
50年まえに初演されてその後、楽譜等の不備で演奏困難だった曲が、長崎市役所で楽譜が発見。奇跡の再演へ。
結論
管楽器充実の「展覧会の絵」、バランスのよい名曲「交響詩ながさき」の復活。たいへんすばらしい演奏会でした。「ながさき」は今後どんどん演奏されるでしょう。
概要
今回は、長崎交響楽団が1974年に初演した交響詩「ながさき」を50年ぶりに再演いたします。長年不明とされていたオーケストラパート譜の所在が昨年確認できたことをきっかけとして、欠けていた金管楽器やピアノ等のパート譜を復刻し、見づらかった総譜(スコア)のコピー譜を浄書し、合唱団用の練習譜も整備し、楽団員が力を合わせて演奏できる環境を整えました。
コンサートプログラムより
感想
ムソルグスキー/展覧会の絵(ラヴェル編)
高校時代からよく聴いている超名曲。でも生演奏で聴いたのは初めてです。強く感じたのは、ムソルグスキーのピアノ曲をここまでも大管弦楽曲に編曲したラヴェルの力量のすごさです。
不気味な雰囲気を出すために弦楽器のハーモニックスでのグリッサンドを使ったストラヴィンスキーの「火の鳥」。彼より前にラヴェルはすでに取り入れていたんですね。チェロがやってました。
オーケストラの高度な技量が求められる曲です。特に管楽器は全員ソロなのでアマチュアオーケストラにはハードルが高いと思われます。長崎交響楽団は見事にそのハードルを越えていたと思います。特に金管楽器の大きなレベルアップが見られます。
第6曲の貧乏なユダヤ人をあらわすトランペットの叫びは難しい部分ですが、プロのようにうまかったですね。冒頭のプロムナードのトランペットも見事で、今後の長響のチャレンジ曲の幅は大きく広がると考えられます。マーラーの交響曲はやすやすと目標に入りますね。期待してます。

ラヴェルは特殊楽器を上手に取り入れています。アルト・サックスとユーフォニュアムがそれです。両楽器とも見事なソロ演奏でした。サックスの均等なビブラートの美しさ。曲終わりの自然さすばらしかったですね。
ユーフォニュアムは吹奏楽では当たり前の楽器ですが、オーケストラでは見かけず、チューバが演奏していると思っている人も多かったのではないでしょうか。生演奏を聴いたことがなかった私もそうでした。こちらのソロはトロンボーンの奏者が持ち替えで吹いてましたが、曲の内容をよく表現していて見事でした。
管楽器が大変充実した演奏であり、たぶん長崎ではこの曲は初演じゃないでしょうか。レコードCDではよく聴いていたものの生で初めて聴きました。
團伊玖磨/合唱・管弦楽による「西海讃歌」
長崎の地方TV局で、長きにわたり天気予報のBGMとして放送されていたので、長崎人はみなよく知っている曲です。
今回合唱団として参加させてもらいました。いつもの客席からの景色とは異なり、オーケストラを後ろから、指揮者は正面から見ることになりました。

オーケストラと一緒に歌うことは非常に爽快で、思い切り歌うことができました。ありがたい。
藤浦洸の歌詞を付しましょう。
空いっぱいに 空があるように
海いっぱいに 海があるように
人よ
心いっぱいに 美しい心をもって
この空を
この海を
この土を 愛そう
團伊玖磨/交響詩「ながさき」
1970年長崎の開港400年記念として、長崎市より依頼を受けて作曲されました。
3楽章構成で、第1楽章は「祭典序曲」でオーケストラだけの演奏です。リズミカルで西洋的な音楽の中に長崎のメロディが所々に出てきます。イベールやドビュッシーの旋律に似た部分も感じました。
2楽章から合唱が加わります。楽譜を開いて準備。不穏な和音の弦楽器の強奏に続きホルンの跳躍。とんでもない事態の勃発を表現します。原爆落下。
平和公園の平和の泉の石碑に刻まれた少女の手記が歌詞として取り入れられています。
「のどがかわいて たまりませんでした
水には油のようなものが
一面に浮いていました
どうしても水がほしくて
とうとう油の浮いたままで
飲みました」
短調のおどろおどろしいこの曲に接続する長調に転調した次の曲の方が私にはとても悲しく感じます。
「素足のあなたにかわいい靴をはかせてあげたい
あなたの傷を どろを拭いてあげたい
あなたにおいしい水を飲ませてあげたい」
わが子にしてあげたい親の願いは叶いません。
「夾竹桃の花のかげにかくれないで出てきて」
その願いも叶いません。子を愛したい親はそれができない。どれだけつらいことでしょう。私にはこの長調の美しい曲が最も胸に突き刺さります。
第3楽章は原爆禍でたたきつぶされた長崎の町の再興を高らかに歌い上げる讃歌です。賑やかな爆竹の音が一気に雰囲気を変えてくれます。
はたあげ、龍踊り、ペーロン、精霊流しの長崎の文化行事が威勢よく歌い上げられます。
「明日の平和と文化生まれるところ
希望の都 生産の港 長崎
栄えあれ長崎 栄えあれ」
とてもバランスのよい、聴くもよし歌うもよしの名曲だと思いました。今後演奏の機会は格段に増えていくことでしょう。今回の楽譜の復活は非常に意味があることだったと思います。
アンコール
オーケストラアンコールは葉加瀬太郎の「長崎夜曲」
合唱とオーケストラのアンコールで大島ミチルの「千羽鶴」観客の皆さんと一緒に歌いました。長崎市では毎月9日の11時2分に有線放送で町中に「千羽鶴」のオルゴールが流れます。長崎市民は黙とうを捧げます。

とても楽しい演奏会でした。終演後は仲間と打ち上げに。そのお酒のおいしいこと!音楽最高です。
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