「ヨルガオ殺人事件」アンソニー・ホロヴィッツ作を読了 前作を凌駕するような精密なパズル

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samon
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「カササギ殺人事件」のスーザンが帰ってきました。再びの入れ子構造に加えて、小説内小説にちりばめられた、現実の事件へのヒントがものすごい。読者はそれに気づく人はほとんどいないんじゃないかな。ホロヴィッツのマジックに驚かされてばかり。しかも爽快に。

あらすじ

「カササギ殺人事件」で命を落としそうにまでなった、編集者のスーザンは、恋人のアンドレアスと地中海の島でホテルの経営をしています。そこに娘の失踪を探って欲しいとの依頼が、豪華ホテルオーナーから舞い込みます。なぜなら、娘はスーザンが編集して発行したアラン・コンラッド作の「愚行の代償」をいう小説を読んだ直後に失踪したからです。この小説にヒントが隠れていると依頼者は考えたのです。

島でのホテル経営の多忙さに疲れてもいたスーザンはこの依頼を受け、ロンドンに戻ります。そして「愚行の代償」を読み込むとともに、豪華ホテルで過去に起きた殺人事件について、ホテルの関係者に話を聴くという捜査を始めて行きます。

入れ子構造

前作「カササギ殺人事件」同様、本作も小説内に小説が存在し、謎解きを倍楽しめるようになっています。今回は、上巻の後半から小説内小説の「愚行の代償」が始まり、下巻の途中まで続きます。名探偵ピュントの鮮やかな推理と謎解きを最後まで楽しめるのです。

そしてこの小説が、実際の未来を動かしてしまうという重要なものとなっています。そう、この小説を読んだホテルオーナーの娘が失踪し、それを主人公スーザンが追うという未来を作る役目を果たすわけです。

でも、スーザンも読者も、「愚行の代償」からは全然ヒントを得ることができないのです。スーザンの捜査(インタビュー)によって、関係する多くの人々の隠された姿がだんだんにあぶり出されては行きます。

ついにスーザンは冒頭の献辞文から真実をとらえ、名探偵さながら、登場人物たちを一同に集めて自分の推理を開陳します。それは見事な解決になるわけですが、この小説の凄いのは、最後の最後に次々に明かされる、アラン・コンウエイの「愚行の代償」に隠されたヒントたちです。びっくりしますよ。

今後の楽しみ

私たちに大いなる読書の喜びを与えてくれるホロヴィッツ。今後の楽しみもいろいろ控えているようです。まずはもう一つのシリーズ「ホーソーン&ホロヴィッツ」の新作がすでに完成。翻訳はおなじみの山田蘭さんで、題名は「殺しへのライン」で2022年9月9日初版発行の予定です。もうすぐですな。

次に、「カササギ殺人事件」のドラマ化です。全6話が完成し、WOWOWにて8月17日から放映とのこと。観たいなあ。なお、脚本はホロヴィッツ自身です。期待できますね。

そして、本作に続く「スーザン」シリーズの新作にもホロヴィッツは意欲を燃やしているとのこと。それはぜひ実現して欲しい。アランのピュントシリーズはまだまだありますから、再々度の入れ子構造に期待しましょう。

samon
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この完璧な驚きの謎解き小説を、ぜひあなたも堪能してください。できれば、シリーズ第1作「カササギ殺人事件」を読んでから本作を読むこととをオススメします。

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