恋の対比

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山田洋次監督作品「男はつらいよ 寅次郎の休日」を観ました。第43作はゴクミ三部作の真ん中である。満夫は八王子にある大学に合格。泉(ゴクミ)は名古屋の母親のところに戻っているようだ。佐賀の叔母さん(檀ふみ)のところへ行っていたことは何か無かったことのようになっている。今回は泉の父親(寺尾聰)が登場。泉は秋葉原につとめる父に会い、愛人と別れることを頼みに行くが、すでに辞めて大分の日田に移ったことを知らされる。ここで秋葉原の会社の同僚が笹野高史で、彼は前作(42作)では満夫が旅の途中で出会うゲイのおじさんを演じていて、直後で全然違う役をやらせるという大胆さだ。

満夫と泉は一路大分日田へ。一方泉をむかえに来た母親の礼子(夏木マリ)は、二人を追って、ブルートレインで寅と大分へ向かう。今回も寅の恋は燃え上がること無く、休日のように静かだ。しかし、若き頃を回想して語る「若者の心は燃えている。恋でその炎は激しく燃える」は寅がすでに若くないことを自覚していることを示す。「ガキが大人の恋愛に口を出すな」とも言う。寅は大人の恋愛へと移行しているのだ。若者の恋と大人の恋の対比がこの3部作の背骨になっている。

日田での父親の愛人(宮崎美子)との幸せそうな様子に「別れてくれ」とついに言えない泉。そこことを母親(夏木マリ)に話したときの夏木マリの悲痛な声は痛い。自分が愛する男に選ばれなかった哀しみ。隣室で寝ている寅と満夫。満夫は「慰めに行かないの」というが寅は行かない。それが大人の恋愛なのだろう。泣かせておけば良いという。満夫は泉がついに父親に自分の思いを言えず泣いているとときに「泣いちゃダメだ」といっていまう。これまた大人と青年の恋の対比なのだろう。

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