
日下氏の音が姿が生で見れるとあっては2時間かけても行かずばなるまい
結論
行って良かった大満足の2時間。耳と目が桃源郷に誘われた幸せに感謝。来年もよろしく!
概要
2023年に日本やドイツのプロオーケストラでコンサートマスターや首席奏者を務めるトップクラスの演奏者が集まり、”白秋ホールアンサンブル”が生まれました。
5人のエトワールにちなんだ「水都やながわ五つ星コンサート」の開催も、今年で3回目を迎えます。
今回のテーマは”移民が作り出したアメリカ音楽”とし、オペラのアリア、ミュージカルナンバー、映画音楽、そして現代曲まで、珠玉の名曲を揃えました。プログラムより
演奏者
Vn:日下紗矢子・西本幸広
Vla:小峰航一
Vc:トマシュ・スクヴェレス
Pf:イグナツ・リシェツキ2025/08/03 14:00
プログラム
1 スコット・ジョプリン/メープルリーフ・ラグ
リシェツキ
2 ジョン・ウィリアムズ/「シンドラーのリスト」よりテーマ
日下・スクヴァレス・リシェツキ
3 レナード・バーンスタイン/ピアノ三重奏曲
西本・スクヴァレス・リシェツキ
4 レナード・バーンスタイン/「ウエストサイド物語」より サムウェア アメリカ
休憩
5 マルツェル・ヒジンスキ/ピアノのための「からたちの花」
リシェツキ 朗読:柳川高校放送部女子2名
6 エルネスト・ブロッホ/ヴィオラのための組曲
小峰航一
7 ジョージ・ガーシュイン/「ポーギーとベス」より サマータイム ベスあなたは私の愛
日下・リシェツキ
8 ローウェル・リーバーマン/ピアノ五重奏曲Op34
日下・西本・小峰・スクヴァレス・リシェツキ
アンコール
1 リーバーマン終楽章コーダ
2 リシェツキ独奏ウクライナの柔らかい曲(曲名不明)
感想
当コンサートを主宰するリシェツキのピアノソロ Sジョプリンの「メープルリーフラグ」の元気な演奏で開幕。左手が力強く、強調されたアクセントでラグタイムの音楽の新しい面を見るようです。というのも私のラグタイム体験は、映画「スティング」の割に優美なラグタイムであったからです。
リシェツキの強靱なリズムと幅広いダイナミクスに魅了されました。コンサートに先だっての松田亜有子氏のプレトークでこの「メープルリーフラグ」の大ヒットでラグタイム音楽の扉が開かれたということを知りましたが、曲を聴けばさもありなんと納得の演奏です。
白地に黒の文様のノースリーブワンピース。と思いきやスカートではなくゆったりとしたパンツ状の衣装。あまりのさわやかさ美しさに息を飲みます。そう日下紗矢子の登場です。長身でスレンダーな彼女が颯爽と歩く姿は「かっこいい」の一言です。

ピアノトリオの形態でのJウィリアムズの「シンドラーのリスト」です。もちろんこの曲はバイオリンのための曲。日下の、スラーを紡ぎ出す右手の美しさは極上です。そこから出てくる音は透明感にあふれ、曖昧さが一切ないもの。これが世界レベルの音だと、この場に居ることの幸せに感謝します。
バーンスタインがハーバード大時代の17歳の時に作ったピアノ三重奏。珍品ですが、あまり印象に残らないものでした。調性のはっきりしたまあ習作でしょうか。
バーンスタイン最大にヒット作「ウエストサイド物語」からはサムウェアとアメリカ。西本のバイオリンは堅実で音も美しい。真面目さが伝わる演奏でした。ピアノはくだけた感もあり、アメリカのエネルギーが横溢していました。

休憩後は当地柳川出身の北原白秋作詞の「からたちの花」(作曲は山田耕筰)にインスパイアされた現代ピアノ曲。柳川高校の女子高校生2名が交互に歌詞を朗読する演出はよかったです。時折有名な旋律がひらめきますがほとんどが現代曲でよくわからないというのが正直なところ。
「シュロモ」で有名なブロッホの「ビオラのための組曲」組曲といっても4曲は連続して演奏されました。現代曲でよくわかりませんが、ビオラの独特の音色を楽しめました。
再び日下登場。今度はピアノとのデュオでガーシュインの「ポーギーとベス」から有名な2曲。まずはサマータイム。有名な旋律は初めに出てくるだけで、後半はやたら激しい演奏となり意外でした。サマータイムは終始ねっとりとした黒人の子守歌と思っていたのは幸せに裏切られ、これでもかというテクニックを見せつけてくれます。しかも澄んだ確かな音程で。私の目はハート型になっていたと思います。

最後は出演者が全員出てのピアノ五重奏曲です。待ってました。ただし曲はローウェル・リーバーマンというアメリカのユダヤ系現代作曲家のもの。アメリカを代表する作曲家と言うことですが、私は初めて聞く名前です。さてどんな曲でしょうか。期待と不安が混じり合います。
伝統的な4楽章構成。各楽章も「モデラート」「アンダンテ」のように伝統的シンプルさです。調性もしっかりあって19世紀の音楽といっても肯首される人は多いと思います。ピアノに続いて第1バイオリンのソロが美しい旋律を聴かせてくれます。
日下紗矢子の音は、全員の合奏になっても浮き出すようにきれいに音が聴こえてくるのがすばらしい。どんなに小さなダイナミクスの音でもピーンと耳に飛び込んでくる。これが世界レベルだと改めて感じることができました。

3楽章「モルト アダージョ」では冒頭にチェロの長いソロもあり、情緒にとんだスクヴェレスの音に惚れ惚れします。終楽章のコーダからの情熱はものすごく、5人が原子炉のように一糸乱れず燃えさかります。激しいボウイングでも日下の弓はその右手は本当に美しくて驚きます。CDなどで音だけ聴いていてはこの感動は味わえないでしょう。ライブの重要性を強く感じます。
止まらぬ万雷の拍手についにアンコールに応えます。他曲は準備していなかったようで、ピアノ五重奏の終楽章コーダからの演奏です。いやあ何度聞いても盛り上がる曲です。ブラボーです。

それでもやまぬ拍手に最後は主宰のリシェツキがピアノソロを聴かせます。「静かなものを」と話してウクライナの作曲家の曲を流れるように演奏して演奏会は終了しました。大満足の演奏で本当に2時間かけて柳川まで来て良かったと思いました。耳福そして眼福の幸せに感謝です。来年もぜひ来て欲しい!

CD販売有りました。日下氏のサイン会期待しましたが、日下氏のCDは置いてませんでした。残念。午後の強力な太陽の中を2時間の帰路につきましたが、顔はニコニコだったと思います。
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