黒澤明監督作品「蜘蛛巣城」を観ました。城跡の場面かおどろおどろしく始まるこの映画は、ホラー映画の様相を見せている。三船敏郎が千秋実と共に迷い込む蜘蛛手の森やそこで出会う白い老婆、そして森から出られず霧の中をこれでもかと彷徨う。まさにホラーだ。なにより恐ろしいのが、鷲津(三船)の奥方(山田五十鈴)だ。決して鷲津の方を見ることなく、上司殺しへと旦那を追い詰めていく恐るべきマクベス夫人を演じる山田のものすごさ。凜とした語り口が、最後の「血が取れない」の場面では、「嫌な血だねえ」とすでに精神が壊れてしまった姿へと変化させるその演技の見事さよ。
ショスタコービチのオペラに「ムツェンスク郡のマクベス夫人 」というのがあるが、聴いたことはないが、その内容が「野心家の悪妻」の話なんだろうなあと気がつく。
さて、「蜘蛛巣城」のホラー要素に戻ると、前城主が自害した血が床や壁に残っている「開かずの間」。盟友の千秋実を忙殺し、その亡霊に怯える三船の狂気。千秋の首が包まれた布を最後まで開けさせない(想像させる)演出など、恐ろしき魔物にとらえられえた人間を描くホラー映画である。
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