のものを今度探してみましょう。アマプラでも結構観られそうです。
豪華キャスト
造り酒屋・穀田屋
wikiより引用
穀田屋十三郎 – 阿部サダヲ[3]:穀田屋の当主。生まれは浅野屋で、穀田屋には幼少期に養子に出された。吉岡宿の窮状を見て、その行く末を案じている。
穀田屋音右衛門 – 重岡大毅[5]:穀田屋十三郎の息子。私財を売り払ってまで吉岡宿を救おうとする父に反発する。
茶師・菅原屋
菅原屋篤平治 – 瑛太[3]:茶師。自称吉岡宿一の知恵者。
なつ – 山本舞香[6]:菅原屋篤平治の妻。京の都の生まれ。
造り酒屋・両替屋 浅野屋
浅野屋甚内 – 妻夫木聡[3]:吉岡宿一の大店である浅野屋の当主。穀田屋十三郎の弟。先代同様の守銭奴と思われていたが、十三郎の計画に協力する。
きよ – 草笛光子[7]:穀田屋十三郎と浅野屋甚内の母。
先代・浅野屋甚内 – 山崎努[7]:浅野屋の先代主人。故人。穀田屋十三郎と浅野屋甚内の父。吉岡宿の住人からは守銭奴であると思われている。
その他吉岡宿関連の人物
とき – 竹内結子[7]:煮売り屋「しま屋」の女将。
遠藤幾右衛門 – 寺脇康文[7]:吉岡宿の肝煎
千坂仲内 – 千葉雄大[7]:吉岡宿他40か村をまとめる大肝煎。
穀田屋十兵衛 – きたろう[8]:味噌屋。穀田屋 十三郎の叔父。
遠藤寿内 – 西村雅彦[7]:両替屋。
栄洲瑞芝 – 上田耕一:龍泉院の住職。事の顛末を後世に伝えるため、「国恩記」を記す。
仙台藩
伊達重村 – 羽生結弦[9]:仙台藩第7代藩主。
萱場杢 – 松田龍平[7]:仙台藩の出入司(財政担当者)
橋本権右衛門 – 堀部圭亮:代官
今泉七三郎 – 磯田道史:郡奉行
豪華ですね。そして、それぞれのキャラが生きている。冒頭は阿部サダヲと瑛大が中心となりますが、瑛大は徐々に引く感じで、複数の役者のアンサンブルが展開します。
開巻、山崎努が壺に銭を貯めているシーンが映されます。カメラが壺の中から山崎を捉えるというアングル。銭を1枚1枚放り込みつつにたりとする山崎は「守銭奴」かなと思わせます。続く夜逃げする一家を2階から呼び止め「あんたに金を貸してたな」といって階下に降りてくるシーンで、夜逃げ一家からも借金回収する強欲な金貸しという印象を決定づけます。これが最後のどんでん返しで効いてくるという寸法。
竹内結子は、煮炊き屋(居酒屋)のおきゃんな女将を爽やかに演じます。しかし、その中に優雅さが抜けないのが、嬉しくもあるが、役としては少しマイナスになったでしょうか。言い寄ってくる男たちを軽くあしらう気持ちよさがありますが、色っぽさはあまりありませんね。
ストロベリーナイトの姫川玲子役はセクシーでしたから、役になりきれる女優さんだったと思います。40歳で自死していまいますが、本当に残念です。しかし、たくさんの作品を残してくれました。彼女と最初に出会ったのは、仲田秀夫監督作品「リング」の女子高生役でした。初々しかったですね。
今回驚いたのが、松田龍平の演技です。仙台藩の財政役人の冷酷さと恐ろしさ、同時に存する温情というようなものを、魂が抜けたような空虚な表情で見せてくれます。そう、彼の父松田優作が開眼した演技と似たような空気を醸し出していて驚きました。演技の力にも遺伝というものがあるのでしょうか。とかく演技過剰になる日本の役者達の中で、松田優作の演技は別のものでした。最近の阿部寛の演技にも類似のものがありますね。今後の松田龍平には注目していきたいと思いました。
キャストの最後の今泉七三郎役「磯田道史」さんは、原作者であり有名な歴史学者です。テレビの歴史番組にもよく出ているので、顔は知っていました。著作の中の「武士の家計簿」は森田芳光監督で映画化もされました。
同じく著作の中の「無私の日本人」に著された「穀田屋十三郎」が本作「殿、利息でござる」の原作ということになります。
「無私」これが本作のテーマとなります。
無私の日本人
主人公の穀田屋十三郎を初めとする吉岡宿の人々が、知恵とお金を出し合って、吉岡宿の衰退の因といえる伝馬という使役に対応していくわけです。商人とは、自己の利益の追求を目指します。現代の企業も同じですね。頭を下げ、気を遣い、汗水垂らして儲けたお金を私腹とせず、自分の住む町の繁栄のために投ずる。そんな無私の人々の物語です。
冒頭の山崎努扮する浅野屋先代も、実は無私の人であったというのが分かってきます。長男である十三郎が養子に出された理由も明らかになって、十三郎のこれまでの誤解が解かれていくのも感動的です。これまで憎んできた父や弟たちの本当の思いが十三郎に伝わったとき、十三郎は真に無私の人となったのでしょう。
磯田道史氏の著作であり本映画の原作「無私の日本人」さっそく図書館に予約しました。穀田屋のほかにも二人の無私の日本人のことが記されているようです。楽しみです。
本作を観ることで、お金のリテラシーが上がったというよりも、「無私」の日本人の存在に触れることができたのが一番の喜びです。目指したい生き方です。皆様もそんなすばらしい日本人達の笑いあり涙ありの群像劇「殿、利息でござる!」ぜひ、アマゾンプライムで御覧になってください。オススメです。
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