タナダユキ監督作品「マイ・ブロークン・マリコ」永野芽都の新境地 憑依型女優奈緒の絶品演技 衝撃コミックの実写映画化作品

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アマプラにて鑑賞。ライムスター宇多丸が絶賛していたので、鑑賞を決めました。永野のこれまでなかったキャラクター演技に驚くし、マリコの毒父に尾美としのりを配すなど、予想を裏切るキャスティングに「どうなるの」と期待と心配が渦巻きます。

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結論

天真爛漫な印象のこれまでのイメージを打ち破る、永野芽都の体当たり演技に感動。

憑依型女優 奈緒は出演場面少なめだが、「ファーストペンギン」の啖呵演技とは真逆の女性を演じており、憑依型に偽りなし。

謎の「釣り竿とクーラーボックスの男(窪田正孝)」の言葉「いなくなった人に会うためには、生きていくしかない」はいつまでも心に残る名台詞である。

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あらすじ

ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。

公式HPより引用
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永野芽都

「ハコヅメ」などを中心に、天真爛漫なイメージの彼女ですが、本作ではそれを打ち破る体当たり演技を見せてくれます。

まずは、一番似合わなそうな喫煙です。主人公シイノは中学校からのベテランスモーカーですので、自然な喫煙シーンが重要です。非喫煙者である永野は撮影3~4ヶ月前から、ニコチン・タールのない美容タバコで喫煙の練習を始めたそうです。映画前半に多くある喫煙シーンは自然に見えます。私も永野同様の非喫煙者ですのでよく分かりませんが。

前半のクライマックスである、マリコの遺骨奪取のシーンで、包丁をつきつけながら「テメェ」を連発する迫真の演技を見せます。その後2階以上のアパートの窓から裸足で飛び降りるのは、少しリアリティに欠けますが、アクションとしても頑張っています。

エンディング近くの食堂で生ビールと餃子を食べるシーンでは、やさぐれたOLのシイノとして、全く違和感なく観る側が受け取ることができます。映画を通じて体当たりの演技に、女優魂を感じます。今後幅広い役を演じていく可能性を見せてくれましたね。感動です。

奈緒

彼女を初めてテレビ画面で見たのは「あなたの番です」でした。謎のストーカー、尾野 幹葉役は強烈に印象的でした。この演技で第102回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞していますね。

近くは「ファーストペンギン」で堤真一らを相手にした、その啖呵のすごさに圧倒されました。未見ですが、映画版の「みおつくし料理帖」で花魁 野江役を演じています。芯の強い野江像が想像できます。役柄ごとに全く違う人物を見事に演じてしまう、いわば役が憑依してしまうような女優さんだと思います。

本作では、回想シーンとして何度も登場するわけですが、ほんわりして弱く、自分では戦うことのできない「こわれたマリコ」を柔らかな表情を中心に演じました。ファーストペンギンの女性とは全く逆ですね。女優さんのすごさを感じずにはおられません。これからが楽しみな女優さんです。

永野とはNHK連ドラ「半分、青い。」で共演しています。奈緒もオーディションで「半分、青い。」のヒロイン役を狙っていたわけですが、落とされたものの、その後呼ばれた親友役のオーディションで選出されました。

釣り竿とクーラーボックスの男

マリコの遺骨をもって、シイノは旅に出ます。マリコが行きたがっていた「まりがおか岬」を思い出し、そこを目的地とします。マリコのこれまでの手紙と養命酒をもち、靴がないので初めてのバイト代で買った「ドクターマーチン」の靴を履いていきます。

永野はこのドクターマーチンの靴を撮影前からはきつぶすほど履いており、そのことを前述したタバコの練習とともに、監督のタナダユキから賞賛されたそうです。

後半は、「まりがおか岬」を目指す、シイノのロードムービーの色をおびてきます。旅の途中、ひったくりに遭いますが、謎の男(窪田正孝)がお金を援助してくれます。釣り竿とクーラーボックスのこの男とは、まりがおか岬で再会し、マリコを追って岬から跳び降りようとするのを助けます。

男は、自分も同じ事をしたが、死ねなかった。ここで死ぬのは難しいと話します。全く謎の男ですが、シイノの心にはその言葉が響きます。

男は駅での別れ際、弁当とお茶をシイノに渡し、こんな言葉をつぶやきます。

「もういない人に会うには、自分が生きていくしかないんじゃないでしょうか。あなたの思い出の中の大事な人と、あなた自身を大事にしてください」

シイノの心に染みるとともに、観ている私の心にも残るとてもいい台詞だと思いました。

シイノは生きていくことを決意します。そうすると急にお腹が減ってきたのでしょう。男との別れもそこそこに、もらった弁当を食べ始めます。笑いました。

シイノの背景

マリコの闇、毒父やDV彼氏などは映画の中で表現されますが、シイノの背景は一切描かれません。しかし、中学時代からタバコを吹かしているのですから、彼女の周囲も普通の環境では無いことは想像できます。シイノにとって、マリコはただ一人の友人であったのでしょう。

マリコの遺骨を前にマリコに語るうちに、自分も死のうとシイノは考えます。しかし、その決意は聞こえてきた女学生の「助けて」という声に中断されます。男に追われる女学生の姿はマリコと重なり、シイノは男のフルフェイスのヘルメットをマリコの遺骨箱で、下から上へ殴り上げます。遺骨箱は壊れて中の遺骨が空中に舞います。これらがスローモーションで表現されます。マリコとシイノが共に戦う姿が描かれたようで、映画の中の白眉のシーンだと思います。

マリコの手紙

シイノが久し振りにアパートに戻ると、ドアのノブに紙袋。中にはシイノの靴と、マリコの毒父と再婚した田村恭子からの手紙。手紙の中に、マリコからの「シィちゃんへ」の手紙も入っていました。シイノはそれを読みながら笑顔になり、手紙を顔に押し当てます。マリコがシイノが生き続けることを後押ししているようです。そこでふいに映画は終わります。マリコからの手紙の中身は、観る者一人一人にゆだねられます。

同時に流れ出す、Theピーズというバンドの「生きのばし」という曲。

「死にたい朝 まだ目覚ましかけて 明日まで生きている・・・」

日々の日常に疲れ、死にたいと思う日も、やっぱり生きていくという私たちみんながかかえる日常を歌っています。

シイノのこの数日の出来事を、自分と同じだと重ね合わせる人も多いのではないかと思います。いわば、この映画は、太宰治の書いた「人間失格」のようです。多くの読者が、これは「自分のことを書いている」と思うのですから。

本作は、1時間半足らずの短尺の映画の中に、大きな人生応援歌が歌われている映画であると思います。

タナダユキ

タナダ ユキ1975年8月12日 – )は、日本映画監督演出家脚本家小説家
福岡県北九州市出身。マッシュ所属。デビュー作である『モル』にて、2001年のPFFアワードグランプリを受賞。代表作として『百万円と苦虫女』、『ふがいない僕は空を見た』がある。

wiiより引用

多才であり、しかもお美しいという、まさに天は二物も三物も与える典型のような人ですね。映画の他、テレビドラマの演出、MVやCMの演出など多くの作品があります。映画も多くを脚本・監督されていますが、私は本作「マイ・ブロークン・マリコ」が初めてとなります。

原作コミック

平庫ワカの初の連載作品[2]。『Comic BRIDGE online』(KADOKAWA)にて、2019年7月から12月にかけて4話連続で掲載された[2][3]
「生と死のキアロスクーロ(明暗対比)を圧倒的な筆致」で描いた同作は話題を呼び[4][3]、2020年1月8日に単行本として出版された[5]。単行本は発売後に即重版が決定となった[6]
なお、小冊子『カドコミ2020×ダ・ヴィンチ』8月号に[7]、本作の特別描きおろし漫画が収録された[8]

wikiより引用

全1巻。表紙はカラーでくわえタバコのシイノがタンのコートで、遺骨箱をかかえています。amazonで試し読みをしました。汽車ぽっぽ公園やママチャリの座席を改造した自転車、そして表紙のコートなど、映画では原作を忠実に再現しているようです。

原作は、映画以上にシイノの喫煙シーンは多いですね。会社の喫煙室で煙に巻かれてます。中学時代から吸っていたのは、映画でも表現されました。

コミック本、市立図書館にあったので即行予約かけました。貸し出し中でしたけど。

samon
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この物語のヒロインに永野芽都が決まったとき、多くの人が「大丈夫か」と心配したことでしょう。しかし、それは杞憂でした。永野にとっては、次へのステップとなる作品となる気がします。でも、自分の娘を奴隷のように扱い、強姦し、壊してしまう毒父に「尾美としのり」はやっぱりミスキャストかなと思います。彼は悪い人には思えませんもの。アマプラでこの映画ぜひ御覧ください。オススメです。

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