「広島交響楽団」佐世保公演 清水和音の強靱すぎるピアノによるラフマニノフ バランス感秀逸の「革命」

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samon
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長崎の町中が大渋滞となった、西九州新幹線開業の翌日。道路は通常にもどり、時間がたっぷりある私は、高速道路を使わずに佐世保の町を目指しました。途中琴海の中古レコード店によりましたが、後は走り続け、グーグルに翻弄されて回り道をしながら、夕方には佐世保の道の駅に到着しました。今日はここで、車中泊です。それにしても暑かったなあ。

アーケード

演奏会は19時開演ですので、少し時間がありました。道の駅から松浦鉄道で佐世保中央駅まで移動し、中央駅を出ると、そこは四カ町のアーケードの真ん中です。連休の中日で、人出も多く活気がありました。本屋に入ったり、チェーン店でコーヒーを飲んだりしていると、いい時間になりましたので、いざコンサート会場の「アルカスSASEBO」に向かいましょうか。

アルカスSASEBO

この会場は長崎県の県立劇場で、県を代表するものとして、とてもよいホールに仕上がっています。大ホールと中ホールがあり、いずれも響きの良いホールで素晴らしいです。

今回は大オーケストラなので、大ホールでの開催となります。以前「アルバン・ベルク弦楽四重奏団」の演奏を中ホールで聴きました。シューボックスタイプの素晴らしいホールでした。長崎市にもこのような音のよい中くらいのホールが望まれます。

大ホールは茶色が主体で、つまり木材をおおく使用していることがわかります。特に床面も木材であるのがいいですね。ジュータンなんか貼ってはいけません。とたんに響きは吸収されてしまいますから。

私は1階の中央後ろから3列目の席です。ちょうど2階の張り出し天井が切れているところでよかった。お客さんはかなり入ってはいますが、空席もたくさんあります。2000の席を埋め尽くすのはなかなか難しいようです。

コダーイとラフマニノフ

初めの曲はハンガリーの作曲家コダーイの「ミゼレーゼ」です。これを指揮者の下野竜也氏が編曲したものです。初めて聴くものです。というのも、この曲の原曲は無伴奏混声合唱曲なのです。コダーイといえば「ハーリーヤーノッシュ」のきらびやかな音楽を想像してしまいますが、全然違って、おだやかな弦楽器主体の音楽でした。

下野氏は、この編曲版をNHK交響楽団と自分の指揮で初演を果たしています。「ミゼレーゼ(憐れんでください)」という静かな曲は、今回のコンサートのテーマである「平和への祈り」に通じるものなのでしょう。

グランドピアノが舞台の中央に置かれて、お待ちかねのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」が始まります。ソリストは清水和音。強靱なタッチゆえに、ピアノの弦を切ったという伝説の持ち主です。そのタッチは冒頭の静かな鐘の音からしてあきらかです。どの音も明瞭にきこえてきます。

オーケストラが表に出て、ピアノが裏で細かい動きを刷る部分でも、決してオーケストラに埋もれることなくピアノの音がよくきこえてくるのは驚きです。初め、このロマンチックな曲にピアノの音色が「強すぎないか」と心配しましたが、徐々に音もほぐれていき、最後まで安心して聴くことができました。

万雷の拍手を受けて、ピアノアンコールをやってくれました。最近はよくやりますね。昔はなかったことです。アンコールは「英雄ポロネーズ」。これまた、楽器を鳴らしきったものすごい演奏でした。どれだけの打鍵の圧なのでしょう。この2000人の大ホールが、縮まったかに思えました。すべての音を明瞭に聴かせてくれた清水氏に驚嘆とそして感謝です。

革命

休憩後はメインのシンフォニー、ショスタコーヴィッチ作曲「交響曲第5番ニ短調op.47」です。いわゆる「革命」です。ただし、この副題はベートーヴェンの「運命」同様、作曲者がつけたものではありません。よって、コンサートのプログラムにも「革命」の副題はついていませんね。

この曲にはビゼーの「カルメン」からの引用がちりばめられています。わかりやすいのは第1楽章の途中でフルートとホルンが交わし合うソロ旋律です。これは「ハバネラ」の中間部の「愛 愛(ラモーラモー)」そのままです。実は冒頭の力強い弦のカノンの旋律さえ、この「愛 愛」の変形です。

なぜそこまで、「カルメン」を引用したのか?これは、ショスタコーヴィチが多情な男だったことに起因します。失恋した8歳年下のエレーナのことが忘れられず、結婚後の彼女の名字「カルメン」に彼女のことを象徴させて、このシンフォニーに思いを盛り込んだというわけです。

だから、「革命」の副題は当たらず、現在では「ある女性への強い思慕」という解釈が提示されているらしいです。しかし、日本ではこの説は無視されているとのこと。この曲への見方がまるっきり変わってしまいますね。おもしろい。

さて、広島交響楽団の演奏は、とてもバランス感がよく、感心しました。どのセクションも落ちるところがなく、安心して音楽に身を任せることができます。特に弦楽器のセクションはどれも抑制された美しさがあり素晴らしかった。

第3楽章では、弦楽器は8部に分かれますが、冒頭の美しい旋律を、第2バイオリンの後方が演奏していました。バイオリンが3つに分かれるわけで、第1バイオリンが1つ、第2バイオリンが前と後ろで2つに分かれていたのかなと思いました。この曲は、見るおもしろさも感じさせてくれましたね。

このバイオリン後方の皆さんは、演奏後に指揮者からも賞賛されていました。とても美しかったです。

さて、残念なことはひとつありました。なぜか、このシンフォニー最中だけ、会場に「ブーン」というノイズが出ていたのです。コンサート前半では気がつきませんでしたからね。このノイズ、オーケストラが大音量の時はもちろんかき消されてしまうのですが、大事な小さな音の時に、どうしても耳障りで、故に演奏を聴くのに集中できませんでした。

楽章の間を指揮者はずいぶん時間を取っていました。もしかしたら、このノイズが耳に入って、彼も気にしていたのかななどと想像します。

演奏終了後、事務室に行ってノイズのことを職員さんに伝えました。今後2度とあって欲しくないですね。

samon
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豊かな気分でコンサートホールを出て、目星をつけていた焼き鳥屋でおいしいお酒をいただき、お腹も豊かになって松浦鉄道で道の駅まで戻りました。松浦鉄道のつり革にアジフライが付いていたので驚きました。アジフライの聖地「松浦」を絶賛売り出し中なのですね。翌日のお昼は「アジフライ定食」にしました。すてきな音楽と旅でした。いい音楽を聴くために、どんどん出かけていきたいです。車中泊も行いやすい季節が近づいています。

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