高野和明 著「踏切の幽霊」 夢中で読ませるストーリーテリングの巧みさ 最後まで名前も分からない女の幽霊のはかなさが強烈に胸にせまる

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samon
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「13階段」や「ジェノサイド」など寡作なれど最高に面白い小説を上梓する高野和明。本作もページを繰るのが止まらないおもしろさでした。

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結論

小説の楽しみを十分満足させてくれる作品。貞子級に怖い、でも悲しい名も無き女性の怨念。心霊現象と理論的推理がより合わさって展開するスリリング。読むしかありません。超オススメ!

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概要・あらすじ

高野和明といえば、平成23年度の山田風太郎賞に輝き、雑誌のミステリーランキングも席巻した冒険SF大作『ジェノサイド』の印象が強い。それ以来の長編小説となる本書は、異色の幽霊譚。19日に選考会が行われる第169回直木賞の候補作にも選ばれている。

1994(平成6)年の東京。新聞社を辞め、女性誌の記者として働く主人公の松田は、心霊ネタの取材を振られる。幽霊の目撃談や列車の停車騒ぎが相次ぐ下北沢の踏切を調べ始めた松田は、そこで1年前に若い女性が殺されていたことを知る。犯人はすぐに逮捕されたが、女性の身元は今も不明のまま。そんな不可解な事件だった。丹念な調査の末、意外な真相が見えてくる…。

ネットより引用
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高野和明

小学二年生のときに『激突!』を見たことをきっかけにハリウッド映画に夢中になる[3]映画監督を志すようになり、小学六年生のときに8ミリ映画を撮り始める[2][3]。中学、高校時代は映画研究会に所属[3]。1983年、高校二年生のときに書き始めて大学浪人時代に完成した脚本「幽霊」が第9回城戸賞の最終候補になる[2][3]。1984年、選考委員をしていた東宝映像の専務に岡本喜八を紹介される[2][3]。1985年から岡本喜八の門下に入り、映画テレビVシネマの撮影現場でメイキング演出やスチルカメラなどを担当[3]。1989年に渡米し、ロサンゼルス・シティー・カレッジ映画科で映画演出・撮影・編集を学びながら、ABCネットワークのスタッフとして働く[3]

wikiより引用

10年に1冊というペースの超寡作ですね。しかし、一つ一つがおもしろく、上質。

感想

冒頭の熱海湯河原駅から出発し横浜までの列車の走る描写が実に丁寧でワクワクしてきます。そして、ついに下北沢3号踏切を通過する際の出来事がプロローグとして見事に提示されます。

主人公の松田は、理知的な思考と警察記者時代のつてを活用しながら、3号踏切での事件の真相に迫っていきます。事実を冷静につなぎ合わせていく論理性と心霊現象という一見相反するものが、見事により合わせられながら進む物語に読者は巻き込まれ、ページをめくる手が止められません。

これは、鈴木光司「リング」とにていると思いました。小説「リング」は、例えば呪いのビデオ画像の定期的に入るブラックアウト部分を人の目の瞬きであることを捉えていく場面などととてもワクワクしました。

本作でも、信じられない心霊現象に出会いながらとても論理的に推理が進められるあたりワクワクしました。

解決部分で悪徳政治家が出てくるあたりはかなりベタな感じはしましたが、それを補うような不幸な女の生き様に息をのむほどでした。

エピローグでは、松田自らの妻への思いと最後まで名も無き不幸な女性の魂が浄化されるような美しいシーンが展開していました。これがあったからこそ、本書を「読んでよかったな-」という読後感で終われます。

最後に、この名も無き女性の怨念は貞子並みに怖いです。

samon
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小説を読む楽しみを満喫させてくれる作品でした。ぜひ手にとって読んでみてください。10年に1作しか出さない寡作作家「高野和明」。もっと出して欲しい気もするし、寡作だからこそも「まってました」感もあります。才能ある作家に間違いはありません。

コメント

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