熊本県立劇場初めて行きました。2階席からはオケピット、指揮者もばっちりよく見えます。
結論
ムゼッタの魅力を再確認。4人の黒子ダンサーの演出も新鮮。オペラはやはり最高!
概要
全国共同制作オペラとは、全国の劇場・音楽堂、芸術団体等が連携し、単館では成しえない、独創的かつ高いレベルのオペラを新演出で制作するプロジェクト。2009年度から開始し、近年では野田秀樹演出のモーツァルト『フィガロの結婚~庭師は見た!~』(2015年度/全国10都市13公演、2020年度/3都市3公演)、森山開次演出の『ドン・ジョヴァンニ』(2018年度/3都市4公演)、野村萬斎演出の『こうもり』(2023年度/3都市3公演)など実績を積んでいる。
感想
初の熊本県立劇場。レトロな雰囲気のある劇場です。モダニズム建築の旗手として戦後の日本建築界を牽引した前川國男氏の設計。設計思想や特徴が掲示してあり、前川氏がこだわったイスに実際座るとなかなか感慨深いものがあります。
この劇場にはコンサートホールと演劇ホールがあり、今回のオペラは演劇ホールで上演されました。広さや音響など心配しましたが、杞憂でした。ベースとパーカッションがオケピットに入りきらず、舞台上手と下手端で演奏します。
開演前ですが、2階席の通路を「撮影禁止」の札をもった職員さんが回っています。写真撮影は「カーテンコール」のみのようです。開演前撮影禁止はよく意味がわかりませんでした。
井上道義の登場です。万雷の拍手。オケピットの手前を歩いてきて、中央の指揮のところで、オケピットの仕切りの戸を開いて指揮台につきます。ほほう。
暗い舞台にはマルチェッロとロドルフォがセッティング、これに黒子装束のダンサーが加わります。これが森山演出。4人の黒子ダンサーはときに火の精になり風の精になり、各所で美しく踊ることで新しさを出しています。人の身体・動きの美しさが物語に花を添えます。
マルチェッロは深いいい声が響きます。次に出るロドルフォは初め少し声が聞こえにくいところもありましたが、幕が進むにつれてどんどんよくなりました。
ミミはキャスト変更でムゼッタ役の中川郁文(いくみ)が務めましたが十分立派でした。
ムゼッタは共同オペラ全てで歌うこととなったイローナ・レヴォルスカヤ。圧倒的華麗さでムゼッタ感満点です。
九州交響楽団はがんばりましたが、演劇ホールの響きのデッドさのせいか、木管楽器のアンサンブルで少しの乱れを感じました。2幕ラストで舞台を行進していくバンダ・ベル・ラ・ボエームのサウンドは輝かしくてよかったですね。
今回感じたのはムゼッタのキャラクターとしての魅力です。2幕の華やかさ、気が強いが恋に生きる女。3幕の激しくケンカをしながらもマルチェッロを愛する女のありようは、愛しながらも一緒になれないミミの悲しみを対比的に強調する重要な役となっています。
4幕での情に溢れる女性としてのムゼッタはこれまでの姿とはがらりと変わっています。一人の女の中にある多面性を感じさせます。いろいろな面をもつムゼッタのキャラはこのオペラになくてはならない役だと痛感しました。
来年は長崎で市民オペラとして「蝶々夫人」が上演される予定です。非常に楽しみですねえ。終幕冒頭の漁師の声など歌ってみたいです。オペラは本当にすばらしい芸術です。
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