祝カンヌ男優賞郷土の誇り役所広司主演「どら平太」巨匠集団による共同脚本 監督は名匠市川崑 超期待の映画企画のはたして出来はいかに

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samon
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諫早出身の名優役所広司がカンヌ映画祭男優賞を受賞しました。誇らしいですね。諫早の図書館は急きょ役所広司コーナーを設置。そのコーナーの中央にどーんと立っていたのが、「どら平太」のDVDでした。颯爽と歩く役所のかっこいいこと。長崎市の図書館にもあったのでさっそく借りてきました。

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結論

期待の企画だが、さまざまなことがうまくはまらず、奇跡の映画と反対の「不幸な映画」になっているのでは・・・。

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あらすじ・概要

ある小藩に“どら平太“の異名を持つ新任の町奉行、小平太がやってくる。バクチや酒にめっぽう強い彼は、巧みな策略をもって藩の風紀を乱す悪党どもを一網打尽にしようとする。
巨匠、市川崑の74本目の監督作となる娯楽時代劇。山本周五郎の『町奉行日記』を原作に、型破りな行動で勧善懲悪を成し遂げていく男の活躍を、ユーモアたっぷりに描き出す。

ここから引用
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雑感

豪華キャストなるも、完全に役所広司の影が大きすぎて、逆に役所が浮いてしまっているような気がします。豪華俳優陣のアンサンブルはあまり生きていないようです。特に宇崎竜童の個性は消されて、せっかくの黒幕仙波はぱっとしません。ラストの切腹もあんなに簡単に死ねるのかなあとリアルさ皆無です。

壕外と呼ばれる無法地域で幅をきかす3人の親分も、菅原文太だけが突出し石倉三郎、石橋蓮司は卑小に見えバランスが悪い。

藩の年寄り連中も大滝、神山、加藤、三谷と名優揃いだが、無駄遣いな気がします。ちっとも個性がない。特に大滝はもったいない。

急きょ変わったヒロイン浅野ゆう子も魅力がない。もともと誰がキャスティングされていたのかなあ。

迫力があったのは壺ふりの姉御役、岸田今日子。白くおしろいを塗り込めた首筋の年輪が目に刺さる。若き松重豊の横顔もいいねえ。

特典映像を見ると、独特の美術にこだわっているのがわかります。緑色の壁とか、波模様のふすまとか。しかし、それが物語と相まって観る者をはっとさせる効果を上げているかどうかは難しい。

クライマックス、役所の50人斬り。カメラが人物に近すぎて逆に迫力を減じているように感じる。役所の上半身しか映らないのでこじんまりしてしまっている。

さまざまなことがうまくはなまらなかった、不幸な映画といってもいいかもしれません。残念。

巨匠集団「四騎の会」

「トラ・トラ・トラ!」の解任で大きなダメージを受けた黒澤は、アメリカ映画に頼らず、日本で映画を作る道を選ぶ。
日本映画界の精鋭を結集して力を合わせて日本映画を復興させる。
まずはお金の掛からない低予算で映画を作ろうというコンセプトで、木下恵介、市川崑、小林正樹らに呼びかけ「四騎の会」という芸術家集団を結成。

ここから引用

しかし、この巨匠集団はうまくいきません。黒澤の監督したこの会の第1作「どですかでん」は興行的にふるわず、黒澤は自殺未遂まで追い詰められます。テレビの普及で3人の会の仲間達が急旋回してテレビでの映像製作に向かうことにどうしてもなじめなかったのが自殺未遂の原因とも言われます。

四騎の会によるテレビドラマシリーズも作られています。黒澤はテレビにはとうとう行かずに、外国資本の「デルス・ウザーラ」で復活を遂げます。「デルスーう」いい映画でした。

1969年、黒澤・小林・木下・市川の4巨匠が「どら平太」の脚本を執筆(原作は山本周五郎の「町奉行日記」)します。当初は橋本忍も参加していたようです。しかし映画化はされず、オリジナルの改訂版にさらに手が加わった脚本が80年に完成。加山雄三の主演予定でしたが実現しません。

90年代後半になり、チームオクヤマ製作、主演役所広司で映画化が企画されますが、チームオクヤマは製作から抜けてしまいます。日活の製作で1999年にクランクイン。2000年に公開となります。難産でした。役所広司の主演は踏襲されますが、スタッフやヒロインの変更を余儀なくされます。

製作の過程からも、役所広司を中心に据えた映画であることは伺えます。それが吉と出たかは微妙ですね。

samon
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映画作りの難しさを感じさせる作品でした。脚本・キャスト・スタッフが奇跡のアンサンブルをなしてこそ名作は結実するのでしょう。そうなることはなかなかに困難至極です。逆に言えば、名作の奇跡に触れられる幸せもあるというもの。映画ってやっぱりいいものです。この映画はあまりオススメしませんが、けっして映画は見捨てないよ!PS:カンヌの受賞式で役所は「やっと柳楽くんにおいついたかな」とスピーチして笑わせてくれました。役所さんはやはり郷土の誇りです。

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