シリーズ7回目です。仲間と時折ピアノトリオをやって遊ぶことがあります。そこで、ラフマニノフのピアノトリオを聴いてみましょうか。「悲しみ」と呼ばれる2曲のトリオ。さて、どんな曲なのでしょうか。
結論
ラフマニノフの若い頃の2つのピアノ三重奏は、弦楽器の使い方が単純すぎてちょっと期待外れ。
悲しみの三重奏
『悲しみの三重奏曲』(Trio Élégiaque)は、セルゲイ・ラフマニノフが初期に作曲した2つのピアノ三重奏曲。モスクワ音楽院在籍中の1892年に完成された、単一楽章によるト短調の作品と、卒業後の1893年に作曲されたニ短調による作品がある。前者はラフマニノフの存命中に出版されることがなく、長らく忘れられていたが、現在では前者を「第1番」、後者を「第2番」というように呼び分けている。
wikiより引用
若いときの作品ながら「悲しみ」なんですね。何が悲しいかというと、1番は旋律そのものがうつうつとしたものであり、2番は師と仰いだチャイコフスキーの訃報に触れた、ラフマニノフの悲しみそのものでしょう。
第1番(作品番号無し)ト短調
作品番号無し、長らく忘れられていた曲。習作的なものなのでしょうか。
作者19歳の時のこの作品は、後の複雑な音楽とは異なり、とてもシンプルな印象です。特にバイオリンとチェロは交代に歌うことが多く、一緒の所はユニゾンが多いです。
ピアノも超絶技巧という感じはあまりしないのですが、wikiによれば「超絶技巧を駆使したピアノ・パートにおいて、多様多彩な音色を操る能力が早くも発揮されている」とあります。今度知り合いのピアニストに感想を聞いてみましょう。
全体は15分ほどの単一楽章です。テンポ設定がシンメトリーに配置してあるということですが、演奏を聴く限りそこにはっとさせられることもなく、普通な印象の曲ですね。
第2番ニ短調作品9
1893年20歳の時の作品。チャイコフスキーの訃報に触れ、その1ヶ月後に完成しています。師の死への悲しみを一気に作品にしたのでしょうか。
全3楽章構成で、特に第2楽章は故人の思い出を回想するような雰囲気をもっています。ドボルザークの「ドゥムキー」三重奏の2楽章も彷彿とさせます。ドボルザークの方がはるかにすぐれていると思いますが。
ラフマニノフ特有の茫洋とした感じはあるのですが、楽器の使い方は1番同様に単純でユニゾンがとても多いです。ピアノともう一つの弦楽器の体になっていてかなりもったいないと感じますね。
ブラームスのピアノ三重奏曲第1番作品8も作曲者22歳のときの作品ですが楽器の絡み合いははるかに複雑で、なおかつ効果的なものとなっています。ラフマニノフの若い頃の未熟さを感じずにはいられません。
故人の思い出のためにピアノ三重奏を作るという流れは、チャイコフスキーが作り、アレンスキー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ、シュニトケと続くのはおもしろいですね。ラフマニノフの死に際しても、ゴリデンヴェイゼルという人がピアノ三重奏を作曲しています。
ラフマニノフの若書きの2曲のピアノ三重奏曲は、ちょっと期待外れでした。でも結構ディスクは多いのですよね。よさを私が感じきっていないのかも知れません。今のところ自分たちでやってみたいとは思わないですけどね。
コメント