楽しみにしているシリーズの第3弾。スコットランドヤードのホークスビーチームの活躍と息詰まる法定シーンに今回も楽しませてもらいました。悪者が生き延びる苦々しさは、ラストのどんでん返しで溜飲を下げることができます。
結論
おとり捜査による腐敗警官の摘発というスリリングなプロットに、迫真の法廷シーンが加わり、約束どおりのおもしろさ。憎きヴィランは生き延びて、ウィリアムの活躍は続いていく。第1弾から順に読むことをオススメ。
概要・あらすじ
巨匠アーチャー、警察小説の白眉。スコットランドヤードの刑事ウォーウィックが警察内部に潜む腐敗警官の摘発に挑む! 〈ウィリアム・ウォーウィック〉シリーズ第3話。世界中から賛辞続々! 「ノーベル賞に“物語賞”があったら、アーチャーが獲るだろう」――The Daily Telegraph「クリフハンガーの帝王」――Nederlands Dagblad「世界屈指のストーリーテラーのひとり」――The Australian Sunday Telegrap
著者:ジェフリー・アーチャー / 訳者:戸田裕之
サイトより引用
ロンドン警視庁の警部補に昇進したウィリアム・ウォーウィックの次なる任務は、新設の内務監察特捜班を指揮し、マフィアとの関わりが囁かれる所轄の花形刑事サマーズを追うこと。若手女性巡査に白羽の矢を立てた囮捜査が始動するが、百戦錬磨のサマーズは容易に尻尾を出さない。
同上
ウィリアムは起死回生のため第二の作戦を極秘に走らせるが、予想外の事態が起き――。
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感想
ウィリアムのスコットランドヤードでの活躍、彼の父・姉が原告側代理人として戦う法廷シーン、妻ベスと双子の子どもとの家庭生活の様子などがバランスよく絡み合いながら描かれていくのが魅力です。
宿敵フォークナーとその妻クリスティーナとウィリアムそして家族との関係もうまく絡んできます。ストーリーテリングのうまさを感じさせます。
もう一人のヴィラン、弁護士のブース・ワトソンの弁護手腕、知略にも感心させられます。
これら主要登場人物をシリーズ全体で継続して活躍させながら、新しいキャラクターが加わりますが、この新キャラも魅力的に描写されていきます。
腐敗警察官サマーズ、彼を愛してしまう女性囮捜査官ニッキー、ニッキーを案ずる同居人の女性捜査官レベッカ。
特に法廷でブース・ワトスンに責められるニッキーの叫びが印象的。彼女の子どもが、ウィリアムの姉グレイスとレズのパートナー クレアに引き取られるラストは、時代のトレンドも取り込んでいます。
ただし、ウィリアムの活躍は過去作と比して減じているように思われます。前作のような大立ち回りもなく、法廷に証人喚問されてもブース・ワトスンは反対尋問をせず、法廷でのウィリアムの活躍は皆無です。
法廷シーンでかなりの紙幅をさいた、ラシディがあっさり死んでステージから消えるのも?です。
細々した瑕疵は、エンディングのオークションシーンの大逆転の爽快さが、すべてを忘れさせてくれます。
原題は「見て見ぬふり」。邦題はちと陳腐ですね。原題の意味を考えつつ、分厚いけれどさくさく読めていきます。できれば、シリーズ第1作から順番に読むことをオススメします。
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