1日1回で15:00の回のみ。祝日で多いかと思いきや4人ほどか。最前列リクライニングで没入できました。
結論
日本の人気ドラマが元ネタだが、各エピソードの交錯が楽しい。ソウルのいや今や世界の「新常識(ニューノーマル)」が突き付けられる。怖いのはやはり人間。
概要・あらすじ
韓国ホラー歴代興収2位の『コンジアム』を手掛けた、〈Kホラーの巨匠〉と 呼ばれるチョン・ボムシク監督最新作。韓国ソウルを舞台に、6人の男女の絡み合う奇妙な運命が日常を一転させ、身近な出会いの裏に潜む恐怖と絶望を描いている。
ソーシャルメディアに左右される現代的なテーマをちりばめつつ、誰もが死と隣り合わせであり、 私たちの日常そのものがホラーになってしまった社会を見事に表現し、世界中の映画祭で高い評価を得た。
第26回富川国際ファンタスティック映画祭のクロージング作品に選ばれ、わずか10秒で完売し話題を呼んだ。 さらに、ファンタジア国際映画祭では、「独創的でカリスマ的なエネルギーで観客を魅了する新ジャンル映画」として評価され、 前例のないジャンル映画としての『ニューノーマル』の魅力を際立たせた。
公式HPより引用
ソウルでは、女性ばかりを狙う連続殺人事件が多発し、世間を賑わせていた。 ある日、マンションで一人暮らしをしているヒョンジョン(チェ・ジウ)の元に火災報知器の点検をしに来たという中年の男性が訪ねてくる。 図々しく家の中に入ってくる怪しげな男性に不安を覚えるヒョンジョン。
一方、デートアプリでマッチングした相手と待ち合わせをしているヒョンス(イ・ユミ)。 しかし、そこに現れたのは思いも寄らない人物だった。交差する2つの出来事が予想だにしない結末を巻き起こす…。同上
感想(ネタバレ注意)
各エピソードは有名な映画の題名になっています。
1話「M」フリッツ・ラング監督のサイコスリラー
チェ・ジウさん美しく撮影されています。お肌がつるつるです。一人暮らしの女性の弱さが、いきなりシリアルキラーに変容する驚き。殺される怪しいおじさんが他のエピソードと本エピソードをつなぎます。このおじさんが実に見事に嫌な役を演じます。出色です。でもなぜおじさんチェ・ジウを襲ったのかな。美しさにもうしんぼう堪らなくなったのでしょうか。
2話 Do the righet thing「正しきことをせよ」スパイク・リー監督の映画
小学校高学年でしょうか学習塾のビルの外階段での会話で始まる。学習塾が高層ビルに入っているってソウルではもうあたりまえのことなのでしょう。
儒教の国韓国の伝統とニューエイジが提示されます。つまり人助けをする先輩を称賛する子どもたちと、それに全然共感できない主人公。でも、彼にも自分に何の得もないことをするすばらしさは気にはなっている。
その隙間に忍び寄る恐怖。車いすのおばあさんを手伝ったことから悲劇は始まります。ぼろぼろのビル。下りてくるエレベーター。異変に気がついた子どもを逃すまいと鞄のひもをはなさないもはや鬼婆と化した女。鞄は昔の日本の中学生が提げていたような、白いキャンバス製のあれ。
エレベーターから出てきた入れ墨の屈強な男たちとの暗いビル内での追いかけは、スローモーションで撮られ、これが怖い。どうなったかは劇場で。
3話 Dressed to kill「殺しのドレス」ブライアン・デ・パルマ監督のスリラー
私が大好きな「殺しのドレス」を冠するエピソードは「マッチングアプリ」。もちろんラストのエレベーターの中での殺人が題名の理由ですね。チェ・ジウの登場で第1話と交錯しています。
マッチングアプリは有効な出会いの場でもあるでしょうが、どんな人間かわからないのに対面するリスクはかなり大きいですね。
ある程度の身元の保証があった「お見合い」システムは今思えばかなりよい仕組みといえないでしょうか?
4話Peeping Tom「血を吸うカメラ」マイケルパウエル監督のホラー
主人公が携帯で密かに盗撮する隣に住む女性が非常に魅力的です。おしりのきゅっと上がった最高のスタイルと少し童顔な表情がたまりません。
毎朝正確な時間に出勤することから、きちんとした仕事についていることも想像させます。
ある日の朝落とした傘を拾おうと、彼女がしゃがんだ姿を盗撮できたことで、彼は一線を越える決心をしたようです。短いスカートから出た細い足は一人の男の運命を変えることに。
彼女の部屋に忍び込んだ主人公は、しばし至福の時を過ごしますが、すぐに地獄へと変わっていきます。一部始終を押し入れの中の誰かが見ていたという独白も怖さを引き立てています。
シャワー室で鉢合わせしたときの、まったく動じない彼女がサイコパスですねえ。主人公は思わず「1回やらせてくれません」あほです。恐怖の中に笑いをまぶしているのが本作の特徴でもあります。
巨大な鉄の玉のブラックジャックは最後の話でも登場。
5話 Be With You「今会いに行きます」市川拓司原作で日本・韓国で映画化された
マッチングアプリのエピソードの主人公の男の友だちがこの話の主人公となることで話が交錯します。ちょっとムリクリ感はありますね。
自動販売機に置かれた謎の手紙にしたがって誘導されていく主人公。かなりの美形ゆえ、カメラは彼だけを追って夜の街をさまよいます。韓国にも自販機あるんだなー。
韓国の裏道や路地裏は、なにか懐かしい感じがします。昔の日本に似ているせいでしょうか。
道連れ自殺のエンディングは衝撃的。自殺者の顔はわからないため、手紙に差し挟まれていた写真は本物ではないな・・・とか、自殺女性の姿や自殺に至る状況をいろいろ想像させます。そこはうまい。
6話 My Life as a Dog「最低の人生」ラッセ・ハルストレム監督の映画
半地下のアパートに住み、コンビニで勝手な客のストレスにさいなまれている女性主人公。彼女の最悪な日々ととんでもない結末が描かれます。
ラストゆえ交錯がいっぱい。出歯亀の彼とはゲーム上で話す仲。話し声はごつい男の声に変換されています。ネットの世界ではだれが男か女か若者か老人かは、全くわかりませんね。それもニューノーマル。
最悪な客、親父は1話の火災報知器点検員、おばさんは2話の車いすの怖いオババかな?
最後は4話のブラックジャックの男に追われることに。
彼女のような生活の若者がニューノーマルなのでしょうか。若者の貧困というのは日本だけの話では無いのかも知れません。若者ががんばっても全然報われない世界。監督はそれもニューノーマルだとでも言うようです。
エンドクレジットでもきちんと記されていますが、多くのエピソードが日本のドラマ「ヒトコワ」シリーズから取られています。2話だけ違うのかな。日本が先行したストーリーというわけで、ちょっと誇らしい?私は「ヒトコワ」全然見たことないので、どのエピソードもすばらしく楽しめました。
完全に映画に引きこまれあっという間の2時間弱でした。これが映画の楽しみだよね。機会あれば配信やレンタルでぜひ御覧ください。超オススメ。「ヒトコワ」観てみたくなったなー。
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