山田洋次監督作品「男はつらいよ 知床慕情」(長崎市立図書館DVD)を観ました。マドンナは竹下景子。そして今回のビッグゲストは、世界のミフネ、三船敏郎である。
三船は北海道知床の獣医。寅さんを車に乗せたことから、三船の家に居候をすることに。そこに結婚に失敗した、娘のりん子(竹下景子)が戻ってくる。無骨な父と娘はうまくコミュニケーションがとれないが、寅さんがうまくつないでいく。
今回寅さんは人と人との間を上手にとりもつすばらしい力を発揮する。物語の冒頭で、店番ひとつ出来ず、とらやを飛び出すシーンがあることで、寅の二面が対比的に描かれる。
クライマックスは、三船と彼の世話をやくスナックのママ(淡路恵子)の恋を成就させる役をはたす。知床の大自然の中、三船がママに「ほれているから、どこにも行くな」とついに打ち明け、近所いい仲間たちが「知床旅情」を大合唱するシーンは目頭が熱くなる。
ラスト、寅は船長から「りん子さんと結婚すれば」と言われ、三船同様に「真っ赤になって怒って」知床を離れていく。人のことは上手にとりもちながら、自分のこととなるとてんで不器用になる純情が寅の魅力である。自分の欲得ばかり考える輩が増えた日本に、一撃だ。しかし、自分の気持ちを抑えたラストの音楽は何かものさびしい。だから「知床慕情」なのであろう。「慕情」という言葉には寂しさがまとわれる。
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