友人に誘ってもらったコンサート。これほどに素晴らしい演奏を無料で提供してくれた十八親和銀行さんに感謝です。今後も銀行使わせてもらいます。
結論
とても端正でバランスが良く美しい。各セクションの音が明確に聞こえ、同時に全体として混じり合っている。ソプラノの歌唱は弱音から明瞭に聞こえ、人形の演技も完璧である。これらは演奏の良さか、はたまた初めて座ったホール最後方ゆえか。
こうもり
幕開きはヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」序曲です。最初の3つの音が鳴り響いただけで、このオーケストラのクオリティの高さが分かります。バランスの良さと音程の良さが非常に心地よいです。第1バイオリンの音は上品でつややか。低音弦楽器も音程よく、まるで1つの楽器のように聞こえてきます。
歌手登場。鈴木 玲奈さんです。曲は「侯爵様、あなたのようなお方は」という笑い声を歌にしたようなコミカルな要素が多い曲ですが、その中にゴージャスさが表現されてそれは素晴らしいものでした。
ブラームス ヴェルディ ワーグナー
3曲管弦楽の名曲が続きました。ブラームス「ハンガリー舞曲第1番」、ヴェルディ「ナブッコ」序曲、ワーグナー「ローエングリン 第3幕への前奏曲」。指揮者の下野竜也さんが解説を加えてくれます。おしゃべりが上品でわかりやすい方です。ブラームスとヴェルディは仲のよい友人。ヴェルディとワーグナーは同じ年とのこと。
ハンガリー舞曲の柔軟な揺れに、この曲のすばらしさを再確認。ヴェルディの若々しいエネルギーが溌剌と描かれます。ワーグナーは吹奏楽でやったことがありますが、中低音の金管楽器が旋律を歌える、これまた元気いっぱいの曲です。新年の元気を、この3曲で注入してもらえてようです。
フィガロの結婚
てらいのない、流れるような序曲です。弦の細かい動きは一体となって管楽器につながり、強奏となりますが、実に自然で心地よいものです。この序曲はヴェルディの序曲と違って、様々な旋律が出てくることがない、とてもシンプルなものです。物語が始まるワクワク感をとても高める効果がありますね。
スザンナのアリア「とうとう嬉しいときがきた」は、フィガロにスザンナが嫉妬させるという歌ですが、非常に美しく、スザンナのフィガロへの真の愛が感じられます。弦楽器のピチカートの中、時折現れる管楽器の花畑に咲いているまるで薔薇のようように美しい歌が歌われます。本当にすばらしい。夢心地の中に、スザンナのいたずら心が入っているという複雑さにも驚かされます。
ホフマン物語
いろいろな楽器の演奏に編曲されている「舟歌」ですが、原曲を今回初めて聴きました。管楽器はいつまでも続く波のように終始同じ上下を繰り返し、その中を弦楽器が旋律を歌います。穏やかな舟遊びのシーンに誘ってくれます。
主人公のホフマンは、人形に恋をしてしまいます。現代で言うとオタク的ですね。その人形が歌うアリアが「森の小鳥はあこがれを歌う」です。歌は驚異的にテクニカルですし、人形の動きも演技しなくてはなりません。これを完璧にこなす鈴木さんの力量の高さに驚くばかりです。人形のゼンマイが切れて、バイオリン奏者がゼンマイを巻く演出も楽しかったです。
歌舞伎で、人形が生きた女性になって、最後に再び人形に戻るというものを観たことがありますが、その演技のすばらしさに驚いたことを思い出しました。鈴木さんの演技も、もはや人形にしか見えないほどすばらしかったですね。
ムゼッタのワルツ
プッチーニの名作オペラ「ラ・ボエーム」より有名なムゼッタのワルツ「私が街を歩けば」が歌われました。もちろん歌唱はすばらしいにですが、私はオーケストラの楽器達がまるで室内楽のように精緻に絡み合うところがおもしろいとおもいました。プッチーニの楽器の使い方は独特なものがありますが、此まで演奏された曲とちょっと違う取り合わせや楽器の移動がよくわかりました。
美しく青きドナウ
最後はニューイヤーコンサートらしくウインナワルツの名曲「美しく青きドナウ」です。前奏の途中でホルンとチェロのソロがユニゾンで歌いますが、チェロのソロもホルンも両方とてもよいバランスで聞こえました。
これまでも演奏から感じるのは、楽器の音の分離がとてもよいということです。どの楽器もよく聞こえる。これは、九州交響楽団の演奏がすばらしいのはもちろんですが、もしかしたらこの座席がものすごく音響的によいのではないかと思ったのです。ホールの最後列。頭の上には張り出しがあります。ちょっと考えると音響的にどうかと思う座席なのでですが、長崎ブリックホールではこの最後列が一番音響的によかったりして・・・。という仮説をもつに至りました。次にこのホールで演奏を聴くとき、再びこの最後列に座って確かめてみましょう。
アンコール
アンコールは2曲。歌入りで、オペラ「ロメオとジュリエット」からジュリエットの夢あふれる歌。そして最後は「ラデッツキー行進曲」かと思いきや、オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」からフレンチカンカンの部分が演奏されました。観客の手拍子や最後には弦楽器前列の奏者に歌手、そして指揮者がポンポンを持って踊りまくるというめでたい演出がなされました。結構おちゃめな指揮者です。
とても楽しい気分で会場を後にしました。年の初めにすばらしい音楽の贈り物をありがとうございます。外は小雨でしたが、そんなの気にもならず、私は夕食のお店を目指してにこにこ顔で夜の街を歩き出しました。
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