髙田郁 著「あきない世傅 金と銀」軽妙で明るい大阪弁で展開する呉服屋での商人の物語全12巻のスタート

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「みおつくし料理帖」でたっぷり楽しませてもらった髙田郁のもう一つの大長編「あいきない世傅 金と銀」を読み始めました。第2巻まで読了しました。

samon
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明るい筆致の「みおつくし料理帖」のあの喜びがまた帰ってきた気分です。今度は呉服屋を舞台とする商人の物語です。ページが止まらないおもしろさ再びです。

あらすじ

武庫川の河口域にある津門村で、学者であった父重辰の庇護のもと育った幸でしたが、いわゆる享保の大飢饉で兄雅由を亡くし、続いて父をも疫病で亡くしてしまいます。そのために九歳で大坂天満の呉服商「五鈴屋」へ女衆として奉公に出ることになるのでした。

五鈴屋には、まわりからは「阿呆ボン」と呼ばれるほどの遊び人である四代目徳兵衛の長男、商才はあるのですが他人への思いやりを持たない二男の惣次、戯作が好きな坊っちゃんである三男の智蔵という兄弟がおりました。そして彼らの祖母の富久がいて商売に目を光らせるなか、番頭の治兵衛が店の実質的な切り盛りをしていました。

死んだ兄からの「知恵は生きる力になる」という言葉を抱いていた幸は、元来の知識欲に火がつき、貪欲に商いについて学んでいきます。そのことに気が付いたのは番頭の治兵衛であり、三男の智蔵でした。ここから、幸の大坂商人としての人生が始まり、生き抜いていく姿が描かれるのです。

「読んだ屋」より引用

「みおつくし料理帖」同様に大阪弁での対話が軽妙で、筆致の明るさの原因のひとつと思われます。私は関西人ではないですが、大阪弁のイントネーションやスピードまで感じることができるのは、TVを中心とするグローバルな情報流通のおかげですね。

縁と月日

第二巻の中でもっとも心に残ったのは、脳卒中で半身不随となった番頭の治兵衛が、幸に語るシーンです。

「大阪には昔から『縁と月日』いう言い回しがおます。何と優しい、ええ言葉やろか、と近頃、つくづく感心するんだす」

「もとは、良縁を得るには時をかけよ、いう意味やろか。けど、それよりももっと深い味わいの言葉のように思えましてなぁ」

「物事が成るか成らぬかは、ひとの想いや働きだけで決まるもんやない。ご神仏の手ぇが差し伸べられるかどうかだす。それに加えて、起こってしもた難事を解決するためには、短期はあかん。決して諦めんと、歳月をかけてゆっくり時節を待て、意味やないか、て考えるようになりました」

自身に起きた難事(卒中)、そして幸にも降りかかっている難事に対して、慌てず時を待てという治兵衛の言は、大きな慰めと示唆を示しています。

思い通りにならないことばかりです。ため息をつくことばかりの日々。でも、決して諦めず「月日」と巡り来る「縁」を待ちつつ、今自分にできることをやっていくことの大切さを教えてくれます。とても温かく、「その通りだなあ」と慰められます。

「縁と月日」大事にしていきたい言葉です。

samon
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波瀾万丈の商人物語はなんと12巻まで続くんです。最高に嬉しいですね!今から終わるのが怖いとまで思ってしまいます。それほどに楽しみなこの本。皆様も、髙田郁著「あきない世傅金と銀」の世界へぜひ足を踏み入れてください。大オススメのシリーズですよ!

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