米澤 穂信 著「可燃物」群馬県警捜査第一課 葛(かつら)班の活躍を描く5本の連作短編 著者初の警察小説

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samon
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図書館予約でずいぶん待たされた人気作。急いで読んで次の人に回さねば。

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結論

著者初の警察小説。ハードな文体とストーリーのなかに、米澤らしい意外な結末と情感がほのかに香る独自性あふれる作品。

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概要・あらすじ

米澤穂信、初の警察ミステリ! 二度のミステリーランキング3冠(『満願』『王とサーカス』)と、『黒牢城』では史上初のミステリーランキング4冠を達成した米澤穂信さんが、ついに警察を舞台にした本格ミステリに乗り出しました。 余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。 群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。

googlebooksより引用

群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の回りの雪は踏み荒らされていず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って“刺殺”したのか?(「崖の下」) 榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」) 太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」) 連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。

同上

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感想

「九月三日午後四時十五分頃、群馬県藤岡市北平井で強盗致傷事件が発生した。」(ねむけ)まるで新聞記事のように物語はずばりと始まります。いわゆる情景描写等を廃したハードな書きぶりが印象的です。

基本物語は、事件の起きた所轄に立ち上げられた捜査本部の中で展開していきます。県警捜査一課から出動した葛(かつら)警部率いる葛班の活躍が描かれますが、いわゆる班のそれぞれの刑事が動く群像劇でなく、ほとんどが葛警部のデスクにおける推理が中心となります。名前が出るのも村田刑事くらいです。

ただし第4話の「本物か」の冒頭で拳銃所持の可能性のある殺人未遂容疑者を逮捕に向かう際、葛をはじめ全員が防弾チョッキをつけて出動します。このシーンで現場での少しのアクションシーンがあるのは出色です。

ところが、すぐに物語はファミレス立てこもり事件に移行していきます。立てこもり犯が拳銃らしきものを持っており、「あれは本物か」という捜査陣の疑問が、題名にもつながっています。

冒頭の事件は拳銃事件という物語全体の雰囲気をつくる役目をしているように思えます。

第2話の「ねむけ」も同様であり、夜を徹した捜査による捜査陣全員のねむさという雰囲気作りがなされ、物語全体の空気をつくります。それが驚きの結末を支える役割をしているように思えます。

5つの話での共通点は、葛が昼食は「菓子パンをカフェオレで流し込む」ということでしょうか。硬派な葛が「カフェオレ」ということろがにんまりさせられます。その似合わなさが読者の印象に残るようです。既読の友人も菓子パンカフェオレのことを話していました。

samon
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意外だった著者初の警察小説。ハードな文体とストーリーの中に、ほんのり情感がまぶされているのがとてもいいですね。オススメ。ぜひお読みください。

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