楽しみにしていたコンサートです。今日はぐっと秋が深まり、教会に響く弦楽器の音色がより心に染みていくようです。
ネリオンカルテット
広島交響楽団のメンバーにより、2019年に結成。ネリオンとは、広島市の花である「夾竹桃」のギリシャ名です。昨年も長崎で演奏してくれました。バランスの取れた、質の高い演奏を聴かせてくれました。今年度の公演が決まり、喜んでチケット購入した次第。今年より、第1バイオリンが佐久間聡一氏から三上 亮氏に代わっている。メンバーは次のとおり。
- 第1バイオリン:三上 亮
- 第2バイオリン:宮﨑美里
- ビオラ:青野亜紀乃
- チェロ:マーティン・スタンツェライト
ビクトール・ウルマン/弦楽四重奏曲第3番
初めて聴く曲です。なぜこの曲を演奏するのかを、マーティンさんが語ってくれました。
ウルマンがこの曲を作ったのは、ドイツのテレージエンシュタット収容所の中ででした。ウルマンはユダヤ人であり、ナチによってこの収容所にとらえられていたのです。この収容所は、ナチがユダヤ人への虐待行為を世界にごまかすための公開収容所で、そのため割に通常の生活が送れるようになっていたそうです。そのため、作曲の作業もできたわけですね。
しかし、ウルマンはその後、あのアウシュビッツの収容所で殺されてしまいます。今回の平和コンサートで取り上げた理由が、この戦争の犠牲となった事実にあります。また、この曲が哀しみを秘めながらも、生きる希望やエネルギーを感じさせるものであるものであり、それを表現したいとマーティンさんは語ってくれました。
長崎初演かも知れないこの曲は、すこし憂鬱な感じのたうとうように始まりました。しかし、すぐにプレストでとても速くなります。曲調はロマン派の後期の味わいもありながら、フーガも出てきたり、さらには現代的な奏法も随所に出てきたりして、とても興味深いものでした。フィナーレは4人の力強いユニゾンで始まり生きるエネルギーを十分に感じさせてくれるものでした。
どんな状況にあっても、一歩一歩力強く生きていけと、ウルマンに励まされた思いがしました。とてもすばらしい演奏でした。
プッチーニ/「菊」
作品のほとんどがオペラであるプッチーニの珍しい弦楽四重奏の小品です。マーティンさんは、プッチーニの説明の中で、長崎が舞台の「蝶々夫人」について触れるかなと思っていましたが、それはありませんでした。残念。
この曲は、友人のお葬式で奏されるために作曲されたそうです。イタリアでもお葬式に供える花は「菊」なのだそうです。友人の死を悼む哀切きわまりない旋律が、プッチーニのメロディメーカーたる才能で、忘れられない名旋律として結実しています。
この曲には私は思い出があります。大学のときのオーケストラ仲間の同級生の女性が、乳がんで若くして逝ってしまったのです。美術専攻のとてもユニークな女性でした。結婚し、子供さんも生まれましたが、本当に若くして亡くなってしまいました。私は、自分の四重奏の仲間達に頼んで、彼女のためにこの「菊」を演奏したのです。
そんな思い出の曲を、ネリオンカルテットのすばらしい演奏で聴くことができとても幸せでした。
ベートーベン/弦楽四重奏曲 作品74 変ホ長調「ハープ」
言わずと知れたベートーベン中期の名作ですね。第1バイオリンの三上さんが解説をしてくれました。すでに難聴に苦しんでいたベートーベンですが、それを感じさせない伸び伸びとした自由さがあります。後期の弦楽四重奏では「天や神とつながったような奥深さ」があり難解になるとも三上さんは言っていましたね。確かにそうですね。その奥深さもすばらしいです。
ゆっくりした序奏からすでに4人のアンサンブルのよさはしっかり伝わってきます。アレグロになって主題が演奏されたあと、「ハープ」の愛称の由来であるピチカートが現れてとても愛らしい。少し後の方で、第1バイオリン以外の3人がピチカートで奏する部分はより「ハープ」らしいですね。
2楽章は緩徐楽章です。第1バイオリンの三上さんの歌がとてもすばらしい。それを支える3人のアンサンブルももちろん秀逸。緩徐楽章はわたしらアマチュアには難しく、プロの芸術性を十分に味わわせてもらいいました。緩徐楽章が上手に弾けるようになりたいです。
3楽章はとても速く激しく厳しい音楽。一糸乱れぬアンサンブルには憧れます。
終楽章は変奏曲ですね。3楽章からつなげて演奏するようにベートーベンは指定しています。3楽章とうってかわってしあわせで優しげなテーマが様々に形を変えながら演奏されます。ハイドンもモーツアルトも取り上げてきた四重奏の中での変奏曲形式ですが、ベートーベンが彼の弦楽四重奏で変奏曲を入れているのはこの「ハープ」だけです。ベートーベンは変奏曲がことのほか得意だったのですが、変奏曲入りの四重奏は1つだけなのですね。
ネリオンカルテットのすばらしいところは、そのバランスの良さだと思います。4人が均質の音楽性を発揮し、誰かが突出するとかへこむとかの不細工さがありません。ビオラもセカンドバイオリンもしっかり主張があります。とくにわたしはビオラの音がとても心に染みます。
終演後ビオラの青野さんに「ビオラの音にしびれました」と伝えたら笑顔で喜んでくださいました。「また来年もぜひ来てください」としっかりお願いしておきました。
アンコール
本演奏会は途中休憩が無く、とても充実感満腹感がありました。アンコールも3曲もやってくれました。
スペイン・カタルニア民謡「鳥の歌」、メンデルスゾーンの小品、最後に「長崎の鐘」でした。「鳥の歌」はカザルスが国連で演奏して有名ですね。ここでも、マーティンさんのチェロの歌がすてきでした。「長崎の鐘」はビオラがやっぱりよかったなあ。
このところ毎週コンサートやライブを聴くことができて本当に幸せです。音楽ってほんとに人を幸せにしてくれます。芸術の秋、みなさまも音の芸術に浸りにお出かけください。コンサートやライブは結構行われていますよ。アンテナさえ張っとけばお好きな音楽に生で接することができます。やはり、生の演奏は何ものにも代えがたい感動を経験させてくれます。さあ、スポーツの日は子どもたちのオーケストラを聴きに行こう。
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