ラヴクラフトカントリー第6話「テグで会いましょう クミホ」

Drama
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U-NEXT「ラヴクラフトカントリー」第6話「テグで会いましょう」を観ました。以前主人公アティカスが電話で話していた謎の韓国の女性「ジア」の物語です。ネタバレに触れるかも知れませんので、ご注意ください。

1950年朝鮮戦争が勃発します。ソ連のスターリンの同意と支援を取り付けた金日成率いる北朝鮮が38度線を越えて韓国に軍事侵攻したことに端を発します。物語はこの年の秋から冬にかけての出来事です。看護師のジアは母親と二人暮らしですが、どうもおかしな様子の親子です。母親は、ジアに男を家に連れてくることを要求します。はじめ、これはジアが結婚して家を建て直すことかなと思わせますが、実は本当に男を連れ込むことを意味しているのです。

冒頭のタイトルに「クミホ(구미호、九尾狐)」が示されるとおり、日本でも有名な「九尾の狐」伝説が関わっています。実は、朝鮮半島にも九尾の狐伝説があるのです。

朝鮮半島でも中国の古典作品の影響があり、九尾狐はそのままクミホ(구미호、九尾狐)と呼ばれ知られている。物語などのなかにおいてクミホは美少女の姿に化けて男性をたぶらかしてその命を奪う、悪意ある存在として描かれる。クミホは人間になりたいと願っており、男性の命を奪うのも1000人分の心臓ないし肝を食すことで人間になるためという。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ジアは100人の男を連れ込んで、その魂を吸い取ればもとの人間に戻れるという恐ろしい呪いを、何と母親にかけられているのです。それは、ジアの父親つまり母親の夫とのおぞましい関係ゆえのこと。ここでは、あえて書きますまい。

ジアはあと一人で100人というときに、志願兵として米国からやってきていたアティカスと出会います。これまでの男たちと違ったアティカスの優しさや知性、そして振る舞いにジアは恋に落ちてしまうのです。ベッドの上で、魂を吸い取るときに現れる九尾を、ジアはコントロールできると考えていましたが、愛に溺れたためでしょうか、耳から鼻から口から、そして目から尻尾が現れてしまいます。2+2+1+2=7で、後尻尾が2本足りませんが、これは以前に犠牲になった男の映像からすると、下半身から出てくるようです。

ジアは相手の男の魂を吸い取るときに、その相手のすべての記憶も吸い取り、知覚することができるのです。アティカスの記憶も同様にジアは知覚します。子どものころ、父親に尻を殴られるところ、そしてレティも登場。そして、何とアティカスが死ぬところまでも見てしまいます。つまり、未来の姿まで見えてしまう。この辺は少し不合理な感じもします。しかし、ストーリー上はこれをこそ言いたかったのだろうなと思われます。

ジアは驚いてアティカスを放り出し、「米国に戻らないで!」と懇願します。その意味は、米国に戻ると残忍な死が彼を待っていることを知ったからです。つまり彼への愛情故。自分の為ではないのです。しかし、驚いたアティカスは逃げるようにジアのもとを去って行きます。これが、韓国でのジアとアティカスの物語でした。

私は隣国におりながら、朝鮮戦争についての知識が今更ながらに、何も無いなあと痛感します。知ってるのは、戦火でゼロになった日本が、復興の足がかりにしたのが朝鮮戦争での特需であることぐらいでしょうか。このドラマの戦時病院での様子を見ると、その激しさに驚かされます。ジアたちは血まみれになって、治療に当たるのです。少し調べてみると、、戦争の規模としては、導入された兵が朝鮮・中国側が300万人、韓国・国連軍が270万人(韓国軍200万人、残り国連軍の90%は米国軍)という大規模なものなのでした。600万人近くが殺し合ったのです。

ドラマでは、ジアの友人の女性が北朝鮮のスパイで、それを見つけるための恐ろしいシーンやアティカスの記憶の中で、その女性の歯を抜いて拷問するシーンも出て、戦争の狂気が表現されます。九尾の狐の一見荒唐無稽の話と朝鮮戦争という狂気が上手にまとめられているのが出色だと思います。

このラヴクラフトカントリーといドラマには、あまり知識としてない黒人差別やアジア人差別(この話でさらりと触れられます)、そして朝鮮戦争のことなどが描かれ、大変興味深いと共に自分がまだまだ無知であることに今更ながらに驚かされるのです。

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