貴志祐介著「我々はみな孤独である」読了しました。
結論から言うと、この小説は、ハードボイルドでありかつ、グロテスクで、さらに深遠な思想の極北であります。いつの間にか引き込まれ、分厚いながら、途中であきらめることはありませんでした。思えば非常に不思議なジャンルであり、大オススメの物語であります。
内容に触れます。何も知らずに物語に浸りたい方は御注意を。
探偵・茶畑徹朗の元にもたらされた、「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。2020年9月初版
google Booksより引用
貴志祐介は、大好きな作家であり、彼の新作は楽しみにしています。8年ぶりの長編大作が本作。一人一人のキャラクター造形が見事です。中でも、主人公の同級生丹野の残虐性はすさまじい。人間の活き作りはおぞけだつ。
異形のテレパス賀茂禮子も忘れがたい人物です。楳図かずお先生の描く漫画の登場人物を思い出してしまいます。そして、彼女が明かす、生まれ変わりの真実は、自分の周囲を思わず見渡し直してしまうショックを読者に与えます。
多くの登場人物が出てきますが、一人一人が映像的で明確に記憶に残り、「この人誰だっけ」などということは全くありません。たくさんの個性的なキャラクターの中を、智恵と行動力で切り抜けていくのが主人公茶畑です。スーパーヒーローではなく、むしろ一般人に近しいところが親近感を生みます。
茶畑を助ける鞠子も魅力的な女性です。ある意味クールで、茶畑につかず離れずの距離感で行動しますが、ラスト近くで女性を少し出してくるところで、一気に惹かれてしまいます。
これらの多くの登場人物が、実は・・・・だったとは。その最大の種明かしはぜひ、本を読んで驚き楽しんでください。それを知ったとき、この本の題名「我々は、みな孤独である」の意味がひしと分かりますよ。貴志祐介の久々の新作。大オススメします。
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