TOHOシネマズ長崎、日に1回の上映ゆえかかなりロングランしているにのに、平日の昼12:00開始なのに、50人はいたと思います。口コミで広がる愛すべき日本時代劇映画。
結論
時代劇愛がつまった最高に楽しめる作品。脚本の見事さが随所で輝く。ロングラン中。
概要・あらすじ
「自主映画で時代劇を撮る」と言う無謀。コロナ下、資金集めもままならず諦めかけた監督に、「脚本がオモロいから、なんとかしてやりたい」と救いの手を差し伸べたのは他ならぬ東映京都撮影所だった。
10名たらずの自主映画のロケ隊が時代劇の本家、東映京都で撮影を敢行する前代未聞の事態。半年に及ぶすったもんだの製作期間を経てなんとか映画は完成。2023年10月京都国際映画祭で初披露された際、客席からの大きな笑い声、エンドロールでの自然発生的な万雷の拍手に関係者は胸を撫でおろしたのであった。初号完成時の監督の銀行預貯金は7000円と少し。
「地獄を見た」と語った。公式サイトより引用
時は幕末、京の夜。会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。
やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ少しずつ元気を取り戻していく。やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。同上
感想
音が非常に鮮明な印象です。特に台詞が明瞭すぎるほどわかりやくすく、それは会津弁であろうと京都弁であろうと同様です。
「心配無用之介」撮影のシーンで、エキストラの魚屋とおかみさんがやりとりするところが、台詞無く無音で行う事実はびっくり。確かに主役以外の音声はノイズになるし、いらないわけだけど・・・。音声同録してたかなあ。アフレコでしょうか?
カメラテストして本番。同じ事が2回起こるわけですが、私たち現代人にとっては周知の事実でも、新左衛門にとっては驚きだったでしょうね。そんな現代と過去の常識の違いをうまく取り入れて驚きや笑いにしているのがうまい。
自主映画ゆえ、エンドタイトルには同じ名前がいくつもの役割で出てきます。ヒロイン優子役の「沙倉ゆうの」の名前も助監督・制作・小道具と何度も。これまでの安田淳一監督作品でも常に女優も兼任しているので、ごく自然のことだったのでしょう。
葵わかな似の彼女の自然な演技はよかったですね。「監督をやりたかったら脚本を書き続けるんやで」と仲間からいわれつつも、日々の多忙にあきらめつつあったのが、新左衛門らの真摯さに再びチャレンジしていくという彼女の物語もちゃんと描かれています。
ショートケーキのくだりはやはり感動ものです。飢饉で多くの人が死んでいた江戸時代に比べ、現代のなんと贅沢なことでしょう。「日の本はいい国になったのですね」ただし、物の豊富さと幸せが必ずしも比例するわけではないでしょうが。
中盤より風見恭一郎という時代劇を捨てた役者が登場。ゆとりある明るいキャラとして見事な演技を見せます。彼の正体には驚きですね。時差タイムスリップがエンディングの笑える状況も納得させます。見事な脚本です。本作の脚本のおもしろさが、風見役の俳優さんの出演快諾につながったようです。
映画の全編に出演する殺陣師の関本も自然で見事な演技を見せます。新左衛門との殺陣の練習で、切られるはずの新左衛門が関本をつい切ってしまうカットの連続は大いに笑わせてくれました。
新左衛門が身を寄せる寺の住職夫妻も、コテコテの関西漫才ですが、いやみなく自然に笑わせられます。
ラストの真剣での殺陣は賛否を分けていますが、二人の因縁ある侍がけじめをつけるための対決として納得しています。まだロングランしています。音のいい劇場でぜひ御覧ください。オススメです。
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