金曜日は映画の日。チャン・フン監督作品ソン・ガンホ主演「タクシー運転手 約束は海を越えて」(Amazon PrimeVideo)を観ました。ソン・ガンホは韓国の名優。大好きな役者さんだ。「パラサイト 半地下の家族」のお父さん役と言えば、誰もがわかるだろう。他にも「殺人の追憶」「グエムル」「スノー・ピアサー」など映画ごとに違う人物を演じる名優だ。本作もそんなソン・ガンホ兄貴のタクシー内での熱唱に始まる。明るい映像は楽しい物語を期待させる。ところが、映画はとんでも無いサスペンスへと突っ走っていく。1980年5月。光州事件。名前だけは知っているものの、その中身は隣国に住んでいながら、またすでに私は生まれて大学生だったというのに、何にも知らなかったことを恥ずかしく思う。そう、この物語は実話に基づいている。映画では戒厳軍が市民に暴虐をつくす様子が生々しく映し出される。軍部の暴圧の恐怖がじわじわと伝わってくる。事件の取材に光州に入る外国人記者を乗せるタクシードライバーがソン・ガンホ兄貴である。取材したフィルムを海外に持ち出すために光州からの脱出行では、タクシー運転手仲間も加わり、軍のシープとのカーチェイスがクライマックスとなる。さえないおじさん運転手たちが、命を賭して、仲間を助ける様は、美男美女ばかりが出てくるどこかの国のアイドル映画では決して観られないリアルであろう。全編音楽は印象的に使われているが、特に一時は一人ソウルに帰ろうとしたソン・ガンホが光州にもどる決断をした瞬間の、バイオリンのアルペジオが鮮烈である。さて、この文章を書くのに「光州事件」をWikiで調べてみたが、全然ぴんとこない。それゆえ映画の力の大きさをとても感じた夜だった。最後にこの映画、伏線も見事だと付け加えておく。
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