岩明均著「ヒストリエ」はまること必至の歴史ロマン大作コミック

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岩明 均 著「ヒストリエ」を読んでいます。アフタヌーンという青年誌掲載の漫画です。

samon
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友人からどさっと借りたコミックです。8巻まで読みましたか。はまります。紀元前の話ですが、近隣の国とのにらみ合い、そして戦争。あれ、紀元2000年も過ぎて20年あまりもたつというのに、現代の人類は紀元前の人々と、そうかわらないことを繰り返しています。「人類は歴史から何も学ばないと言うことを、唯一歴史から学ぶことができる」と言ったのはヘーゲルでしたか。至言ですなあ。さて、そんな愚かな人類ですが、アレキサンダー大王の書記官エウメネスの冒険は始まります。この男の数奇な人生には心躍ります。オススメの歴史コミック!

物語は、スパイ容疑で追われているアリストテレスと青年エウメネスの出会いから始まります。奴隷身分であるエウメネスが、船をこぐための仕組みを工夫しているのを見て、アリストテレスは「(工夫の答えを)言わないでくれ」と止め、自分でその工夫を推理します。

哲学者アリストテレスの、知的好奇心に突き動かされて生きていくという人物像がこのエピソードで描かれているようの思えます。一気にアリストテレスを読者が好きになる瞬間です。

読書好きのエウメネスはアリストテレスの「地球儀」を間にして、二人は知的な意気投合をします。知的な二人には、奴隷も貴族もないのです。人間と人間、そして知識や思考があるだけなのです。

実に魅力的な冒頭ですね。

円環

ヒストリエ第1巻は上述したアリストテレスとの出会いに始まり、続いて「故郷カルディア1~3」の3話が描かれます。子供の頃育った故郷であるカルディアに再来した話です。その後主人公エウメネスの幼少少年時代が描かれます。

そして、第4巻末で冒頭のアリストテレスとの出会いにつながり、第5巻からは第1巻「故郷カルディア」の続き「故郷カルディア4~7」が語られるという複雑な構成になっています。

私は4巻を読み終えて、「お、冒頭に戻った」と気づき、もう一度第1巻を読みました。この様なコミックにはあまり出会えません。物語を構成する際に、大きな設計図をもっていない限りできない表現だからです。単純な時間進行順の物語の方が多いのでは無いでしょうか。

作者はこのエウメネスの物語を、デビュー前から温めていたということも聞きました。広大な設計図をずっと考えていたのでしょう。

このような円環の構造に感動し、再び第1巻を読んで、そこで描かれることの意味を深く再認識できたような気がします。

岩明 均

映画化もされた「寄生獣」を御存知でしょう。この「寄生獣」の原作コミックを描いたのが岩明 均です。彼の父は和光大学の名誉教授で、彼自身高校3年まで漫画を読まずに育ったそうです。

漫画に目覚め夢中になったころも、漫画本を買うのが恥ずかしくて、やっと買ったのは文庫版の手塚治虫の漫画だったそうです。いわば漫画に対し否定的に成長してきた彼が、その道で花開くのが面白いし、エウメネスと通じる部分もあるのかも知れません。

「ヒストリエ」を貸してくれた友人曰く、岩明氏は遅筆で、「ヒストリエ」は月刊誌に連載のうえに、休載することもあり、なかなか進まないとのこと。「ヒストリエ」は11巻まで借りていますが、この11巻が2019年7月刊行で最新巻です。

第10巻でやっとアレキサンダー大王ことアレクサンドロスが青年として初めての戦に出、そこでの伝説の戦闘が描かれます。まだまだ先は長そうです。じっくりつきあっていきたいですね。

samon
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長大な作品ゆえ、網羅的な紹介は全然できませんでした。難しかったです。しかし、とにかく読み始めればすぐにはまってしまうこと間違いなしです。世界史ってこんなにおもしろかったんだとうならせてくれます。高校の時「世界史」勉強したのに全然おもしろくなかったんですよね。やっぱり受験のための勉強だったのかなあ?本作「ヒストリエ」を契機に、世界史に興味をもつのもいいですね。とにかく第1巻をめくってみてください。大オススメの歴史コミックです。

sあい

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