NHKドラマ「みおつくし料理帖」から派生して、高田郁 著「八朔の雪」を読んでいます。この人も宮部みゆきに負けず劣らず物語作りがお上手だ。引き込まれページを繰る手は止まらない。シリーズスタートの本作、ドラマでは出てこなかった料理もどんどん出てくる。冒頭の「ぴりから鰹田麩(かつおでんぶ)」佃煮のようなものとのことだが、当地ではなじみがない。この話では、二番煎じでない鰹田麩を作るのに、小松原がヒントを与える。テレビシリーズでは小松原は御前奉行であるが、「毎日食べさせられる」ショウガが嫌いだの、甘いものが苦手だの、料理には精通している姿はあまり描かれない。よって、澪にヒントを与えるこの話には驚いた。
第2話「八朔の雪」では、江戸と大坂の遊郭事情の違いが書かれる。大門1つで堅く閉ざされた吉原遊郭と異なり、大阪の新町遊郭には多くの門があり、遊女の外界との出入りはわりに自由だったとある。「蛤門」は普段は閉ざされているが、火事の時には逃げ出すために開く。蛤が焼かれたときにぱっくりと口を開ける様から名付けられたのだ。ストーリーの語りと同時に、当時の江戸の風俗まで興味深く教えてくれる良書だ。シリーズは9巻ほど続く。こりゃ楽しみが増えたじゃないか。
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